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56.覚悟

パズスさんは苦労性ですね

 今日もまた飛ばされて来て傷を負っているパズス。恒例のようにヒールを掛けてやる。

 独り言なのか、聞かせたいのか、微妙な口調でパズスが苦悩を口にする。


「確かに…アレは我にとって唯一波長の合う者だったのだ…。何処でズレた…もはや波長が合いもせず、我が愛し子から自然と弾かれる。あれは聖女ではなくなる。我を必要としてくれるならなんとか手を打とうと思うが、もはや思えぬ。我の愛し子だと思えぬ…」


 パズスの体が急速にブレでいく。どうやら愛し子という(くさび)で現界を保っていたらしい。


「…聖女よ。未練がましいと思うてくれるな…どうかせめてそなたと最後に戦って消えたい」


「それがお前への手向けになるなら構わない。お前はファムリタより話の通じるヤツだったしな」


 伸ばされた手を握り、以前試し撃ちに使った荒野へと転移する。


「最後の足掻きだ、手加減などせぬし、して貰いたくもない。そなたの命を()んでも悪く思うな」


 パズスの手に、矛が現れ、それを構える。


「ではゆくぞ!」


 チラチラと今にも消えそうに瞬きながら、パズスは矛を振り回す。


「回天の技:球殺連技!」


 振り回していた矛が回転し、その回転と共に回るパズスは1つの球形のような形になる。足元の砂や砂利を巻き上げながら私に迫る。当たれば肉を持っていかれるという予感に、瞬歩で避ける。


「飛燕6連!」


 試しに飛び技で対応してみるが、回転に弾かれて届かない。


「――夢幻の刻よ刻め、その足跡を。盤倉流奥義、無間不断刃(むげんふだんじん)!」


 脳のクロック数が上がったことで、亀のような回転をしているパズスを確認する。その回転の隙間から胴と首を一閃して刎ねる。少し離れてから技を解除した。


「見事…ッ」


 首だけになったパズスに私からも声を掛ける。


「お前も強かったぞ。今度は変な女に(たぶら)かされない様にな」


 パズスは少し笑うと目を閉じ、そのままふわりと宙に溶けるように消えた。


「邪神に言うのも不思議な感じだが、悪い奴じゃなかったのにな。ファムリタは何が気に入らなかったんだろう」


 荒野に独り。答える者もなし。



 学園に戻ると、其処には魔王の姿があった。私と目が合うと深く礼をされる。


「ファムリタは聖女ではなくなった。今迄何度忠告してもそなたへの殺意を止める事が出来なかったが、これで王宮から追い出し、影や暗殺者の手配をする事も出来ぬようになった。今まで大変無礼をした。詫びよう、申し訳なかった」


「うん、さっきパズスを見送ってきた。外交的にそちらと取引したり、というのは出来ないと思うけど、お前に悪意があったとは思っていない。今後ガタガタになった外交やなんかで立て直しに苦労すると思うが、まあ頑張れ」


「――お前が好きだ、と言ったらどうする?」


 いきなりとんでもない言葉を挟んでくる魔王に目を丸くする。


「あー、悪い。どうもしない。私には愛する黒曜が居るからな。諦めろ」


 サッパリと一撃で斬り捨ててやる。少しでも隙があるように見せたら相手が諦められないからな。


「我ながら見事なフラれっぷりだが、スッパリ斬って貰えた所為で後味は悪くない。すまないな」


 ふう、と息を吐くと、サッパリした顔で忠告をくれる。


「ファムリタに気をつけろ。あやつは(ろく)でもないものを召喚した挙句、それにべったりだ。国庫からかなり抜かれたんで暫くはあちこちで遊んでいるかも知れないが、だからと言って黒曜への偏執(へんしゅう)を捨てた訳でもなく、必ず狙ってくるだろう。特に放逐したのだから行き場を失っている。この国に舞い戻るやも知れん。気をつけて殺されぬよう警戒しておけ」


 ガサリ、と紙を最後に渡して消える。紙を見ると、ステータスの書かれた紙だった。レメトゥス・ザグデ/召喚勇者/堕天使、の文字とレベル5000の数字が私の胃の()を冷たくさせた。


