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10.敵満ちる混沌のダンジョン

スタンピードの続き攻略です。ちょっと邪魔者が居ますねー

 早朝、と言っていい時間だった。


 本来ならば魔法の修練をし始めるところ、といった所か。


 リシュとラライナは厨房に立ち、朝食と昼食、万一の為の夕食も用意している。


 お呼びでない愚者の到来に、リクハルトが対応する。


「私、教会の司教をしております、メルセラ・ド・ランドエイジと申します」


 にこにこと笑う顔の中に、脂ぎった野望と卑しさを感じ取り、リクハルトは顔を歪める。


「教会がうちに一体何の用件でしょう。今年の寄贈は済ませておりますが」


「いえいえいえいえ、そんな事でわざわざ私が出ることなどありませんよ。聖女の事についてお話がありましてな」


 揉み手をせんばかりに迫ってくる司教。だが、家の中に入れてたまるものかと扉の前を動こうとしないリクハルト。静かな対立が生まれている。


 今日は激しい戦闘が続く筈なのだ。こんな所で足止めされる(いわ)れは無いし、家族に心労の一つも許さないと言った風情である。


 どうにも動こうとしないリクハルトの態度に司教は苦虫を噛んだような顔になる。


「うちのマリーの事でしたら、今日はスタンピードの洞窟へ魔物退治へ(おもむ)く予定です。あまり(わずらわ)わせないで欲しいですな」


 司教は目を見開いてリクハルトの肩を掴む。微動だにしなかったが。


「聖女は国の宝ですぞ!!そんな危ない所へ行って万一があればどう責任を取るお心算で!?いやいやいや、これはいけません、折角蘇ろうとするこの国を潰そうとしているようにしか思えませんな。貴方では話にならない。聖女を出して頂きましょうか」


 リクハルトは眉間に皺を寄せる。なんだこいつは。うちのマリーの力を知らんのか、と小さく独りごちる。


 と、後ろから肩を叩かれた。マリーだ。すい、と顎で代われと示唆され、リクハルトがしぶしぶ場所を譲る。


「私が聖女だが、何か用か。今日は忙しいので後日にして欲しいものだが」


「おお…聖女!貴方が!」


 どうやら鑑定の魔道具を持ってきたらしい、拒否する間もなく早速鑑定されてしまう。


「おお確かに聖女…聖…なんですかこのレベルとパラメータは…世の支配者になる御予定ですか…」


 愕然とした顔になりながらも映し出されたパラメータを見て、目を白黒させている。



マリエール・フォン・サリエル/聖女(盤倉圭吾)14才/女


 レベル89


 HP35810/MP40269

 力47320

 体力45620

 精神力41000

 知力21783

 忍耐43650


 徒手空拳10

 刀剣術10

 礼儀作法8

 アイテムボックス10

 生活魔法10

 光魔法10

 雷魔法10

 土魔法10

 緑魔法10

 氷魔法10

 風魔法10

 水魔法10

 火魔法10

 時空魔法10


 大物狩り

 生態クラッシャー

 ドラゴンキラー

 ビーストキラー

 インセクトキラー

 プラントキラー

 アンデッドキラー

 アモルファスキラー

 スタンピード潰し

 導師

 女神の愛し子


 ※今世と前世のパラメータがどちらも反映されている珍しいケース。聖女の称号の所為である。ステータス成長にも影響がある。また女神の愛し子の称号で、大切にされていれば常に幸運を引き寄せる。レベルとパラメータの上昇度は他に類を見ない。



「世界などいらん。今日はダンジョン掃除の予定だ。忙しい。帰ってくれ」


 呆然と見入ってしまった司教は、それでも諦めない。


「い、いやいやいや、そんな危険な場所に行かれるなど…」


「…?目が悪いのか?私のステータスを見たのだろう?」


 理解が出来ない、と顔に書いてある。この司教は何をしに来たのか。魔物と闘うなと言いたいのだろうか?


