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92.ブラとコンシーラー

だいたいパンツの話です

 早朝の鍛錬が終わって、神化しかけてる黒曜のスペックを舐めていた事に気付いた。先ず、神聖魔法はすぐに取得出来たし、聖と光も、私と同じだけのスキルを行使できることに気付いたのだ。合成魔法はまた練習して貰う事になるが、見真似だけでこなせそうな勢いだ。流石私の旦那様…私は纏龍技(まといりゅうぎ)使えないのになんかズルい!!!


 まあ、神の階段を上がってる黒曜が今迄使えない事に疑問を持つべきだった。ただ、スキル欄に蘇生があるのは私だけだった。黒曜が階段登りきったら使えるようになるかも知れないが。


 それと今朝、学校へ行こうとしてる途中に、わざとぶつかってきた男が居た。ニヤニヤ笑ういけ好かない面持ちの男だった。ぶつかった後に何か期待してたのか驚愕した顔でこちらを振り返ったが、無視することにした。ぶつかる事で発動するスキルか何かを持っていたのかも知れないが、状態異常は喰らわないし、もしやと思うが私の体を乗っ取るには神性が足りてない。そうそう如何(どう)こう出来なくなっているのだ。馬車に乗り込む寸前に、あわよくばもう一度、と体をぶつけてくるが、イラっとした目で睨んでおいた。3度目があれば叩き切ると言外に示して馬車が出る。男はぽかんとした顔で私達を見送った。

 

 学校の昼休みに、その腹の立つ男の話をすると、黒曜がムッとしていた。いや、コナかけて来た訳じゃないから、あれ多分敵対行為だから。どうどう。


「でもマリーだからこそ大丈夫、って気がするから、公爵家の皆には注意しといた方が良いね」


「それもそうだな。多分黒曜も平気だろうな」


「なんで?」


「今私と一緒に神の試練を受けて半分神になってるからな」


 マルクス君が一瞬ポカンとして、それから少し膝に顔を埋めていた。なんだなんだ。何があった?


「あー、それでな。昨日行ったダンジョンで出たんだが、是非マルクス君にどうかと思って」


 ヴァラファールのダガーとアンドレアルフスのアンクレットだ。


「……うん、ありがとうマリー。大事に使わせて貰うよ」


 なんで泣いてるの!?驚いた顔の私を、他の面子がまあまあ、と言いながらマルクス君から離し、リシュがマルクス君の背中を撫でてあげてた。え?泣かせたの私?私が原因???



 最近体の節々が痛い。成長痛かな。私が学生だった頃は丁度今頃が一番痛い時期だった。だんだん胸のサイズも大きくなって、服を選び辛いし何度も買い換えないとサイズが合わなくなるしで散々だ。アディが「公式150cmなのに…?」と訳の解らない事を呟いている。聞くと、メインキャラクター達にはプロフィールがあって、ヒロインである私は150cmらしい。ちっちゃいわ!!


「ゲーム内容から離れすぎて、各キャラの設定が全て変わっているかも知れない」


 という。ゲーム内容は知らないけど、全員が幸せならそれでいいんじゃないのか?と問うと、嬉しそうに頷いた。


 ああ。黒曜はそのままで良いと思う。其処から背が伸びたら2m超えるじゃないか。ちょっと足の負担的にどうかと思う。今187くらいだったか。その位で十分背が高いと思う。本来出雲人はあまり背が高くないのでこれも異端だそうだ。昔の日本人くらいのサイズが平均なのかと考えると確かに群を抜いて高いだろうな。多分龍の入る器をなんとか確保しようと、体が大きくなったんじゃないだろうかと推測する。


 家に帰って冒険者装備をつけようとすると、服のサイズが合わなくなっていた。

 ええい、胸が邪魔だし押されると痛い!女子はいつもこんなのを我慢してるのか?見かねたアディが私用にブラを練成してくれた。相変わらず押されると痛いけど、上に引っ張り上げられる感じで少し邪魔になりにくくなった。あと走っても痛くない。


 それを見たリシュは自分も欲しいと言ってアディに練成して貰ってた。私が60Fでリシュが60Bらしい。何の暗号?これ。パンツは自分で錬金した方が良いんじゃないかと言われて生前愛用していた黒のボクサーパンツを作ると何故か怒られた。何故だ。女子の下着はこういう感じ!!!とリシュが私にレースなどがついたなんだか頼りない大きさの三角形っぽい下着を渡してきた。


 試しに履いてみる。うわ。頼りない…なんかずり落ちそう…。せめて腰まであるのはないのか訊くと、あるけど色気がないしおばさんっぽくなるよ、と言われた。いい、いいよオバサンでも。毎日履くものなんだからこんな頼りないちっちゃい三角の布は嫌だ。溜息をついたアディは、ドレスによってはちっちゃい方のパンツが必要な事もあるから、それはそれで持っていて、と言って、ブラとウエストまでのレースが一杯ついたパンツを何枚か作ってくれた。ブラも良く見るとレース一杯ついてた。何故こんなにレース付いてるんだろう。


 履いてみる。おお。腰まである。なんか安心感ある。これならいいや。にこにこ笑顔で礼を言う。

 今迄何履いてたの?と聞かれたからボクサーパンツを指差すとアディが頭を抱えた。

 リシュもちょっとヒイてる。え?何そんなにダメだった?


