閑話4
ごった煮感が拭えませんねw
●ダンジョンに潜る生徒
急激に生徒会の面々が成績を落としている、という噂が立った。
落とすというより、周りの成績が上がっている。
成績の上がった友人に訊くと、ダンジョンでレベルを上げただけだという。
レベルは現在35。その程度で成績が上がるなら俺も行ってみようかな、という気になった。
ダンジョンは下賤な者が行く場所だ、高貴な貴族が行く場所ではないと生徒会が喧しく注意を促しているが、どう考えても他の奴らに追いつかれたり抜かされたりして焦っているようにしか見えない。
友人のパーティが丁度人数が足りないと言っていたので俺もパーティに入れてくれるようお願いする。
まずは冒険者ギルドで登録だな。
平民の学生達は、もっと貪欲にダンジョンに潜っている。素材が換金出来るからだ。
だから、貴族達がどんどん平民に成績を抜かれていくのが我慢できずに、徐々にダンジョン入りする貴族が増えてくる。
実技の先生は潜っていないようで、ダンジョン組にどんどん離されている。教わる意味がないように思う。
聖女様のお墨付きって事もあり、実はそんなに忌避感はない。ただ、死なないようにだけ装備はちゃんと整えてから行こうと思う。
平民と違って最初はナイフ1本で、というような無茶はしない。
ロングソードでは重さに振り回されるので、まずはショートソードから始めよう、と心に決めた。
●ファムリタ
あたしだって、元の世界に居た頃はこんなじゃなかった。
ちょっと悪戯を仕掛けたり、虐めを見ても知らぬフリをしたり、時にはちょっとだけ虐めに加担してみたり、お姉ちゃんのアクセサリや彼氏を頂戴する程度の可愛いものだった。
まあ偶に癇癪を起こしたりはしていたけど、今程回数が多いわけじゃなかった。
それが、今生の母であるエルザに唆されて嗜虐に快感を得るようになった。
お姉ちゃんは皆で虐めていい家畜だ。例えそれが圭吾パパでも関係ない。
だってエルザママがそう言ったんだ。
使用人だって私の言う事を聞くために居るんだ。
増長した?――まあそうかも知れないけれど、私は男爵家でお姫様のように扱われ、それを当然と受け止めた。
次第に傍から消えていく友人達にも何も感じなかった。
本人は諌めているイイ人気取りなんだろうけど、あたしは我侭を許される。
だって家じゃ注意もされない些事だったのだ。
あたしはただ従順に虐められていたマリーなんかより、遥かに格上なんだ。
――だから。だからあたしが家畜に負けるなんてありえない。
なのに、何故こんな所に居るの?折角黒曜様に逢えたのに。どうして傍に居ないの?
現在、王宮の牢に入れられたあたしは屈辱に震えている。
呪術。いつの間にか今日あたしのステータスに増えていたスキルだ。
ゲームではそれを生業としているNPCも結構見てきた。禁忌などではない筈だ。
毎度あたしを勝手に学園から連れ戻す男の言葉なんて嘘だ。
聖女を貶める噂を流したのもあたしじゃないのに、あたしの所為にされている。
マリーが単に嫌われてるだけじゃないの。
だったら嫌われ者のマリーにちょっとくらい酷い事を言った程度じゃ他の皆と同じじゃない。
あたしだけが罰を受けるなんておかしいじゃない!