「れ…礼儀がなってないようですな!これはますます教会で保護をし、きちんと礼節を覚えて頂く必要がありますぞ!本来1公爵の出しゃばる事ではないのです!国で保護をされなければ他国に狙われる事を考えておいでですか!」


「考えて、対策もしてあるに決まっているだろう。当たり前の事を言うな」


 王から贈られた影の3人は暗器使いで、暗殺者程度が相手なら割と頼りになる。


「な…な…なんと言う礼儀のなさ…!!教会の方が護衛も多く安全に決まっている!」


 これはもう、何を言っても無駄のようだ。一つため息を落とし、マリーは司教の手を取る――と思われたのと同時に、司教は投げ飛ばされてひっくり返っていた。


「私は此処で充分過ぎるほど幸せにして貰っている。むしろ家族と引き離されれば不幸になる。この意味が解るな?解ったら頷け。私は余り気が長い方ではない。次は何処か折るぞ」


「ひっ…ひいいいいっ!?なんと言う事を…っ、次は必ず頷かせて見せますぞ!!」


 ひっくり返ったまま、司教はガクガクと頷く。暫し置いて、立ち上がって衣服を正した。


「今日のところは!これで失礼する!」


 早足で乗ってきた馬車に乗り込むと、急ぐように駆け出した。


「保護して貰うというか…あっちが暗殺者でも送り込んで来そうな勢いだな…。影の皆さん、留守宅をお願いしたい」


 シュタっと3人が何処からともなく現れ、マリーの前に膝を折る。


「「「了承しました。どうぞそちらも御存分に」」」


 そしてまた、空気に溶ける様に姿を眩ませる。マリーは暗殺者のスキルにちょっと興味が湧いた。


「さて、邪魔者は帰ったし、皆準備してそろそろ行くぞ」


「教会の不敬な振る舞いは王にも伝えて置く事にするよ。――用意して来よう」



 全員準備万端でマリーの転移でダンジョン前に到着する。


 リクハルトもソラルナも剣を使いたいようなので前列に。リシュとララルナは後衛だ。前衛4、後衛2、となるが、それほど悪い陣形ではないとマリーは思った。魔法の範囲攻撃がこれ以上なく有効な状態のダンジョンだ。スキル詠唱を邪魔される可能性は減ったほうがいい。


「行くぞ」


「応!」


 1層は昨日マリーとアディが片付けた為、本来よりも少し多い程度の魔物達が徘徊している。その程度であれば何も気を使う事無く全員が攻撃できる。マリーは折角楽しんでいる所に水を差すような事をしたくなかった為、漏れた魔物の駆除程度に抑えておく。


 2層からは勝手が違う。攻撃の届かない階段の終わり地点の安全圏から、先ずは全員で範囲攻撃する。


「ファイアエクスプロージョン!」


「ダークボルテックス!」


「アイシングピアーズ!」


「ウィンドテスタメント!」


「ロックエクスプロージョン!」


「ホーリージャッジメント!」


 見える範囲だけに撃つには少し過剰攻撃だったかも知れない。


 かなりの範囲が空き、一行はそこに移動する。


 各々の獲物を構え、リクハルトとソラルナは剣を振るう。一撃とは行かなくても2度ほど斬りつけると敵が倒れる。地道に1匹のみをターゲットにして無茶の無い戦闘をこなそうと頑張っているが、この速度では魔物の勢いに飲み込まれてしまう。


 アディは特に問題なく道を切り開いているのを見て、マリーはリクハルトとソラルナの援護をしつつ道も開くよう、刀剣での範囲攻撃である飛燕連斬を見舞う。魔物の攻撃の届かない場所に陣取ったリシュとラライナは味方を巻き込まないよう、戦闘区域から少し奥の方を狙って範囲魔法を叩き込む。


