13.襲撃者
1人居たら30人は居ると思え!な襲撃者ですが、上手く片付くでしょうか
このところ、いつにも増して襲撃者が送りこまれていると聞く。
ほぼ全員が操られて襲ったようで、どんなにキュアで正常に戻しても、操った相手が解らない。若いブロンドの女が男から命令されてやったようだ、とやっと1人が証言した。掛かりが浅かったのだろう。
操られていると解ったなら、キュアで戻してやった方が良い。稀に戻してやってもまだ襲い掛かって来る者が居る。そういう者は捕縛しようとすると自爆する。あまりなやり方に顔が歪む。
警護してくれる3人の暗殺者は無傷とはいかず、負傷していた為、ヒールを掛けた。ほぼずっと眠れて居ないようだった為、休養日にし、ゆっくりと休んで貰った。すいませんと繰り返していたが、こちらこそすいませんと声を掛けたい。リシュが癒し手(精神)を掛けると、すっと表情が安らぎ、泥の様な眠りに落ちていった。今日は護衛してくれた3人を休ませるので、各自気をつけるよう促す。
シュネー王子にはアディについていて貰うよう言って置いた。これである程度は大丈夫だろう。
早朝の修練が終わってから、私はシュネーに声を掛ける。
「先に武具を作っておこう」
「王家から自分のものは取り寄せてあるが…」
見せて貰うと、ただのアダマンタイト製だ。私達の持っている武具よりかなり落ちる。
「これじゃちょっと足りないな。いいから付いてきてくれるか?」
「はい」
シュネーの手を握る。
「…転移」
鍛冶屋に着いた。王子は目を見開いて吃驚している。
「こんな魔法が…素晴らしい」
「シュネーも時空魔法を鍛えれば使えるようになる」
「ほいほいほい、マリー殿ではないか!今日はメンテナンスでもするか?」
「いや、メンテナンスはまた全員で来ようと思う。今日はこのシュネーの武具を頼みたい。先日作って貰った仕様で、武器は槍だ」
鍛冶屋は笑顔で歓待してくれた。そしてシュネーのサイズを測る。
「いくらになる?」
「ほい?まだ素材が余っておるよ。水臭い事を言うものじゃない。無料でやらせてくれ。あれからワシがどれだけ稼がせて貰ったと思っとるんじゃ…。ああ、神鋼だけは余っていたら少し欲しいところじゃの」
あまり沢山出しすぎても邪魔になるだろうと思い、3つだけアイテムボックスから出して渡す。鍛冶屋の目が輝く。相変わらずの素材フリークぶりだ。
「足りるか?」
「ほいほい、大丈夫じゃ、これなら一式用意できる。明日取りに来てくれ」
私は思わず苦笑する。
「また徹夜で作るのか?」
「当たり前じゃわい。神鋼不足で最近作れておらんかったからの。腕が鳴ると言うものよ」
ニヤリと笑う鍛冶屋。明日の同じ時間ごろに取りに来るといい、というので、その言葉に甘えた。
転移で戻ると、侵入者さらに2名追加。捕縛されている所を見ると、キュアで戻りそうだ。
「キュア」
もがいていた2名が大人しくなる。捕縛を解くと、解せないといった体であった為、そのまま門から送り出してやる。
きりがない。MPが持つか解らないが、屋敷全体をバリアで覆う。住民に害意あるものは入れない、と条件づけをしておく。結構な魔力を持っていかれるが、戦闘に使うにはまだ大丈夫だ。
操られているものも、害意で入ってくるのに間違いはないのできちんと弾く筈だ。触ると自動でキュアが発生するようにもしてみたが、更にぐんと魔力を吸われる。まあ、魔力を温存すれば戦えるだろう。
それに、一度張ったら3ヶ月は持ちそうだ。今日だけ魔力をなるべく温存すればいい。
これで、バリア周りに留まる者は爆発組だけだ。ふう、と一息ついて服屋へ行き、シュネーの分の平民外出着と鎧下の天上蚕製のものを買う。更に転移して、革製品を扱う店で帯槍用のベルトとポーション用のベルトを購入。
家へ戻る。厄介者の相手をするのが億劫で、魔力を使いすぎてしまい少しグロッキーだ。マジックポーションを飲んで、2刻ほど仮眠を取る。勉学の時間がなくなってしまった…。
晩餐前の特訓時、バリアの周りを見てみたが、入れない、ともがいている者が1名居ただけだった。試しにスリープを掛け、捕縛する。口内に隠している毒と、契約と連動している心臓付近の爆弾を取り除いてヒール。地下牢へ放り込んでおく。舌を噛まない様、猿轡もしたし、時空魔法で過去を少し覗いてみる。
