17.マリーは人ではなくなった
マリーさんには色々と自覚が足りません。
人間じゃない?そんなまさか。嘘だろう
「ステータスオープン」
震える声で唱えると、現実がマリーを襲う。
マリエール・フォン・サリエル/聖女/神人(盤倉圭吾)14才/女
レベル110
HP150356/MP168570
力79830
体力76420
精神力78940
知力56840
忍耐78450
徒手空拳10
刀剣術10
礼儀作法8
アイテムボックス10
錬金術7
鑑定10
テイマー10
影魔法10
生活魔法10
光魔法10
闇魔法10
雷魔法10
土魔法10
緑魔法10
氷魔法10
風魔法10
水魔法10
火魔法10
時空魔法10
聖魔法5
大物狩り
生態クラッシャー
ドラゴンキラー
ビーストキラー
インセクトキラー
プラントキラー
アンデッドキラー
アモルファスキラー
スタンピード潰し
導師
女神の愛し子
ダンジョン踏破者
※今世と前世のパラメータがどちらも反映されている珍しいケース。聖女の称号の所為である。ステータス成長にも影響がある。また女神の愛し子の称号で、大切にされていれば常に幸運を引き寄せる。レベルとパラメータの上昇度は他に類を見ない。また、聖属性を扱いこなした功績で神と人半々の存在へ生まれ変わっている。今後も何か功績になる事があればまた神へと一歩近づくだろう
神 人。
なんだそれ。いやでも半分はまだ人間なのか?どういう事だ!マリーは心の中で叫びながらも呆然とステータスボードを眺める。
「「レベル110!?99を超えておられる!?」」
吃驚ポイントは人に依って違うらしい。3人はまじまじとステータスボードを眺めていたが、王はやがてゆっくりと顔を逸らす。法王は聖女情報を暗記すべく、全ての数字をぶつぶつと口の中で繰り返している。
「まさか聖魔法を発現しておられたとは…」
「頭の中に急に沸いて出たから唱えたんだ。私の所為じゃない。誘導されたんだ…」
少しレベルが上がっているのは、クーデター時に兵を纏めて潰した時のものだろう。人を倒してもレベルって上がるものなのか…。
3ヵ月後にはもう学園への入学テストだ。私は人間のまま受けられるのだろうか…。
ぶつぶつと呟いていた法王の動きが止まる。
「素晴らしいぃいいい!!!流石聖女ちゃん、こんなありえないステータスになるまで修練していたんだね!?だから色んな事件に巻き込まれても平然として除けたんだね!?これは努力の証と言える立派なステータスだ!凄い!尊い…!神よ…!」
法王のハッスルゲージが振り切れそうだ。ステータスボードに頬ずりしそうな勢いだったので、慌てて戻す。
「あ、聖女ちゃんは今オープンって付けたから僕たちにもステータスが見えてたけどね、ステータスって唱えるだけなら自分にしか見えないから。知らなかったから今出しちゃったんじゃない?」
幾人か転生者の世話もしたらしい法王が教えてくれる。
「そうなのか?それはいい事を聞いた。後で情報共有させて貰う」
お茶を一口。茶菓子を指先で弄びながら、法王は少し顔を顰めた。
「そう言えばエスタークとの戦争になりそうな危うい状態だね。僕の国はトルクスに加担するけどね。出来るだけ穏便に済ませて欲しいのが本音かな。まあ、エスタークの血の気の多さじゃまだ諦めていないから無理だろうけどね。失った兵も公爵に貸し出した分だけだからね。そこまで多くない。しかもどうやら聖女の情報も漏れたようだから、躍起になって奪いに来る可能性もある」
やめろ。政的事情を私に聞かせるな!戦争になんて関わりたくない…関わりたくないが。火の粉が私へと向いているなら二度と立ち上がれないよう叩き潰す他ない。
「君が居る国を攻めるなんて愚かな事だ。女神の怒りがエスタークに落ち、およそ人が生きられるような状況ではなくなってしまうだろう。其処のところがエスタークは解って居ない。今も先日のクーデターに加担した事で、ある程度の天罰は喰らっただろうに。頭が悪いのがトップに居るからね。何度失敗しようと君を手に入れれば全てが良くなると思い込んで襲ってくるのが目に見えるようだよ。首を挿げ替えたいよねえ。気をつけてね?聖女」