 そのうち、開いた区域が増えた為、速度が上がっていく。最終的にはほぼ駆け足になりながら2層の殲滅は終わった。流石に今回は素材を回収する暇など無い。


 敵の難易度が入り乱れている為、3層も2層と同じようなものだ。


 2層でのやり方と同様で、3層も踏破する。リクハルトとソラルナの動きが目に見えて良くなっている。



 15層まで進んだ一行は、安全地帯の階段に座り、休憩を取る。


「多分20層で中ボスが出ると思うが、臨機応変に。何層まであるか解らないが、出来るだけ奥へ進んでから帰ろう。」


 棒飴の甘さが体に沁みる。残念ながら腹はさほど膨れない。朝食を出して貰って皆で暖かい食事を()ると、お茶を飲んで一服だ。体の芯が解れた程度で、一行は鏖殺(おうさつ)を再開する。リクハルトとソラルナはほぼマリーの援護を必要としなくなった。


 その為、今までにも増して攻略速度が上がっている。


 それほど時間も掛けずに20層へ到着。敵が何かは解らない。


「行くぞ…!」


 扉の中に居たのはゴルゴンと呼ばれる化け物だった


「鑑定…ッキュア!」


 殆どのメンバーがゴルゴンの目を見てしまって石化が始まるが、即座に気付いたマリーからキュアで解除を受ける。


「敵の目を見るな!気配で察して魔法を打ち込め!」


 自信なさげな一行であったが、何かを察知したように範囲魔法を打つと、ゴルゴンの何処かに当たる。


 自身は、目を見ずに瞬歩で移動、空を飛び、背後を取って思い切り首根に斬撃を打ち込む。だが沢山の蛇の髪に遮られ、命を奪うほどの深さにはならなかった。ばらばらと落ちていく蛇の残骸を気にせず、返す刀で頚椎(けいつい)を絶つ。耳を(つんざ)くような悲鳴が上がり、ゴルゴンの体がどう、と倒れる。


 何名か石化して居た為、キュアで解放、ようやく一息つく。


 ドロップ品は非常に美しい装飾の施された手鏡が一つと神鋼。


 鑑定してみると鏡は魔道具のようだ。名前は「真実の鏡」姿を映した者の正体を暴く物のようだ。念のため取って置くことにする。



 水を飲んで少し休憩を取った後は、21層へ。此処からまた2層と同じルーチンの開始である。


 40層に到達する頃には流石に疲労を隠せなくなってきている一行は昼食を摂る。マリーから2刻の仮眠を提案され、マリー以外の全員が眠りにつく。


 40層へ降りる階段の中から見えるのはボス部屋の証である大扉。中ボスなのかボスなのか、マリーには判断しかねるところだ。出てくる敵の難易度から、40~60層程度ではないかと思ってはいるが、外れる可能性もある。その場合は60層でポータルを取って、一度帰還する心算だ。仮眠分の体力では、そのくらいしか持たないだろうと見当をつける。


 マリー自身は高いパラメータのおかげでそこまで疲れてはいない。ボリボリと棒飴を齧り、甘味が体に沁みる。それで回復する程度だ。ふと扉に注意を向けると獣の臭いがする。しかも1種ではなく4種ほどの。


 敵がキマイラであると判断する。頭を全部潰すか心臓を狙うのがベストか、と独りごちる。



 2刻後、60層で終わらなくても60層到達を目安で帰還する事を一行に告げる。最後まで行かないのかと驚いた顔で確認するリクハルト。


「そこまで全員の体力が持たない。注意散漫になる前に戻らないとうっかり誰かが死に掛けるぞ」


 と、真剣な顔で諭す。一行は自分の状態を解っている様で、苦笑して頷く。


 少しストレッチなどをこなした一行は、扉を開けた。


「鑑定!オールドキングキメラ!頭全部か心臓を狙え。弱点は火だ」


 4つ首の魔物に対し、ファイアトルネードで牽制し距離を取る。


 全員が火の魔法を使える訳ではないが、リクハルトが面白い事をした


「ファイアエンチャント…!」


 火の魔剣の如く、炎を纏った剣で山羊の頭を落とす。


 アディとマリーもそれを真似、炎の刃と化した刀でそれぞれ獅子と狒々(ひひ)の頭を落とした。瞬歩でヒットアンドアウェイをこなす一行に、キメラは苛立ち、ドラゴンの頭から無属性のブレスを吐く。


