表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/155

25.褒章

王様からのプレゼントです

 パーティーは昼餐時にひっそりと行われた。


 シュネー含むサリエル家の者に褒章を与えたいので欲しい物を考えて欲しいと言われる。皆が悩む中、私は挙手した。


「私がドラゴンの素材を卸した鍛冶屋がエスタークに狙われている。今回反撃を許した竜哭の弩砲(バリスタ)などがそれだ。バリアは張って置いたし、継続的に掛けなおす心算ではいるが、それでも身柄が完全に保証されたとは思わない。影の者を付けてやって貰えないか。それと、軍の者が、交代でダンジョンに潜るようにして欲しい。ある程度まではちょこちょこレベルのある者も居るようだが足りない。全員99になるまで続けさせて欲しい。もしサリエル家の者が居ない時にスタンピードや戦争が起こるととんでもない被害がでるぞ」


 こちらが戦争に勝ったからと、大人しくなるような相手ではない。今回は首の()げ替えは必ずさせる気で居るが、他の者も同じような者ばかりかもしれない。まだ鍛冶屋への手出しが続いている、と私が続けると、王は頭を抱えた。


 しん、と場が静まり返った。王が咳払いする。


「んんっ、それは此方が気をつけねばならぬ事であってお主の褒章になっておらん気がするのだが」


「いや。私の褒章だな。鍛冶屋の影の件はかなり難易度の高い護衛任務になる。軍に関してはそのうち兵のレベルも上げなければ~と言っている所に、近日中に褒章として約束を守れ、と捻じ込んだ形だ。兵は強くなるのが仕事だろう。積極的にダンジョンへ行かせろ。無理やりにでも放り込め。王の命令を使ってでもやらせろ。約束して貰う」


「…我が軍はそれほどに弱いのか?」


「近隣の国の兵事情なんかは知らんが、圧倒的強さがあって困ることはない。手足を失ったり死んだり重症を負ったりする確立が下がる。私はこの国の者には無駄死にしてほしくはない。私と強さを比べていいなら、天と地ほど差があるぞ。ああ、スキルや魔法も必ず毎日修練させてくれ。発現していなくても、神殿に可能性を示唆(しさ)されたスキルは身につけることが出来る。絶対に無駄にならない。ただし、性格的に問題のある人間は決して参加させるな」


 王は神妙な顔をして頷いた。


「近日中に必ず実行させよう」


 また暫しの沈黙が降りる。そこにアディが手を挙げた。


「あの…シュネー様と…学園を卒業前に結婚したいんです」


「婚約しておるのに、何故急ぐのだ?」


「プロムの前ならいつでも良いんですが、その…嫌な予感がしまして…」


「ふむ……まあ良い、解った。プロムより前にそなた達の婚姻を許可する」


「アディ…そんなに私の事を…嬉しいよ…!」


 感極まったシュネー王子がアディをぎゅっと抱き締める。


「こ…心変わりなさったり、しないで下さいませ。私はずっとシュネー様をお慕いすると誓いますから」


「私も誓おう、そなたをずっと愛すると。父上、私からのお願いもよろしいですか」


「なんだ?」


「国の宝物庫から1つ、何かアディの気に入る物を下さい」


「構わぬ。やっと褒章らしき願いが出てほっとしておるよ」


「私達は、平穏に暮らしたいだけですので特に浮かばないのです。金銭で適当な額を見繕ってください」


 夫妻は穏当な望みを口にした。王が笑う。


「一番叶え易い願いだな。あい解った」


「私も…何も浮かばなくて…。宝物庫から1点、何か興味が沸いたものを頂いてよいでしょうか」


 ソラルナも思いつかなかったらしいが、宝物庫が気になるようだ。


 結局、アディが選んだのは双玉の愛と呼ばれる宝物で、お互いに愛し合っていると使用できる。使用後は手の甲に文様が刻まれ、どんな状態異常を掛けられようと2人の間を邪魔をすることは出来ない。むしろ徐々に2人の間の愛を深めさせるというものだ。