 でもブラは凄く役に立つものだというのが解るぞ。なんたって走っても痛くないからな。

 そういうと、アディは少し思案顔になった。女性用ブラとパンツの店を開いたら皆便利だろうか、と。


 店舗押さえとく?と訊くと暫くうーんと考えてから、じゃあお願いしたいと言ってきた。糸や布なども欲しいというので、リクハルトに糸問屋にアディを紹介して貰った。店舗は女性専用、という事で男子禁制らしい。色々なサイズやデザインのブラやショーツを売る予定で居るとのこと。売り上げがどうなるかは解らない。何せ中身が男だったものだから、そういう店になじみがない。店舗の大体の大きさを決めて、なるべく自分達の店に近いところの空きを探す。


 丁度良い物件があったので抑えておいた。女子の園なので、月に一回のデリケート日に使う物も置きたいと言っていた。うちに常備してあったからスッカリ忘れてた。他の家の子どうしてるんだろう。比較的最近だけれど、うちのは生前に薬局に置いてあったようなやつだ。その前までどうしていたかは解らないが、アディがリシュに拝まれていた。あと、ゴムを利用してシュシュやヘアバンドなんかも作って一緒に置いたらどうかと提案してみる。それなら帽子も置きたい!と言い始めた為、店は最初から空間拡張が必要になった。


 ハッと今日の日課の事を思い出す。冒険者装備で今の体格に合った物よりちょっと大きめサイズを買っておいた。今ぴったりのを買うと、成長痛の具合から見てすぐにダメになってしまうだろう。

 アディはもう【極】を取っているので、それぞれ1つづつを作ると、後はオート指定でアディの分身が作業を始め――うちの分身と錬金釜の取り合いを始めた。慌てて錬金協会まで行き、今回の錬金で使う数を聞いてその分を買う。


 錬金部屋に戻って空間拡張し、アディの下着屋さんスペースを作って釜を置いていく。そしてもう一回アディのオートモードを発動させると分身がわさわさ制作し始めた。多分デリケートデイ用のものはスッゴイ沢山出ると思うよ、と言って置いた。ガードルも用意する心算だったそうな。ガードルって何?って訊くと、3枚くらい渡された。デリケートな日はこのパンツを使って!と怒られた。


 私はこうして下着関係は大体怒られながら一式を手に入れた。玄関で黒曜が待っていてくれてたが、腕に抱えるものを見て慌てて顔を逸らしていた。ごめん、仕舞ってくる。


 ブラは便利だけれど、胸の大きさが目立つシロモノでもあった。マフィートに行ってまた80層フールフールから始めようと跳ぼうとした瞬間。お姉さん胸大きいね、と声を掛けられた。触ろうとはして来なかったのでそのまま跳んだ。


 フールフールはホーリーシールドとダークシールドで雷を防ぎ、黒曜も聖魔法を使えるので一気に戦力が上がった。

さくっとフールフールからデモゴルゴン、アザゼル、と倒していく。火傷を負わなくなるからと言って、突っ込み過ぎると炭化する事が解って、自重する。アイスワールドは切らしていない。


 フールフールの紋章はリクハルトに渡す事にし、カフスは悩んだ挙句にソラルナに渡す事にした。私らは学生で、勉強があるんだから、辞書があっても良いと思う。ただし試験中に使ったのが解ったら取り上げます。その辺は、渡した相手にきっちり説明しておく。


 アザゼルの軽鎧は、家族分揃ったんで、次から手に入れたら第3部隊にでも渡そう。


 さて、冒険者ギルド前へ到着し、今日の内容を話す。黒曜は素材売却に行く。


「そう何回もアザゼルを倒して来られるとなんだか有難みが…いえ、カイブツ姫だものなんでもありだったわ。何か欲しい素材でも集めてるんです?」


「フールフールの紋章とアザゼルのカフスを集めてる」


「ほお…どんな効果なんです?」


「紋章は、一日一度即死ダメージを無かった事にしてくれて、カフスは、百科事典みたいな…ああ、解らないか。この世のありとあらゆる事をある程度、質問すると答えてくれる。個人的な事は解らないみたいだ」