頭が痛くなるような事情を聞かされ、重い溜息を吐く。
「そもそも、害意を持った時点でウチには一歩も入れないんだがな」
「ああ!王宮にも今張ってあるね。自宅にも張ってあるのか。流石聖女。で、それ、聖属性の魔法だから気をつけないとね。」
「――それは解っていたが余りに状況がややこしいから少し整理を付けたかったんだ。傀儡が居なくなったなら以後の使用はよく考えてからにする。私を浚おうとしても、私より強い人間はそうは多くないだろうしな」
「それがいいよ」
ごそごそと法王は帰り支度を始める。思ったよりも短時間で解放されるようだ。有り難い。しかし一つ聞いておきたい事があった。
「なあ、法王。勇者という言葉に聞き覚えはないか?」
「勇者?――ああ~あの子かな。転生者なんだけど、勝手に名乗ってるんだよね。自分が特別だと思っている事にアイデンティティを求めてるから更正は難しそうだよ。そうだ。エスタークが拠点だった。戦争で攻めてくるかも?レベルも上げていたようだけど多分99は超えられないと思うよ」
マリーはすっと顔色を変える。うちにはまだ99に到達出来ている者が私以外に居ない。
さっさと上げて置かないと後悔するような事が置きそうだ。暫く家族のレベルを上げたいから、学園と仕事を公務扱いで休みにして貰えないかと王に交渉すると、簡単に許可が取れた。聖女の家族が危ない目に合い、こちらに神罰の飛び火があれば叶わない、との事だ。
シュネーを99まで持っていくのは無理かも知れないが、それ以外の者には99かそれ以上になって貰う。絶対だ。
こうして法王との有意義な会話を終え、今度こそ帰り支度をする。まだ昼にもなっていない。今日はこの後、晩餐前の修練。明日からは本格的にダンジョンでレベルを上げる事に決める。付いていてくれたリシュを連れ、我が家に戻る。
少し減っていたので、スポーツドリンクを補充する。
「どうしたのマリー、帰ってくるなり結構深刻そうな顔をして」
アディが不思議そうに私を見る。
「例の勇者だが、襲ってくる可能性が増えた。明日から全員ダンジョンに潜ってもらう」
「え?日帰りじゃないの?泊まり?」
「いや、体はきちんと休めて欲しいので毎日家には帰るが、起きて朝食を取ったらまたダンジョンに戻って貰う。リシュ、毎日昼食と晩餐をアイテムボックスに詰めて欲しいのだが、大丈夫だろうか?」
「大丈夫ですよ~」
アディは不思議そうな顔をする。
「そんな強そうにも見えなかったけど…そこまでする必要ある?」
「…戦争に紛れて来られると厄介になる可能性がある。エスターク所属の転生者だそうだ」
「エスタークかあ…この間公爵に貸した部隊がどうなったか解ってるだろうにね」
「私目当てで来る可能性も大きいらしいからな。全員怪我などしないようレベルを上げて欲しいんだ」
「……どうせマリーがメテオフォールでほぼ倒すだろうに、必要かなあ?」
「何かがあって私が動けない事態に陥る事もあるかも知れないだろう?それに勇者もメテオフォールを使えるようになるかも知れないじゃないか」
メテオフォールは火魔法10と土魔法10があれば使えるのだ。合成にちょっとコツが必要だが、出来ればアディとリシュにも使えるようになって貰う。
「うーん、想像出来ないんだけど、解った。強くなって悪い事はないからね」
そして全員が揃った晩餐の席で、私は告白した。
「どうやら私は、ただの人間ではないようだ」
「「「「「「うん、それは皆知ってた」」」」」」
「神人…というらしい」
「「「「「「あー。それっぽいと思ってた」」」」」」
私の劇的告白は、家族に流されてしまった。何故だ!?此処は普通驚くところじゃないのか!?
ちょっと短かったですね。これで王はあまり聖女にあれこれ言う事が減ると思います。
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