「ロックウォール!」


 間一髪で防いだリシュ。ブレス後の硬直を狙って前衛部隊が残りの1つの頭を落とす。


 ふらふら、と2・3歩歩いたキメラは、静かに倒れる。


 ドロップ品は大きな魔石と深淵の華という錬金素材、神鋼だ。


「本当に、神鋼以外の金属が出ないんだね。マリー」


「オリハルコンと金ならダンジョンに潜った初日にちょっと出たんだが」


「「「「「それ絶対おかしいから」」」」」


「さて、最後の休憩地点だと思って欲しい。このまま行くか、少し休むか?」


「だめ、今休んだら多分皆動けなくなるよ。進もう?」


「了解だ」


 また同じルーチンの繰り返しとなる訳だが、少し一行の疲労が見える。また、奥に近くなった所為か、少し魔物の強さが上がっていた。


 リクハルトとソラルナには後衛魔法部隊に加わって貰い、アディとマリーが前衛を務める。手加減なしで鏖殺(おうさつ)していくマリーの後姿に安心した一行は少し奥へ向かって範囲魔法を降らせていく。少し小走りになりながら繰り返すと、意外にあっさりと殲滅が終わる。


 59層まで繰り返し、60層手前の階段で確認する。


「疲れすぎて戦闘の出来ない面々は此処で待っていてくれ。大丈夫な者だけボス戦と行こうじゃないか」


 階段脇から見える扉が、今までに無く豪華で重厚なのだ。多分このダンジョンは全60層なのだろう。


「確かに疲れてはいるがね、マリー、此処でボスだけ見れないなんていう寂しい者は居ないと思うよ」


 全員がうんうん、と頷く。


「…解った。何かあればフォローしたいが、相手によっては出来ない事もある。自分には無理だと思ったら、なるべく部屋の端でバリアかウォールを掛けて篭っていて欲しい。――行くぞ」


 しっかりと頷く一行を眺め、一息吸い込んだマリーは毅然とした表情で扉を開ける。


「鑑定!悪魔・ベルゼブブ!火と聖が弱点だ。目は複眼だから潰してもキリがない。腹から魔石のあるコアを狙え!首を落としてもいい」


 そうは言うが、ハエにしては歪んだ体のベルゼブブに、首らしき部位が見当たらない。溶けて張り付いたような形の風体は球形に近い。眷属なのか、ブンブンと傍を飛ぶ無数のハエは1体が赤子に匹敵する大きさである。


「眷属は無理に倒さなくてもいいが、襲われたら対処しないと卵を植えつけられるから必ず倒せ!」


 そう言われると、一行は敵に近寄る事を躊躇ってしまう。大半がボスに寄り添って飛んでいるからだ。


「ホーリーカノン!」


「「ファイアグレネード!」」


「アイスランチャー!」


「ウィンドシェーリング!」


「アースマイン!」


 小さいが範囲を持つ攻撃の余波で眷族がいくらか落ちる。


 ベルゼブブは嫌そうに一声鳴いた。


「「「「「「ぐああ!?」」」」」」


 その不快な音は腹に響くような振動を持ち、一行の鼓膜を破る。


「っエリアヒール!飛燕6連!」


 全員にヒールをかけつつも、急に此方へと侵攻してきた眷属を両断。


 本体も短い足を振るって牽制しており、なかなか近づけない。


 時折消化液のようなものを吐きかけて来るのを必死で避ける。


 そのうち黒く濁った靄を纏いながら何かを詠唱し始めたのを見て、マリーが焦る。


「…悪い、全員、ボスとは逆方向の壁際で、全力で壁かバリアを張ってくれ」


「解った」


 全員が張り終わったのを見届け、マリーは少しキレ気味の表情で唱える。


「メテオフォール」


 巨大な燃える岩石が次々に上から降ってくる。ボスの場所へ殆どが命中する中、こちらにも何度か飛び火する。何度かバリアを壊されながら各自必死で貼りなおす。フレンドリファイアで全滅するなど笑えない。