 今、襲われたらきっと勝てないだろう。しかし近日中にこちらにやってくるのは多分決定事項だ。

 かく、と膝が震える。ここまで格上とは闘った事がない。どうするべきか――。

 教室に駆け込んで、授業中だった所を、悪い!と断りながら、いつもの面子を引っ張ってシェアルームに引き込む。


 ソラルナ兄さんの背後に顔だけ出して引っ張り込んだのは、ちょっと怪談扱いされるかも知れない。


「もう!いきなり過ぎるよ!何があったの!?」


「ファムリタが近いうちに攻めてくる」


「いつもの事じゃない!?」


「レベル5000の本物の勇者を連れて。魔国を追放されているし、多分トルクスの国ごと獲る気だろう」


 魔王に渡された紙を広げ、勇者の鑑定結果を見せる。


レメトゥス・ザグデ/召喚勇者/堕天使 17歳/男


 レベル5000


 HP589426/MP594270

 力612310

 体力574960

 精神力698520

 知力674580

 忍耐586432


 剣術10

 弓術10

 生活魔法10

 アイテムボックス10

 氷魔法10

 時空魔法10


 ドラゴンキラー

 ビーストキラー

 デーモンスレイヤー

 快楽殺人者

 鏖殺者

 ダンジョン踏破者

 ダンジョン荒し

 人を超越する者



 …んん?レベルに気を取られてパラメータをちゃんと見てなかったけどこれは…


「ステータスオープン」



マリエール・フォン・サリエル/聖女/亜神(盤倉圭吾)15才/女


 レベル1783


 HP1796870/MP1874520

 力1964521

 体力2145893

 精神力1785230

 知力2546372

 忍耐1975243


 徒手空拳10

 刀剣術10

 礼儀作法8

 鑑定10

 アイテムボックス10

 錬金術10

 念話10

 テイマー10

 影魔法10

 生活魔法10

 光魔法10

 闇魔法10

 雷魔法10

 土魔法10

 緑魔法10

 氷魔法10

 風魔法10

 水魔法10

 火魔法10

 時空魔法10

 聖魔法10

 神聖魔法5

 重力魔法10

 罠感知10

 罠解除10



 大物狩り(ジャイアントキリング)

 生態クラッシャー

 ドラゴンキラー

 ビーストキラー

 インセクトキラー

 プラントキラー

 アンデッドキラー

 アモルファスキラー

 デーモンスレイヤー

 スタンピード潰し

 導師

 女神の愛し子

 ダンジョン踏破者

 ダンジョン荒し


「「「「「「…………」」」」」」


「ねえマリー、私の目にはマリーの方が断然勝ってるように見えるんだけど」


「…そのようだな…だが、私と黒曜以外は、全員こいつの5分の1しかパラメータがない。お前たちを盾にされると闘えなくなるな」


「あ――そうだよね、マリー達が特殊なんであって、他の面子が全員足手纏いかあ…ちょっと頂けないなあ…。人数多すぎて2人じゃ全員庇えないだろうし…んああああ!またレベル上げするしかないのかー!」


「私と黒曜以外、攻めて来られたら全員シェアハウスに逃げて貰う、というのはどうだろうか」


「攻めてきたのに気付かなくて真っ先に人質に取られたらどうしようもないじゃん。あっち、ファムリタが居るからある程度の情報持ってるよ」


「…ギリギリまでレベル上げて少しでも質になる可能性を下げるか?」


「うん、その方が嬉しい。2人の足手纏いになるのが嫌」


「レベル上げが追いつかなかったらシェアハウスに入っていて貰うぞ?」


「うん、それはしょうがないから諦める。今はまだ出来る事があるならやりたい」


「解った。シェアハウスに入って居たいヤツは挙手してくれ。一番安全だ」


 誰も手を挙げない事に苦笑するマリー。


「解った。けど人数が多い。私と黒曜で別チームを組んで、従魔と私、黒曜への経験値をカット。これで大分レベルが上げやすいと思うが、どうだろうか……黒曜、そんな顔しないでくれ。暫くダンジョンでだけ別行動するだけだ」


 一先ずは国王に逢いに行く事にした。



「国を獲りに?それは確定情報なのか?」


 国王の顔が険しく歪む。


「いや、不確定情報だがそれなりに確立が高い。暫く漫遊しているだろうが、ファムリタが放浪者で満足する訳がないんだ。国ごと獲る気で居る方が確率が高いな」


「何という事だ…」


「攻めてくる前に少しでもレベルを上げようと思っている。相手はレベル5000だ。私達を全員公休扱いにしてくれ」


「それは構わない。が、間に合うのか…?5000などと…」


「解らないが、現時点でレベルの数値以外は私と黒曜のみ3倍くらい勝ってるんで、最悪の事態だけは免れると思う。王は、攻めて来られたら隠れてケイタイで私達に連絡を取る事を優先してくれ…死なないでくれ、王。私はあんたの治めるこの国が好きだ」


「…解った、いつでも避難出来る様にしておく。そちらも気をつけるんだぞ」


 この国の冒険者だけではなく、99レベルが限界の人間では踏破出来ないダンジョンがいくつかある。


 何度もスタンピードを起こし、周りには村も何もない。(ごく)級と呼ばれるそのダンジョンを幾つか踏破すれば5000に近い所まで行けると踏む。リシュに召喚のスクロールを使わせると、天使アンダインというものが召喚された。ロックバインドで動きを封じたリシュは契約を迫る。しぶしぶ契約に応じたアンダインに永久(とわ)と名付けた。


 これで戦力が増えた


●黒曜チーム

・黒曜 (トゥルース)

・シュネー(玉妃)

・アディ(シエル)

・リシュ(永久)


●マリーチーム

・マリー(漆黒・ケルベロス・ライム)

・ソラルナ

・リクハルト

・ラライナ


 従魔の数も合わせると、割り振りはこんな所でいいだろう。従魔達には経験点が入らない事を説明して納得して貰った。私の分の経験点も0%に設定する。


 黒曜も同じ設定に出来たようだ。短時間で用意してくれたリシュの昼食と晩餐を持って、お互い別の(ごく)級ダンジョンへ向かい、踏破を目指すが無理はしない、と誓ってもらう。当然私も誓った。必ずスタンピード時の状態になっている、と織り込み済みでダンジョンへと向かう。



 初めての(ごく)級だ。気を抜かずに警戒していこう。



お久しぶりねのファムリタさん。攻めてくる前に皆はどれだけレベルが上がるのか。

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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