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35.攻略対象

攻略対象は出尽くしましたね。

 昼の時間、やっと休める空間に来れて凄く癒される。ごはん美味しい。


「あのね、マリー、言ってなかったんだけどさ。ここ乙女ゲームの世界そっくりって話したじゃん?」


 私の座椅子になって癒してくれる黒曜の胸元に凭れながら、あー、とも、うー、とも取れる返事をする。


「多分攻略キャラ揃ってるの。ほぼ全部マリーのとこに」


「ふあ?」


「シュネー王子、黒曜、マルクスさん、ロッソさん、イャンデック先生、それと元男爵家の男の子なんだけど…」


「あ?ロスクの事か?上手くやってるといいなアイツ」


「んー、多分そのロスクさん。全員の好感度を一定以上上げると下手すると刺されるから、誰か一人に絞りなよ」


「絞ってるぞ。黒曜だけだ」


「うん、自覚がないのも知ってた。確かにシュネーはそっちの好感度は上がってないけど、他のキャラがね~」


 黒曜が摘まんでくれた苺を口に入れられる。うん、甘酸っぱい。


「おい、今さらっと私の名前を出したな?なんだ?私はコウリャクキャラなのか?」


「あ、そうだマルクス、山ほど機工蟻(きこうあり)獲って来たけど何処に出せばいい?」


「山ほど?10匹以上か?」


「ううん、500匹くらいかな」


「はあ!?…いやでも貴重な素材だ、捨てるわけには…うう、では今日の帰りに寄ってもらって、素材置き場に置いていって貰えないか?」


「解った。6人分の時計作って貰えるか?あと壁にかけるタイプの大きいやつ1個欲しい」


「その素材量なら充分過ぎる。大量の素材を貰ったんだ、タダで全部作ってやろう」


「うわっ!!」


「キャアアッ!!!」


 あー。結界に「中の者に悪意ある人間は痺れて動けなくなる」を追加しておいて良かった。


 何度も結界に引っかかるヤツが居たので付けといたんだが。実にいい間諜ホイホイになっている。

 いつも通りに牢屋行きになるヤツらの顔をボーっと…


「…ファムリタか…」


 面倒だ。凄く面倒だから影の人に任せよう。


「何するの!?あ、あたしはただ黒曜様に逢いに…!嫌ー!!黒曜様――!!!」


 黒曜もちらっとも見ずに、私の口に美味しい物を運んでくれる。


「あーん」


 私は今、教室内の女子事情で悩んでるんだから邪魔しないで欲しい。ラティナさん率いる黒曜は皆のもの派が大体40%くらい、馬鹿騒ぎに巻き込むな派が30%くらい、後はロッソ派とマルクス派が五分五分。