「ギィイイイイ!!!ギァアアア!」


 ボスの詠唱は中断されたようだが、あれだけの隕石を受けてまだ死んでいない。


 だが、もがくボスの動きの中に、腹を見せる瞬間があった。


 瞬歩から腹に手を添えて、発勁を打ち込む。内部の魔石付近が爆破されたように掻き混ぜられ、背の側から血と臓物が噴出す。


 ここでやっと、死ぬ間際の微かな動きしかしなくなった。びくんびくん、と体が跳ねている。


 最後の攻撃、とばかりに溶解液を大量に噴出する。壁際の一行はまだバリアなどを多重で掛けて居た為何の傷も負わずに済んだが、マリーはボスの間近だ。避けようとして失敗し、両足が溶ける。


「「「「「マリー!!!!!!」」」」」


 ようやくボスの息が絶え、ドロップ品が落ちて来るが、誰もそちらに見向きもせずにマリーのもとへ駆け寄る。


「…っ…グレーターヒール…っ」


 大きく光り輝いた、と思ったら、マリーの両足が元に戻っていた。一行は呆然と戻った足を見ている。


「ふう…皆無事か!?」


「一番無事じゃなかった人が何言ってるの!!?」


「今は無事だぞ?それより足甲がなくなってしまったな」


「それよりじゃない!!!反省してマリー!」


「だが、倒すにはあれがベストだった…が、まあ最後に油断した己が悪かった」


「そうだよ残心(ざんしん)不足だよ!マリーの未熟者~!」


「悪かった、いや心配も掛けてしまったようだな。ありがとう、すまなかった」


 そこでようやくドロップ品に気付く。


「――偶々…なのか?」


 其処には脚甲ベルゼ(ゴッズ)とお馴染みの神鋼、身代わりのタリスマンが落ちていた。


 全員一致で脚甲はマリーが使うべきだと主張されたので有り難く受け取った。裸足になってしまったマリーはベルゼを履く。既に何年も履いてきたように足になじむ。鑑定すると、酸や毒の無効化、斬撃・衝撃・殴打の軽減などが付与されている事が解った。一番前線に出るから、とタリスマンも押し付けられ苦笑するマリー。


 良い事ではなかったが、心配してくれる家族がこんなにも居る、と口元を綻ばせる。

 60層のポータルを記録し、リターンで戻る。もうこのまま家に帰って寝たいが、ギルドに報告してスタンピードの本格的な終了だけは伝えねばなるまい。


歩くのも億劫な一行は転移でギルドに移動する。思わずソルナさんが小さく悲鳴を上げたが、疲労困憊の様子である一行に、心配そうに寄ってくる。


「ギルド内への直接転移は本当はダメなんですが…今日は仕方がないと言う事で納得します。それで、どうでしたか?」


「全60層、ラスボスの難易度は相当な高さだ。私以上の者が欲しいところだな。踏破したぞ。カードを確認して欲しい」


 そこで受付嬢が両手を前に出して私を止めようとするようなポーズになる。


「待って待って待って待って下さいいいいい!!今情報が頭の中で混乱してるんで待って下さいこのバケモノ姫があー!」


 ブツブツと呟き始めるのには少し慣れたので、受付嬢が落ち着くのを待つ。


「2層以降はモンスターが密集する危険地帯になっているのにそれを1日で60層!?人数が6人に増えたからってマリーさんが6人になったわけじゃないのにどう言う事?誰も負傷した様子がない…あ、マリーさん光魔法使えるんでしたっけ……待てよそれ聖女?聖女なにやってんの?聖女って王国覇者って意味だったっけ?ていうか、スタンピード直後の未踏破ダンジョンを1日でクリア???聖女どうなってんの。聖女はこの世のバグなの?」


