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30.顔のいい男がわんさか

わんさか、っていうのは何人くらいからでしょうねえ

 早朝の修練、今は気の練習をしているが、そのうち闘って貰う事になる。


 説明をして、黒曜には鑑定を受けてもらった。



黒曜・天津埜焔・皇/15歳/男

 レベル90

 HP9780/MP9187

 力9625

 体力8978

 精神力10563

 知力9886

 忍耐9223


 刀術10

 徒手空拳5

 礼儀作法10

 生活魔法10

 火魔法5

 時空魔法<未取得>

 重力魔法<未取得>


 女神の加護

 導師の弟子

 ダンジョン踏破者

 龍を裡に秘めるもの

 現人神(あらひとがみ)に愛を注ぐもの


※愛し子であるマリーを幸せにしている為、加護がついた。また、導師の弟子の称号で非常にレベルとパラメータが上がりやすくなっている。


 少し修練を止めさせて、アイテムボックスと重力を試してもらう。要領が良いのか、直ぐに二つとも解禁となった。


 ダンジョンで使えるよう、この後の修練は時空魔法と重力魔法にして貰う。時空魔法は特に、女子から逃げたい際に転移で逃げられるので重要だ。


 ……ところで現人神(あらひとがみ)って……私じゃないよな。私はまだ人神で踏みとどまっていた筈…

 そっとステータスを確認すると、現人神(あらひとがみ)に変わってたよコンチクショー。まだだ。人ってついてる、私は人だ。


 隣の黒曜を伺うと顔が真っ赤だ。そりゃ口にも出さないうちにステータスで思い人にバレるってあんまりだ。


「黒曜。知ってたから。いくら私でも気付くから。でもお前と同じ感情を返せるか解らない。返事はちょっと待って欲しい」


 こつんと額を合わせると、にっと笑ってやる。


「今の所前向きに考えてるぞ。そんな顔するな」


 そのまま額にキスをしてやる。黒曜は熟れすぎて真っ赤な顔で蒸気でも出しそうな勢いだ。


「やはり…現人神(あらひとがみ)とはそなたの事であったか…」


「神になる気はないんだけどな…寿命とか。皆に置いていかれるのは嫌だ…」


「解った。私も神を目指す。共に永久(とわ)にそなたと一緒に生きていたい」


「っふふ…最高の口説き文句だ。今のはくらっと来たよ。――お付き合いから始めてみるか?」


「…っ!是非!」


 途端に黒曜のステータスが変化する。


 ※現人神(あらひとがみ)眷属(けんぞく) 現人神(あらひとがみ)と魂をリンクさせた為、同じ寿命を持つ神族の末端になった。レベルやパラメータの上がり方は現人神(あらひとがみ)のものに準ずる/人神