「なっ…そ!そんな!!!!??そんなアイテム誰でも欲しいに決まってるじゃないですか!!??何数稼いでるんです!?うちに卸してくれるんですか!?」


「いや、敵が強いから家族と王族の分だけで手一杯だ。卸す予定はない」


「そんな……!!!!一個で城3個くらい買えますよ!?ギルドオークションに出しましょう!!?ね!!!!」


 いやに食い下がってくるなあ…。確かに、先にフールフールを集めて無かった分、カフスに1~2個の余りが出るだろうと思ってはいるけれど。


「余ったら売ってやろう。カフスだけになると思うが」


「カフスだけでも!!!!!うおおおおおおおやったぁあああああ!今月の査定楽しみ―!!!」


 久々にエキサイトする受付嬢を見るとなんか落ち着く。普通に対応されると他人に見えてしまうようになったようだ。

 私はカードを受付嬢に握らせる。


「はいっ!カード処理させて頂きますとも!!!!」


 いつもより1.5倍くらい早く処理を済ませた受付嬢はいい笑顔で私達を見送る。


「明日もお待ちしてますんでー!!!」


「ああ、また明日な」


 家に帰ると、アディが試行錯誤していた。前世みたいに伸びる生地でショーツやブラを作りたいんだとか。

 ああ、確かに。その方が断然便利だもんな。


 「………ッできたぁああああああ!この布こそが至高の一品!!!!リシュ、マリー、配った下着返して。作り直す」


「…今履いてるのも?」


「うん、クリーン掛けてから頂戴」


 仕舞った下着と今つけているものをアディに渡すと、伸びる素材で出来た物となって返ってきた。

 身につけてみると違いが良く解る。今のものの方が断然楽でフィットする。


「アディ、有難うな。これで楽に過せそうだ」


「っへへ。売れると良いな」


「身につけてもらえれば解るんだけど、それまでがなかなか大変そうね~」


「一応試着室も5つ程は確保する気なんだけど…」


 この娘はまだ空間拡張する気か。最初にもっと広い場所がいいって申告しなさい!!



 あれ。黒曜は試練に呼ばれてるみたいだけど私は呼ばれてないな。ここらで足並み揃えるのかな。

 まあいい。丁度時間が少し余ってるし、コンシーラーとハイライトの作り方でも調べよう。




●コンシーラー


 ホホバオイルに、キャンデリラワックスを熱で溶かして良く混ぜる。

 色剤を少しづつ混ぜ、理想の色になったら容器に入れる。


 太めのリップクリームの入れ物のようなものをRosa/コンシーラーの名前入りで石英から作成し、其処に成形しながらコンシーラーを入れる。蓋を用意して出来上がりだ。後は分身に任せる。


 

●ハイライト

 

 色材以外の粉末材料を計量し、釜に入れて混ぜ合わせる。輝きの素材と色材を加え、釜でよく混ぜる。

 オイルとエタノールを混ぜ合わせ、粉末に加えて調節。

 

 頬紅と同じような入れ物をRosa/ハイライトの名前入りで錬金作成し、山盛りに入れてプレス。後は分身に任せる。



 出来上がった品をアディ・リシュ・ラライナに渡し、この2種を包装する。ケイタイで連絡を取って王城へ跳ぶ。王妃様に使い方を説明していると、丁度欲しい機能だったらしく、凄く喜んで貰えた。良かった。



 家に跳んで帰ると、丁度晩餐前だった。今日のはリシュが作ったらしい。なんと、秋刀魚定食だ。納豆・冷奴・揚げ出し茄子も添えてある。しかし、魚に納豆…いけるかどうか知りたかったんだろうけど、大丈夫だろうか?


 黒曜もアディも納豆好き派みたいで問題なかった。が、他の家族はねばねばと糸を引く豆に引き攣った顔をしている。


「ヨーグルトみたいに、発酵という微生物の働きでねばねばしているんですが、女性の体に特に良いんですよ~」


 それを聞いて、まずはラライナが食べる。


「うっ…」

「母さん大丈夫!?」

「おまえ!?」


「美味いわ!これなら大丈夫よ私!」


 ラライナの勇姿に励まされ、リクハルトとソラルナもえいやと頬張る。


「ん…うむ、これはなかなか…美味いな」

「んっ…う……ううううう」


 涙目でなんとか頬張った分を飲み込んだソラルナはダメだったようだ。食わず嫌いするヤツはあまり好きじゃないが、食ってみてダメだったなら仕方がない。

 魚は箸に挑戦して欲しかったらしい。大根おろしも添えてあーん。うん、懐かしい味がする…美味しい。


 黒曜とアディとリシュと私は問題なく食べる。他の家族もそこそこ箸を使う場面があったので、不器用ながらも骨を取りながら食べている。


「店で出せる量を確保するのは難しいけれど、家族に出す分の魚ならなんとか確保出来なくもないの~。朝市で買ってアイテムボックスに入れてたのよ~」


 結論としては、美味しいから嫌いじゃないけど骨が面倒、という意見が箸慣れしてない勢のもの。

 箸慣れしてる勢は、偶には魚が食べたい、と主張。


「じゃあ次は骨の少ない鮭や鯖、太刀魚なんかを買ってきてみましょう~。秋刀魚はちょっとイジワルでしたね~、うふふ」


 次はヒジキを出してみましょう、と呟いたのを私は聞き逃さなかった。出して良いもの悪いものを徹底的に調べる心算なんだろうか…


 まあ私達日本・出雲組は多分どれでも平気なんだけど。やりすぎは良くないからね、本当にたま~に試すだけに留めておくんだよリシュ!


偶には魚も食べたくなりますよね。私は鰯の丸干しとかも好きです。味噌・みりん漬けも好きです。アンコウの骨はあんまり好きな食感じゃなかった…

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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