「そなたはいつでも私の喜ぶ事をしてくれる…可愛いねアディ」


 2人で真っ赤になりながら双玉を使用しているのを見ると何故か微笑ましいものを見ている気分にさせられた。


 ソラルナは魔法のスクロールを。重力魔法を覚えてみたいようで、嬉しそうにスクロールを持っていた。


 私がやった、メテオフォールを空に返した、という使い方をしてみたいと言って笑う。


 早速使って重力魔法を発現させたようだ。


「あら…それなら私もスクロールが欲しかったですわ…しくじりました」


 ラライラが悲しそうな顔をしていると、王が笑った。


「金銭でなく宝物庫が良いならそうして貰って構わない」


「では私も」


 リクハルト夫妻はどちらも魔法のスクロールへと願いを変えたようだ。


 うきうきしながらラライラは火のスクロール、リクハルトは風のスクロールを持って出てきた。


「風は私も惹かれたんだけど、あまりに火の魔法に弱い敵が多いから…」


 氷魔法しかなくて悔しい思いを何度か経験してるラライナらしい選択だ。


 リクハルトは空を飛ぶ私達が羨ましかったという。


 どちらもその場でスクロールを使って魔法が無事発現したようだ。


 リシュは顔を引き締めると、発言する。


「ファムリタさんが学園に来ようと来れなかろうと、監視する方が1人、ついて欲しいです~」


「それだけでいいのか?」


「はい、多分一番大事な事のような気がします~。マリーに何かされては(たま)らないですし~」


「あい解った。優秀な監視を付けよう」


「待った、なら監視の人間にこれを付けて欲しい。錬金で偶々出来上がったんだが誰に渡そうか悩んでいたんだ」


 状態異常無効のペンダント。状態異常無効を込めた魔石と黒神竜の逆鱗で出来ている。剥がす時に漆黒に凄く嫌な顔をされたが。


 封じられたとはいえ、傀儡魔法を持っていたファムリタだ。他に状態異常の魔法を発現させる可能性がある。早紀ではないと判断したが、違う転生者かも知れない。


 異世界からの転移者は、強い願いで魔法が発現するのだ。ファムリタもまた転生者である可能性がある。偶にちらほらと日本の事を口にしていたからだ。魅了や狂化などを発現されると監視の人間が危ない。


 王はペンダントを受け取り、必ずつけさせると約束してくれた。


 全員に褒章が行き渡り、王は満足気に笑う。


「今回はそなたを消耗させる事なく歓迎出来ていただろうか?」


 一応立食パーティーの体裁を整えてあったので、食べたい物を皿に載せていたのだが、(しっか)りと頷く。


「王の心づくし、大変嬉しく受け取った。恩に着る」


 後は雑談などで和気藹々(わきあいあい)としつつ、食事になる。やはり妃教育からは逃げられないようで、アディはスケジュールを教わっていた。将来一国の正妃になるのだから、当然の教育だ。がんばれ!




 パーティーが終わると、流石に今度こそはシュネーは王家に戻された。少しアディの顔が寂しそうだったが、今までが異常だったのだ。傀儡対策としてウチに来ていたのだから、もっと早くに戻っていてもおかしくなかった。


 ただ、修練は王城で行うが、週に1度のダンジョン探索は一緒に行きたい、と王に嘆願し、許可を出されていた。


 家に戻ると、自室に受験用の教本が置いてあった。


 何気なくパラパラとそれを捲っていた私は吃驚(びっくり)する事になる。一度読んだだけの内容が沁みこむ様に忘れない記憶として知識に変わったのだ。知力パラメータの高さがそのまま頭の良さに直結しているようだ。ダンジョンなどでは知力は攻撃魔法の威力として換算されていたが、実生活ではこうなるのか、と納得する。


 アディやリシュ、ソラルナに伝えると、驚きつつ、自分でも教本を捲って見ていた。


「え。凄いコレ…ほぼ教本読んでるだけで丸暗記出来ちゃうんだけど」


「わたしも~吃驚だねえ」


「うわあ…これだと授業受けたらもう勉強しなくても試験で満点取れそうなんだけど」


 思わぬ副作用に、私達は笑いあった。どうやら筆記試験は問題なくこなせそうである。


 明日家庭教師に学ぶ際に先生が驚くだろうなと思いながら、肩の荷が降りたような気持ちで、その日は各教科の教本を全て1から読み直し、基礎固めと予習を済ませてから寝た。



1月もあれば、受験には困らなさそうですね。実技で何処まで加減出来るのかが問題ですね

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!狗神さんは、偶に1人で寝るのが寂しくてマリーと添い寝してます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