「お嬢ちゃん、そんな目をしても覆らないよ。禁忌魔法、3つめだ」
「何故?呪術なんて普通にそこらで商売してる人が居るんじゃないの」
「何処からそんな突飛な話を聞いたか解らないが、禁忌魔法として、見付かり次第封印されてるよ。あんたのも封印済みだ」
「嘘だ。嘘を吐いてあたしを貶めようとしてるだけでしょ」
「呪術も確かに悪い事ばかりでもないんだけどね。発現させた奴らは大抵何かの犯罪に手を染めていたよ。あんたはそっちのクチだ。見逃せない。修道院に戻って貰う」
「嫌!嫌よ、そんなの…あんな所に閉じ込められて黒曜様にも逢えないなんて…」
ぼろぼろと涙が零れ、その瞬間、あの時と同じ選択を迫る声がする。
「光魔法よ!光魔法を選ぶわ!」
男からは行き成り独り言を叫ぶあたしがおかしくなったように写ったようで、反応が芳しくない
「…ね、ほら、ヒール。あたしは聖女でしょう?」
擦り傷をなおす程度でもヒールはヒールだ。光魔法だ。呪術は取得不可のグレー表示になった。
「お願い、もう一回鑑定をして!私が聖女なの。マリーなんかじゃない!!」
仕方がないな、という顔をした男は、鑑定器を持って戻ってくる。
鑑定を終えた男が少し目を瞠った。
「呪術が取得不可?光魔法1…、聖女とは書かれてないな」
男がうーんと唸り始めた。もう一押しだ。
「呪術は自力で取得不可にしたし、結局発現したのは光魔法だわ!」
男は少し悩んだ顔で唸っている。そしてふっと顔を上げ、天を仰いだ。
「解った、今回だけの特例にしてやる。だが次に禁忌魔法を発現させたら、光魔法の使い手であろうと修道院へ戻す」
私はギリギリで踏みとどまれたのだ。暗い感情に身を任せなければきっと禁忌魔法は発現しない筈。黒曜様の隣にマリーが居るのは本当に腹立たしい事だけれど、マリーを無視して黒曜様の傍に居られれば、きっと発現しない。
「あり…がとう…っ」
また涙を流しながら、私は男に感謝した。
●マルクスとロッソ
ポっと出の男にマリーを掻っ攫われた、という気持ちが強い。
共に笑い合う黒曜とマリーを見て、自分はマリーと友人以上の仲になりたかったんだと気付かされた。それでも往生際悪くマリーの傍に居るのは、万一黒曜と別れたら直ぐに告白をする心算だからだ。
それに、最近マリーに癒されて登校出来る様になったロッソというヤツ。あいつの目は真っ直ぐにマリーへ向けられている。
そんな状態で、私がロッソの気持ちに気付かない訳がない。
それはロッソも同様であったようで、主に移動教室や休み時間でどっちが聖女の近くで話をするか、というみみっちい事で争っている。
まあ、私の方が一歩先んじている。昼食を共に食べられるのだ。それもマリーと同じものを!
これは大きなアドバンテージだと思う。それ程私の錬金の腕に感銘し、友達になろう、と手を差し伸べてくれたのだ。今度素材を、わざわざ取ってきてくれるという。私の為に!
そう、感触は悪いものではなかったというのに。
一体どうやって黒曜は、いきなりマリーとの間を詰めたんだろうか。
私では駄目だったのだろうか。
そんな事をぐだぐだ考えても仕方がない。もっとマリーを喜ばせるような、良い魔道具を錬金してみせる。
一先ずはそうだな。自動で翻訳してくれる魔道具か、自動で計算してくれる魔道具なんかはどうだろうか?
●?????
「ほう、あやつは自力で龍を制したと?馬鹿を言うでない。成龍の、しかも高位の龍ぞ。今頃死んでおるとばかり思うたに」
女は華奢な腕を動かして煙管を口にする。
「邪魔じゃな。自然死に見せかけて殺せ。――はあ?あちらの公爵家で守られておる?お主等は我が出雲を誇る歴戦の影じゃろ。守りを引き剥がして刹那の間に殺せ。出来んとは言わせぬ」
慌てて影が去るのを見送る。
「誰かが手を貸したのじゃろうな…匿った公爵家が怪しいか。また面倒なところに居座りおって。纏龍技はまだ使いこなしておらんだろう。仕留められるのも時間の問題じゃの」
ふう、と煙を吐いた女はそれきり興味を失ったように、自らの子を傍に呼んだ。
「母上?何か御座いましたか?」
「いいや、可愛い妾の玉葉。お前はきちんと勉学や修練を納めねばならんぞ。一国の王となるのじゃからな」
「はい、どちらも頑張っています!」
「ふふ。良い返事じゃ」
可愛い実子の頭を撫で、女は妖艶に笑んだ。
ロッソ君にちゃんと触れてなくて申し訳ないんですが、美形です。
読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!隣に黒曜が居ると、他の攻略対象の顔面偏差値的に劣って見えるという可哀想な現実