 俯いてブツブツと垂れ流してる状態がやっと治まったようで、バッとこちらを見る。


「ドロップか?生憎中ボスとボスのものしか持って来れなかった。悪いな」


「ち…違うでしょう!未踏破ダンジョンクリアおめでとうございます!!!!しかもスタンピード直後の!!!!更に1日で!!!スタンピード警戒を解除できます!!!」


 大変張りのある大声だ。この場に居る他の冒険者に聞こえるようにしているのだろうか?


 やっと全員のカードを集め、処理をして貰う。


 素材を拾っていたリシュから、受付嬢へ品目が伝えられる。


「で、ドロップは…ゴルゴンとオールドグレーターキメラ………ベルゼブブ!!!??」


 バッと此方を見る受付嬢の視線が、人外を見るような目に見えるのは錯覚だろうか。


「これは…()()()()()()()()()()?でないとクリア不可能ですね…。当分は40層辺りまで行けるPTが出てくるかどうかです」


 「人」に疑問符を付けるんじゃない。私は歴然とちゃんとした人間だ。


「素材買取は明日までお待ちください。解体が大変そうですので…後で裏手の素材置き場まで来て出して頂けると有り難いです。で、貢献なんですが、推薦状を書いたばかりのマリーさん、アディさんは据え置きで、他の皆さんもSに推薦させて貰います。後ほど皆さん一緒に王都のギルドへ起こし下さい!」


