104.もうゴリラはお腹一杯だけど肉は美味しい
女神はゴリラに何を期待してるんでしょうかねえ
次の城へ、徒歩で向かうか転移で向かうかを話し合う。無駄にした時間の事を考えると転移一択なんだが、敵の強さが上がって来てるので、レベル上げも兼ねて徒歩で行くか。結局中間案の、城の少し手前に転移して、周りを掃除してから城に向かう、で決定した。
朝ごはんに昨日焼いたバター入りのパンと仕込んでおいたゴリラハム、サラダ、コーヒーのメニュー。コーヒーだけは実はうっかりリシュに渡し損ねた麻袋入りコーヒーと珈琲セットがあるので多分問題ない。ちっちゃいミルしかないけど、どうせ飲むのは3人だ。
と、思っていたらちゃっかり私の分の朝ごはんを食べている不審な女神が!一声かけろ、と頭をぐりぐりしながら言うと、必死で頷いてくれたのでもうやらないだろう。
自分の分を用意しなおして朝ごはんを食べる。こうしてると人間に戻ったような気持ちだ…いや、まだちょっと人間だけどね!人間だけどね!!
しかし、昨日自作でシーザードレッシングを作ったけど、こっちの奴らってサラダ食べないんかね?ドレッシング見かけたこと無い。
ハム以外にも腸詰も作ったんだけど、燻製室はなかったので諦めて簡易燻製器を作ってそこらの木からウッドチップを取って燻した。上手に出来たかは解らない。解らないけど食いたかったんだもん。ソーセージ。なかなか休めなくなる事も見越してかなり作った。こっちのやつは腸を捨ててしまっているようで、ゴリラから下拵えで取った腸をクリーンして1頭分の腸をまるまる使った。腸の中にミンチを詰める機械なんてある訳がないので、錬金で詰めた。粗引きが好きなので粗引きソーセージだ。この家を燻し臭で満たしてしまったけど、きっと2度とこないから平気!
後、現実世界に戻ったら出来ないだろう、後光と翼を仕舞わなくていいのが楽だー…。この2つ、仕舞うのかなり大変なんだよな。そのうち慣れるといいんだけど。
さて、転移場所は…んー…此処らへんでどうだろうか?指差すと、黒曜が頷いたので、ボスから少し離れた場所に転移。いきなりゴリラの隣に現れてしまい、ゴリラも吃驚して後退ってた。
動揺してる隙に無拍子で首を狩る。アイテムボックスに入れる――そして、周りに湧いてきたゴリラ(青眼)が30匹。なるべく剣技で倒してみようか。聖爆剣閃でまず数を減らす。黒曜も合わせてくれるようで、千刃挽歌が彼等の数を減らす。残り10匹、攻撃を掻い潜りながら着実に頭を飛ばす。向こうの攻撃は一撃一撃が当たれば致命傷だ。集中を切らさず、相手の筋肉の動きを見て判断する。飛燕6連で6匹の頭を飛ばしたところで黒曜側も戦闘終了。あ、ちょっと掠ったな肩。大きく抉り取られた肩を見て、グレーターヒールと修復、クリーンを掛けてやる。
「相手の動きは手を見るんじゃなくて腕の筋肉を見た方が解りやすいぞ」
「私は今迄そんな修練はして来なかったので、急には無理だ…。徐々にそっちに切り替えるようにはしてみる」
「うん、行き成り肩抉られてて吃驚したから、気をつけてな」
食えそうなゴリラが結構出来ちゃったので、全部下拵えしてアイテムボックスに保管。
そういやブタとか鶏とか、骨で出汁取るけど、ゴリラって骨で出汁取れるのか…?要検証だな。
鶏…?発見。でかい。飛んでる。でもこの白い羽と体、赤いトサカまで見るとでっかい鶏にしか見えない。よし、鶏肉と…出来れば卵を確保したい!ぶわっと凄い風圧をくれながら、鋭い蹴爪でこちらを引っ掛けようとしてくる。
そんなでっかい蹴爪受けたら私らの体なんて貫通するだろうが!足の動きを見切って避ける。避けながら軽くジャンプして回転切り。首の位置が高いんだよ!我、身長175cmぞ!?偶々か必然かは解らないが、前世と同じ身長だ。
「卵あるかな!?」
「あっちの青いトサカのが温めてるのがそうじゃないか?メスはトサカが青い種類の鶏なんだな」
ムダ口を叩きながらも、鶏の猛攻を避けて黒曜も首を狩る。美味しいんじゃないか?という期待が私達の共通認識のようだ。10匹ほどの集団だったのだが、メスは3匹。オスは…っと、今狩ったので残り2匹だ。
逃げ出そうとするメスの頭部に飛燕3連。残りはオスのみだ。と思ったら黒曜が狩り終えていた。多重気掛けの刀術と無拍子、範囲魔法があれば、雑魚には然程苦戦しない程度になってきている。黒曜はちょっと油断しちゃったね。
全部下拵えしてアイテムボックスへ…一応オスメス分けとくか。味が違うかも知れないし。
卵は全部ででっかいのを20個確保。中身を鑑定したが、ヒヨコになりかけてるのはなかった。アイテムボックスに仕舞う。オムレツとかいいねえ!