眷属(けんぞく)…お前、取り返し付かなくなったけど、本当にいいのか?」


「勿論だ。そなたと同じ悩みを抱えられるのは嬉しい…」


 にこにこ笑う黒曜を伺うと、いきなり器が大きく増えていた。神の眷属(けんぞく)だもんな。そりゃそうだ。


 後は龍が暴れた際に気で抑え込む方法が取れればもう問題はない。


「気の修練を収めたら、もう龍の心配はしなくて済むが、その後お前はどうしたい?」


「……此処に居たい……」


「解った」


 すっと息を飲み込んで二人の名を呼ぶ。


「ラライナー!リクハルトー!黒曜だけど、ずっと預かってても問題ないか?戻るとまた隔離されそうらしいんだ。あと、私と付き合う事になった」


「まあ!おめでとう!!将来のお婿さんがウチに居たって問題ないわ!でもそちらは第一王子でしょ?家に戻らなくて大丈夫なの?」


「ああ。私が出来損ないとして隔離されてる間に第二王子が跡を継ぐという話を聞いている。問題ないが、結婚する際にはその…挨拶だけはしに行かねばならない…」


 後半、顔真っ赤だぞお前。()いヤツだな。


「まあ、器の問題は片付いたんだけどな。レベル差あり過ぎて一緒に行動するのが難しそうだから、週末は一先ずお前のレベル上げを優先するよ」


「ああ、宜しく頼む。ありがたい」


 一先ず転移だけでも出来るようにスキルレベルを上げて、今日の朝の修練は終わった。


 朝食を良く味わって食べ、お茶を飲む。用意をしたら学園だ。


 4人を乗せて馬車が走る。馬車止めまで来ると、黒曜がエスコートしてくれた。嬉しいな。


 しかし、その場面を何人かに見られてしまい、また禄でもない噂が走る。


 ――曰く、美形を家に囲う淫魔だそうだ。まあ確かに囲ってると言えなくもない。


 教室で女子の茨のような視線を受けるが、まあ別になんてことはない。女子の友人が欲しかったが諦めるしかないか。


 急に物凄い勢いで教室の扉が開いた。


「黒曜様!!黒曜様!?何故今?何故此処に居るの?でも黒曜様だ…」


 ファムリタだ。シュネー王子を狙っていたのではなかったのか?


 涙をぼろぼろ零しながら黒曜に抱きつこうと迫ってくるが、黒曜がそれを避けて私の肩を抱く。


「何故!?マリーなんて偽聖女です!あたしが、あたしこそ聖女になるべきなんです!そんな女からは離れて…」


「私は、マリーが聖女だからと好きになった訳じゃない。私の恩人で、私を理解してくれて、私の手を引いて励ましてくれる。そんなマリーだから好きになったんであって、お前と仲良くする気はない」


 黒曜の言葉に、ファムリタは呆然としている。


「…黒曜様はあたしと結婚するべきなんです…」


 小さい声でなにやら呟いているが聞き取れない。


 すとんと床に膝を突くと、両手も床について4つ足の動物のような格好になる。


「マリーね?マリーが悪いんだ!あたしが不幸なのも全部マリーの所為だ!!黒曜様を浚っていく悪女だ!!!」


 その異様な様子を息を飲んで見守っていると、ファムリタを中心に瘴気が溢れ出す。


「許さない…絶対に許さないマリー許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない…」


 ずっと怨嗟を吐き出し続けるマリーの元に、監視員がストンとやって来た。


「お目汚しすいませんね。すぐ片付けて来ますんで…」


 すっと慣れたようにファムリタを小脇に抱える。そこで少し正気が戻ったのか、ハッとしたファムリタが騒ぐ。


「嫌!私は黒曜様の傍に居るの!ずっと居るの!!なんで邪魔ばっかりするの!?」


「それが仕事だからですよっと」


 よっと、の所で監視員の姿が消える。天井裏経由でファムリタを軟禁場所へ送る心算のようだ。ファムリタのクラスの方向へは行かなかったからな。


 しかし、あの様子じゃこのまま済むとも思えないんだよな。ああ、面倒な…


 思わず天を仰ぐと、黒曜が私を抱きしめ、髪にキスを落としてくる。お前、私の機嫌の取り方を良く知ってるな。


「あんなのは気にしないで。私はそなたしか愛さない、愛せない。今朝神にも誓ったろう?」


「いや…自暴自棄になって何をやらかす事やら解らん。気をつけておいた方がいいだろう。お前の愛を疑った事はないよ。心配するな」


 騒動の間、教室に入らずに居たらしい、先生が様子を伺いながら入ってくる。


「あー…席につけー。今日は復学する生徒を連れてきた。ロッソ・アフェリア君だ。皆良くしてやってくれ」


「ロッソ・アフェリアです、長く病を患っていましたが、聖女様に癒して頂き…あ、マリエールさん!マリエールさんありがとう!まだゆっくりとしか動けないけど、凄く楽になったんだよ!本当にありがとう!!」