「ほいほいと貢献を上げてくれているが、私達の戦闘力はソルデ領の者のSやSSと互角なのだろうか?」


 ソルデ領はダンジョン都市だ。実力のある冒険者は皆ソルデ領に行くと聞く。


「マリーさん。ソルデ領の人たちは皆人間なんです」


 キリッと真面目な顔をした受付嬢がキッパリと言う。


「そんな人外のマリーさん達と比べたら、ソルデ領なんて比べ物にならないと思いますよ?」


「色々と認識を改めて欲しいところだがまあいい。最弱のSSなんて言われるのは御免だったからな」


 リシュは素材置き場にボス素材を置いて、戻ってきた。


「ではまたな」



 今日はもう疲れた。クリーンで汚れを落として寝よう…。


 一行を連れて再度転移。自宅の扉の前まで移動する。


 寝ようとしたところに、リシュが駆け寄ってくる。


「今日はいっぱい倒したでしょう?皆鑑定してから寝て欲しいの」


 元嫁のおねだりだ。聞いてやらない訳がない。


「いいぞ」


 リビングに全員集まった所で鑑定だ。



リクハルト・フォン・サリエル 36歳/男


 レベル79


 HP7800/MP8900

 力7804

 体力7753

 精神力7950

 知力6500

 忍耐8996


 賢人10

 剣術10

 徒手空拳10

 礼儀作法10

 生活魔法10

 火魔法10


 女神の加護

 導師の弟子

 ダンジョン踏破者


※愛し子であるマリーを幸せにしている為、加護がついた。また、導師の弟子の称号で非常にレベルとパラメータが上がりやすくなっている。



ソラルナ・フォン・サリエル 16歳/男


レベル79


 HP7602/MP8864

 力7980

 体力7653

 精神力7200

 知力7000

 忍耐9024


 剣術10

 徒手空拳10

 礼儀作法10

 生活魔法10

 風魔法10

 水魔法10


 女神の加護

 導師の弟子

 ダンジョン踏破者


※愛し子であるマリーを幸せにしている為、加護がついた。また、導師の弟子の称号で非常にレベルとパラメータが上がりやすくなっている。



ラライナ・フォン・サリエル 32歳/女


レベル79


 HP7240/MP8573

 力6970

 体力7123

 精神力8500

 知力8400

 忍耐9700


 短剣術10

 徒手空拳10

 礼儀作法10

 生活魔法10

 氷魔法10


 女神の加護

 導師の弟子

 ダンジョン踏破者


※愛し子であるマリーを幸せにしている為、加護がついた。また、導師の弟子の称号で非常にレベルとパラメータが上がりやすくなっている。



アデライド・フォン・サリエル(盤倉 亜紀)14才/女


 レベル84


 HP9120/MP6710

 力8870

 体力9100

 精神力8000

 知力8200

 忍耐9952


 徒手空拳10

 刀剣術10

 礼儀作法7

 アイテムボックス9

 生活魔法7

 鑑定7

 毒吸収2

 毒探知2

 毒無効1

 闇魔法10

 緑魔法7

 氷魔法4

 土魔法4

 風魔法6

 水魔法4

 火魔法10

 時空魔法8


 女神の加護

 導師の弟子

 ダンジョン踏破者


※愛し子であるマリーを幸せにしている為、加護がついた。また、導師の弟子の称号で非常にレベルとパラメータが上がりやすくなっている。


リシュリエール・フォン・サリエル(盤倉 美鈴)14才/女


レベル79


 HP6920/MP9900

 力6402

 体力7158

 精神力8620

 知力8000

 忍耐9270


 調理10

 礼儀作法9

 癒し手(精神)7

 鑑定10

 アイテムボックス9

 短剣術8

 徒手空拳10

 生活魔法7

 土魔法10

 緑魔法3

 氷魔法3

 風魔法6

 水魔法4

 火魔法2

 時空魔法8


 女神の加護

 導師の弟子

 ダンジョン踏破者


※愛し子であるマリーを幸せにしている為、加護がついた。また、導師の弟子の称号で非常にレベルとパラメータが上がりやすくなっている。



マリエール・フォン・サリエル/聖女(盤倉圭吾)14才/女


 レベル102


 HP122010/MP157420

 力68940

 体力63500

 精神力59000

 知力37560

 忍耐65200


 徒手空拳10

 刀剣術10

 礼儀作法8

 アイテムボックス10

 生活魔法10

 光魔法10

 闇魔法10

 雷魔法10

 土魔法10

 緑魔法10

 氷魔法10

 風魔法10

 水魔法10

 火魔法10

 時空魔法10


 大物狩り(ジャイアントキリング)

 生態クラッシャー

 ドラゴンキラー

 ビーストキラー

 インセクトキラー

 プラントキラー

 アンデッドキラー

 アモルファスキラー

 スタンピード潰し

 導師

 女神の愛し子

 ダンジョン踏破者


 ※今世と前世のパラメータがどちらも反映されている珍しいケース。聖女の称号の所為である。ステータス成長にも影響がある。また女神の愛し子の称号で、大切にされていれば常に幸運を引き寄せる。レベルとパラメータの上昇度は他に類を見ない。



「マリー、レベル、レベルが99より上になってるよ…?あと、前々から思ってたけど私達よりパラメータの数値が…一桁多くない…?」


 震え声で確認するソラルナ。


「そのようだな」


「いや待って、99が成長限界だって教わってるよ私は!聞いたこと無いよ100以上だなんて!!」


 嘘だ、と俯きながら(かぶり)を振るソラルナ。


「では教わった事が間違っていたんじゃないか?」


「「「「「いや絶対違う(わね)」」」」」


「これ、マリーだけなのかな?私達全員なのかな?それとも転生組だけなのかな」


「試してみれば解る事だ。どうせ週末にまたダンジョンへ行きたいのだろう?」


「「「「「勿論 (よ)」」」」」


「じゃあ今日はこれくらいにして、明日は一日修練せず体を休める日にするぞ。やり過ぎは良くないからな」


 其処で今日は解散、となったが、最後に一言マリーは言った。


「学校と仕事はちゃんと行って欲しい」


 がくりと肩を落とすソラルナとリクハルトだった。


マリーは100の大台を超えましたが、他の一行は…?

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!受付嬢は良い胃薬を飲めばいいと思います

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