でっぷりと太った貴族が映るが、名前が解らない。途中でちらっと女の映像も映った――…ファムリタだ。間違いない。ウチの影とも情報共有しておく。マリーが関わると、自分たちの立つ瀬がないと3名は苦笑していた。そんな事はない。暗殺者を拷問で情報を得るのは本職に任せたい。
修練に戻ると、シュネーにアディが型を教え込んで居たため、体力作りを断念した。
娘が本気で恋をしているのだ。邪魔は出来ない。
リクハルトの元へ行き、爆弾を取り除いた捕虜を城に送って貰うよう伝ようかと思ったが、自分で転移して運ばないと、また厄介者が絡んでくる可能性がある。私が直接行って信用されるかは解らないが、やってみよう。
地下へ戻り、捕虜の頭を掴んで唱える
「転移」
直接王の間へ転移してしまった為、護衛の兵士が一気に気色ばむ。相手が私だと知って武器を引くが、目が語っていた。なんて場所へ転移するんだと。捕虜の1人を引き摺ってるので、王宮入り口からは遠かったんだ。許せ。
「爆弾を取り除いた、実行犯に繋がる捕虜を持ってきたのだが、何処へ持っていけばいいのだろうか」
私の急な到来に、慌てて王座から降りた王が、暫く考えた。
「第三部隊隊長の元へ送って欲しい。今部隊長の下に、傀儡ではない証言者が居るので、双方の話を合わせてみるのが一番効率がよさそうだ…今の所、その証言者の話では黒幕はアスモルト公爵である可能性が高く、ほぼ間違いはない、と聞いておる。城内にも貴族派が居るので、ちゃんとした案内を付けるので頼んでも良かろうか?」
「それくらいなら造作もない」
少年が1人私の前に出て来る。彼が案内人だろう。
2人連れ立って、捕虜は引き摺って。第三部隊へ訪れた。
その間1度10名ほどの団体に襲われたが、纏めてキュアを掛けると残ったのは1人だけだった。そいつは遠慮なく首を飛ばした。その首も何かの情報になるかも知れないと思い、左手で頭をぶら下げた。
そんな物騒な訪れに、隊長らしき者が対応に出て来てくれていたのだが、笑顔が引き攣っていた。
事情を話すと、首を真剣に見て、近衛兵だな、と告げる。捕虜の方は第一部隊の兵であったらしい。拷問に掛けると約束してくれた。
しかし近衛にまで潜り込んでいるとは。一度踏み絵をして完全な王派閥でない者は兵から一旦外した方が良いと提案しておく。隊長は苦笑しながらも、参考にすると言った。
どうやら完全な王派閥だけで兵を染めると貴族派からの突き上げがとんでもなく面倒な事になるらしい。既に面倒な事になっているので今更じゃないのかと問うと、それもそうだな、と隊長は遠い目をした。
私は魔石を取り出し、キュアの魔法を篭めて行く。徐々に輝いていく魔石が満タンになるまで注ぎ、隊長へ渡す。
「これを使えばキュアが使える。ただの傀儡ならば元に戻るだろう」
すると、感極まったような顔で隊長はがしりと私の腕を掴んだ。
「証言者を手にしてから、今までコイツは絶対にありえないと言う面々からの襲撃があったんだ。それを幾つか融通して貰えれば本当に助かる!」
真剣に言う隊長から手を引いて戻し、5つほどの魔石にキュアの魔法を注ぐ。
「使わなくても触れさせる事でも効果がある。然程回数は使えないからな。上手くやりくりして欲しい」
「わかった、恩に着る………キュア?もしかして聖女様ですか?大変失礼な対応で申し訳ありませんでした!」
「改めなくて良い。素の声を聞かせて貰った方が真実かどうかが見極めやすい。今王宮は疑惑ばかりが蔓延している。貴方だけでも大丈夫だと思えるのは非常に嬉しい事だ。礼儀を重んじ、下げた頭の下でどんな表情をしているか、などと考えるのは億劫だ」
隊長は少し迷った様子だったが、提案を受けてくれるようだ。跪くのをやめ立ち上がって握手してくる。
「ありがとう、必ず役に立たせてみせるよ」
そう言った隊長の言葉に頷いたのを最後に、私は家に転移で戻る。
今度は結界には何も起こっておらず、内部への侵入はなかった。一先ず胸を撫で下ろす。
そろそろ襲撃にも一区切りつきそうだ。後少しでこの面倒な状況から解放される筈だ。王宮側が積極的に動いてくれているのが頼もしい。
――しかしファムリタは一体何に関わってしまっているのだろうか。
今回はちょっと字数少ないですね。冒険もしてなくてすいません。
読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!次、は何処まで書けるか自分でも解りませんwでも王子とダンジョンに行けるかと聞かれるとまだじゃないかなと思いますw