 流石にアディが妃修行を受けるとあって、シュネーは諦められたらしい。まだ諦めてないごく少数がいるが、少数なだけに精鋭で、面倒だとよく愚痴られる。


 日曜のダンジョン探索は暫くはアディは参加出来ない。折角のパラメータを生かして、1年掛かる妃修行を3ヶ月以内に縮めて来い、と無茶振りしておいた。


 そしてそんなアディにつきあって、シュネーも王族の仕事や勉強に1日費やすらしい。


 愛を感じる。良い事だ。そのまま幸せにしてやってくれ。


 ああ、いやいや、そうじゃなくて、マルクスとロッソに気があるやつは告白すればいいだろうに、何故私を恨むのか?意味が解らない。さっさと告白しろよ。


 馬鹿騒ぎに巻き込むな派は凄く気持ちが解る…そっとしておいてやりたい。


 問題はこれから黒曜様は皆のもの派がどう動くか、だよな。


 黒曜自身から物言いがついたんだ。普通なら解散するだろうけども。読めない…女子の心読めない…。


「…なんかマリーにしては今日、随分大人しいな?何かあったか?――あのさっきの女子に囲まれてたやつか?」


 眼鏡キャラだけあるねマルクス君。概ね合ってる。


「うーん。黒曜様は皆のもの派をどうしようかって」


「もっかい。何派???」


「黒曜様は皆のもの派」


 私と黒曜以外の全員が吹き出した。


「なにそれ~~~何に巻き込まれるとそうなるの!相変わらずヘンなの引き寄せてるねマリー」


「っぷふ、そなたでも悩むような事が…と思えばそんな珍妙な団体が…っ」


「マリーは結構真剣に悩んでおるんだ。笑わずに居てやって欲しい」


「でも~その名前は~~うふふふ」


「そんなファンクラブみたいなのから迫られると結構怖そうだな」


「さっきはそんな団体に囲まれてたのか…随分人数が多かったが」


「いや、さっきのは、マルクス君とロッソ君をどうする心算(つもり)派も混じってたから」


「私か?」


「そうだな。さっさと告白でもすりゃいいのにって思ってた。なんで私に言うんだろうな」


「ううむ…いやそれは…そっとしておいてくれないか…」


「そうなのか?解った。そっとしとく」


 昼食が終わって結界から出るのは私が一番先、と決めてある。今日も厄介そうなのが潜んでるなー。影の人じゃ気付けないのか、このレベルの隠形術は。


 す、と一歩踏み出し、敵方が動いた瞬間に投げナイフを叩き込む。流石にほぼ避けられてしまったが、2本、肩の関節に入った。腕を1本取られても動じる事無くこちらへ踏み出し苦無を飛ばしてくる。刀で弾き、そのまま瞬歩で踏み込んで首を跳ねる。生け捕りにするほど余裕がなかった、まだまだ精進が足りない。


「影、すまん生け捕る余裕がなかった。死体で悪いが出来るだけ情報を取ってくれ」


 さっと現れた影がすまなそうな雰囲気で男の首と体を担ぐとさっと消えていく。


 返り血をクリーンで落とすと、黒曜が手を繋いでくれる。癒される。


 行き成りの殺人を目の当たりにしたマルクス君は真っ青になっている。


「マルクスはもう落ち着くまで来ない方がいいかも知れないな…危険に巻き込んでしまう」


「いや、非戦闘員として顔を見られたかも知れない、人質になるのは御免だ。責任持って守ってくれ」


 ガタガタ震えながら、しかも胸を張っていう事じゃないな。


 ふふ、と笑いが漏れる。


「解った。友人の頼みだ。守ってやろう」



 影の持ち帰った情報は、おそらく出雲の出身だろうという事だ。装束に特徴があるらしい。出雲の影は総じて戦闘に長け、こちらの影では守りきれない可能性がある事も付け足してきた。ああもう厄介だ!!


放課後は、約束だったので、馬車を急がせながら、マルクス君の家に素材をどっさり出して、マルクスの家にも結界を張った。念のため、無駄に外に出ないよう伝える。


 そして家に帰った。


 家に結界が張ってあるとはいえ、馬車が狙われればどうしようもない。せめて転移での登校を認めて貰うよう、父母に言うと、安全の方が大事だから問題ないと返された。


 早朝の修練で庭周辺の気配を探ると、昨日の者と同様の独特の隠形の気配が1,2.…5人だな。私は唱える。神になるとかもう今更だ。


「神の前で狼藉を企む者。その身に落ちるは神の鉄槌。甘んじて受けよ。雷覇爪牙!」


 影のいる場所から声にならない悲鳴が上がる。丁度5回の雷が5人の体の芯を焼き尽くしたのだ。ぼたぼたと落ちてくる出雲の影を処理するよう、影に合図を送る。さっと5人の遺体が消えた。


「お前の家、なかなかに物騒だな」


「すまない…」


「謝るなって。ちゃんと私を巻き込め。護身に使え。そうしたら許してやる。しかしあれほどの手練れ、そう数が居るとも思えないんだが、どうだ?数をある程度把握していないか?」


「あのレベルの者なら100以下ではあったはずだ」


「影の名産地なのかお前の国は」


「知らんが、影のレベルの高さは有名みたいだぞ」


「はぁ~手強いねえ」



 とはいえ、1対1では私や黒曜の方が腕が立つ。連携されるのが怖い。


 だからさっきは5人で連携されないよう、個別で魔法を落として殺した。


 これが20人とかの場合、敵と味方が入り乱れると撃破するのが辛くなってくる。


 学園に行っていいかどうかが判別付かない。クラスメイトを巻き込む事になる可能性が高い。


 100人居るからといって100人寄越したとも思えない。せいぜい多くて50という所だろう。


 それだけ影のレベルが高いのなら、自分の身辺から離すとは思えないからだ。


「…50人。50人影を倒したら学園に行こう。それまで私らは休暇をとって精々美味しそうな餌になってやろう」


 理由を話して暫く休学したい旨を告げると、父母はそれも笑って許してくれた。そして人質に取られぬよう、家族達も巻き込む。特にリクハルト父には登城しないようお願いした。家で出来る範疇の仕事をして書類は影に届けてもらう、との事。家に居る限りは安全なので申し訳ないが家に居てくれるようお願いした。


 さて、根競べだ。黒曜なら、此処に居るぞ!