森の中でもう一度ゴリラ集団と出会ったが、かなり肉が一杯だから悩んだ。悩んだけどリシュって店やってるからな。期間限定フェアとかで使ってもらうのも悪くない。
少し誘き出して刀で首を狩る。すると他のゴリラが連動して反応してきたので、重力場を50倍で展開。地面に貼り付けられる。最後の一匹だけが膝をがくがくさせながらも立っている。ボスか。飛燕10連、全て首に集中させると首が飛んだ。残りのゴリラはそのまま首を狩って戦闘終了。
これ、多分序盤に出会ってたら何処も切れなくてパニックになってただろうなあ。敵にタッチできれば錬金で皮膚を脆くする事は出来るんだけどね。そんな危険しかない行為に及ぶくらいなら火力上げる方で考えるわ。
さて、森を抜けた草原でも虎と戦闘になり、範囲魔法で処理したので、今は館の前ですが。今度はちゃんと扉から出てくれるかな?
門を潜って扉をノック。…………反応がない。
そっと開けてみる。鍵掛かってなかった。床に倒れた木乃伊みたいな男女が眼に入る。
「よ…よう…こ、そ」
なんかもう、喋るな、死ぬぞ!?と言いたいくらいの瀕死ぶりですが、これボスなんですか…?
でも、着ている衣装からボスなのは確定。迂闊に近寄り過ぎないようにする。
「あ…ぁあ…久々の…精気…」
これだけ離れてても気に干渉出来るのか、だんだん木乃伊夫妻に肉がついて人間がましくなってくる。
立てるようになった、と思ったら急速に回復し、美男美女の夫妻に変わる。えぇー…詐欺っぽい…。
「ようこそ我が家へ。食卓に上がってくれる者が最近居なくてね。本当に歓迎するよ」
「いえ、私達も別に食卓に上がりに来たわけじゃないですから」
「え?では一体ウチに何のご用事で?まさか強盗ですか?うちはお金はないですが!」
「いえ、お金は要りませんので、その命を頂きます」
その、の時点で無拍子で首を狩る。木乃伊だった名残なのか、血は出ない。
「やだあなたったら首が取れちゃってますよ?」
…やはり首では死なないか。心臓も動いてはいないだろう。塵にするしかないようだ。
「いやはやお恥ずかしいところを」
普通に首を取って元の位置に戻す。一瞬で癒着したのが解った。
男には天の配剤。女には天罰を飛ばす。
一切水っけのなかった男が、急激に5倍くらい水で膨らんだ。
女は雷を受けてふらついている。女を黒曜に任せる。黒曜は頷いた。
大量の水を取り込んだだけであるというのに、男はどうやら瀕死のようだ。体中の穴から水を溢れさせて白目を剥いている。そのうち水が酸に変わったようだ。溢れる水と共に溶けた男の肉が混じり始め、酸特有のツンとした臭いが漂う。黒曜を見ると地中拘束からの崩壊の雨で女が徐々に塵になって空へ消える。
全てが酸に溶かされた後、何処から湧いたのか大量の血液が落ちてきて、床を血びたしにする。女の方も同様だ。
クリーンで払拭しようとするが、出来ない。まさかまだ生きている?
ぼこり、と血の海から人型のような細長いものが立ち上がる。これだけ広範囲に血があると範囲を絞り込めないので聖炎の選定で敵対するもの全てを的に攻撃を仕掛ける。炎の中で人影のようなものの咆哮が聞こえる。
「ゥガアアアアアアアア!!!コンナハズジャ!ワタシハ!!!!」
「ィギイイイイイイ!!!アナタ!アナタァア!!」
絶叫が止み、炎が消え去ると、其処には塵一つ残っては居なかった。
さて…今回もちょっと冷蔵庫は開けたくない…。持ってきた調理道具でホワイトシチューとパン、珈琲と野菜炒めを入れたオムレツを作って出した。
あ。卵凄い!濃い!美味しい!!鶏肉は可も無く不可も無く…あ、美味しいのも混じってる。鑑定!コッカルバードの肉 (メス)オスは食用に向いていないがメスが美味である為、メスを守るためにオスが体を張る。
食用に向いてないのかよ。でもうちの世界じゃ普通の味だよ。メスめっちゃ美味いから言いたい事は解るけど。今度見かけたらメスだけ保存しよう…。
調べた事を2人に(知らない間に増えてた。3人分調理済み)話すと、へえーという顔をする。
「でも不味くは無いんで、狩っちゃった分の鶏肉 (オス)は優先的に消費します」
むむ、と女神は眉を顰める。
「そちの料理の腕じゃから普通の味になっておるがな、これ、料理スキルない人間が調理したらすっごくマズい肉なのじゃよ?」
「あれ。わ。料理スキル10になってた。うーんでもなー一旦食材として詰めた物を捨てるのは信念に反するので食います」
「私はマリーの料理ならなんでも美味しいから問題ない」
「むむう。暫く美味とはお別れかの。いや、不味くはないんじゃがな」
「卵は美味かっただろうが」
「うむ!これは美味じゃ!濃厚で、舌の上で蕩けるのじゃ!!!」
もう見た目は成人女性なんだけどなあ。言動がチビの時と変わってないんだよな。
ふと気付くと水晶のような大きな玉を持ち込んでいる。
「何持ってんだ?」
「ふふん。此処でエネルギーを補填出来る事が解ったからの。溢れてムダにするのは勿体無いのでエネルギーを篭める入れ物を持って来たんじゃよ。此処から先、少し楽になってくるのじゃ…ありがとうマリー」
「余裕やアソビは必要だからな。天秤に備えてそういうものも幾つか作れるなら作っておいた方がいいだろうな」
「そうじゃの。今日も美味しかったぞ。また明日も来るゆえ料理を作るときは我の分も用意しておいて欲しい」
「わかったわかった。またな」
すっと女の体が消える。やっぱ食って大事だよなあ、と再認識した。
私達も、…風呂場もなんか嫌だったんでクリーンを掛けてベッドで眠った。
調理して普通に食べれるって解ってるものを捨てるのは作者が嫌なんですよね。パパはそれを引き継いでます。
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