 飛び出してきて私と握手をしようとするロッソ。そしてその手を払う黒曜。


「「……」」


 お前、意外に心狭いな。まあそんな所も可愛げがあっていい。


「ロッソ君、感謝は受け取った。後は寝たきりの状態からのリハビリになると思うが、頑張ってくれ。約束どおり元気な姿が見れてよかったよ」


「マリエールさん…本当にいい人なのに、誰でしょう、妙な噂を流しているのは…聖女が不幸になると国が荒れる事を知らないんでしょうか」


「知ってても、自分よりちやほやされたり優位にあったりする者を(うと)む輩はどこにでも居るものだ。気にしないで欲しい」


「はい、ありがとうございます」



 今日は錬金の教室移動があり、錬金を取っている全員が移動となる。と言っても余り人気はないようで、少人数での移動だ。


 階段を下りていると後ろからドン、と押される感触があったが、私の体幹はそんな程度で崩れるようなものではない。振り返って相手の顔を確認すると唖然とした顔のミルフィ公爵の娘が居た。


「階段で相手を下に落とすと、打ち所によっては怪我ではすまない。解ってやったなら殺人未遂に問われるがどうする、アレイド・ナイル・ミルフィ」


「わ、私はちょっと当たってしまっただけで」


「残念ながら私は時空魔法をマスターしている。過去映像なら再生可能だ」


「~~~~~ッ!悪かったわよ!!貴方が(ねた)ましいのよ!それだけよ!」


 ぽん、と手を叩くと私の護衛が現れる。


「第3部隊兵舎へ。事情はそちらで話してくれ」


「ちょっ…嫌よなんでこれくらいのことで…ッ!」


 最後の言葉は聞き取れなかった。さっと女生徒を抱えた影が消えたからだ。私が憎かった、と言っておけば良いとばかりにエスタークからのちょっかいが増えると困る。徹底しておく。しんと静まり返った中、足を引っ掛ける心算か、私の進路に足を出していた女生徒がすぐに足を仕舞った。


「これくらい、ねえ。私がそれで死んでいたら、この国は災禍(さいか)に見舞われると解っていないようだな」


 ふ、と溜息をつくと、黒曜が抱きしめてくる。お前はお前で、錬金も持ってないのに授業に付いてくるのはどうしたものか。そして歩き辛い。


 まあしかし、神の一端となった身だ。そうそう死にはしないだろうという気はする。


 授業は実に興味深い良いものだった。かりかりと板書をする手も弾む。黒曜は授業を聞いて、解らないなりにノートを取っている。その姿が微笑ましくて私は笑った。マルクスとロッソが席の取り合いをしていたのは良く解らなかった。沢山席が空いているのに何故だ。アディが言っていた、顔の良い男がわんさか、というのはコレの事なんだろうか?


 いや、良く解らない…。確かに周囲に顔の良い者が揃っているのは認めるが…。



 昼食の時間になると、転移で東屋に集合する。


 いちいちリシュが迎えにいくのも何なので、ソラルナには転移魔法を込めた魔石を渡しておいた。


 今日のお重も凄く美味しそうだ。パン籠にクロワッサンが入っているのを見て、私の目が輝く。


 さっとクロワッサンを一番に手に取り、さくさく食べる。このさくさくがいいんだよなクロワッサン。ご機嫌で頬張っていると、興味を引かれたのか、マルクスと黒曜もクロワッサンを取って齧りついた。さくっと口の中で解けるカンジが堪らないんだよな。まあその分ぼろぼろと服に零しやすい食べ物なんだが。嬉しそうに齧っている黒曜さん、胸元パンの粉まみれだよ。後でクリーンを掛けてやろう。おかずも勿論美味しい。リシュの旦那になる奴は恵まれてるなあ…と思う。


「マリエール・フォン・サリエル!…やっと見つけたぞ…」


 肩で息をしている所を見ると、ずっと走って探してたのか?それぐらいなら通常の休み時間に言付けしたり、何かあっただろうに。私は秘密基地に他人が入り込んだような苛立ちを覚える。


 キッとこちらを睨んだ上級生は言う。


「昼食後、生徒会室へ来い。」



まだまだ波乱まみれの学園生活ですが、ちょっと位は日常っぽいのも書いてみたいですね

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!わんさか!

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