 比較的初心者向けのダンジョンは避ける。ダンジョン組が居るかも知れないからだ。


 少し難易度が高く、私達が手間取るほどではないダンジョンを選定し、2人で潜る。…よし、付いてきている。数は…10か。ちょっと大胆になってきたな。


「――バインド。崩壊(コラプス)


崩壊(コラプス)


崩壊(コラプス)


崩壊(コラプス)


崩壊(コラプス)


 黒曜も一緒に唱える。2人に1つ程度の崩壊を唱え、サラサラと崩れていく影を見送る。1分もしないうちに影は消えた。


「うし、もっかい外出たら、今度はリターン待ちが多分居る筈だ。戻るぞ」


「ああ」


 2人でポータルに入りリターンする。リターンする場は限られている為、何人か冒険者が居た。慌てて離れる。


「数、20」


「了解」


 ある程度リターン位置から離れた場所で、付いてきた気配に向かって叫ぶ。


「バインド!!」


 2人が避けた。避けた勢いのままこちらに突っ込んでくる。


「――盤倉流追式 浮雲」


 居合いの構えから全く同じ速度の剣戟を2刀揮い、相手の体が土を蹴って浮いているうちに首を落とす。


 崩壊(コラプス)だとそのうちにバインドから抜ける者が出そうだ。


「我が身に刃向けし反逆者。そなた等は内から弾けて消えよ。黙示録(アポカリプス)之大禍(ディザスター)


 ロックした18人の影が(まと)めて弾け飛ぶ。聖属性は威力の強いものが多い。これで先日のも併せると36人。


 後何人残っているか、それとも消耗を嫌って国へ戻るか。


 出切れば逃さず此処で仕留めて仕舞いたい。私は少し具合の悪いフリをする事にした。


「っ…悪いな、魔力が…でも直ぐに回復するから、もう一度ダンジョンでレベル稼ぎ…したい」


 ふらついた私に気付いた残りの影がこちらの後を付けるのを確認する。数は…34!?大盤振る舞いだな。


 身辺の守りを割いてでもこちらに回したか。


 多分一番影の薄い、後方の影は連絡役だ。攻撃はしてこない心算だろう。


 ダンジョンに入ると、既に待ち伏せが居た。14人だ。


「バインド!」


 14人を絡め取っている間に、後続が5人


「バインド!!」


 更に追加が5人。


「バインド!!」


更に追加が――最初のやつらの拘束が解けそうだ。倒されないうちにどんどん追加で増やしていく心算か。


「黒曜、攻撃頼む、バインド!」


「おおッ!纏龍技(まといりゅうぎ)千刃挽歌(せんじんばんか)!!!」


 辺りが少し暗くなり、光る刃の雨が振る。バインドで拘束された者は例外なく頭蓋から刃を通され絶命する。術者と私には落ちてこないところを見ると、ある程度の選別が出来るようだ。


 そこまで連絡が密ではなかったようで、更に追加の5人が来る。


「バインド!」


 そして最後の5人、連絡役、お前だけは返さない


「バインド!!!」


 先ほど入った5人に加えて己達の5人。併せて10人しか残っていない事に動揺している。


 一番腕の立つものを先に消しておく


「アポカリプス」


 残りは黒曜と一緒に崩壊(コラプス)で崩した。


「終わったと思うか?」


「端数まで出したところを見るに、此方へ来た者は終わったと思う」


「ならいい…ちと疲れたんで寝たいわ」


「お望みなら家まで抱いて行こうか?」


「ん、其処まで恥を捨てられないので却下だな」


 無駄口を叩きながらポータルへ向かう。返り血はクリーンで落とした。


 リターンすると、一応周囲を探る。気配は無い。


 これで明日の早朝修練でも気配を感じなければ一端落ち着いたと思っていいだろう。


 今日はもう、風呂も飯もパスして、2人で眠った。



本当は数日掛けて影を倒す心算だったんですが、マリーさんせっかちなんで1日で終わっちゃいましたw

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!影さんの大半を失った出雲はどう出るでしょうね

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