七日目「妹様はマルマルに会ってみたい 前編】
ー或斗視点ー
仲直りしてから、数日が経ち、今日は金曜日の夜である。既に紅葉は俺の部屋に入り込み、俺がマルマルとfpsゲーム(シューティングゲーム)をしているのを横で観戦している。
「お兄ちゃんそこに敵が居るよ!」
紅葉はそう言い、前に乗り出しモニターを指差す。紅葉が乗り出したせいでモニターを覆い、画面が見えなくなる。
「紅葉見えない」
「お兄ちゃん撃たれてるよ」
「え?」
紅葉が退けると、何処かに隠れていたのか、敵が現れ此方を撃ってきていた。俺はすぐに遮蔽物に隠れようとするが、体力を削り切られてしまった。
【ドンマイドンマイ】
「お兄ちゃんドンマイケル・ジャクソン、ポゥ!」
「どう言う事だよ」
試合に負けてチャットを見る。マルマルが喋っているのが分かる。
【ねえ、この前の話なんだけどさ】
「この前?」
【リアルで会おうって話】
「あれか、紅葉も行くって言ってたよ」
【本当! じゃあさ明日とかどうかな?】
紅葉と顔を見合わせる。俺はいつでも暇なので行けるのだが、紅葉は行けるのだろうか。
「行く行く! 私、マルマルに会ってみたい!」
「乗り気だな、おじさんかもしれないぞ?」
「可愛いおじさんかもしれないよ?」
「どっちにしろおじさんじゃねえか」
前にもした会話に既視感を覚える。
紅葉も行く気の様だし、俺は行ける事をチャットに書き込み返信する。
【やったー! じゃあ、明日の10時に例の場所で】
「分かった」
【んじゃあ、おやすみ〜】
マルマルはゲームから落ち、ログアウトする。俺もゲームを閉じ、ベットへ寝っ転がる。紅葉は俺が寝っ転がった後に続いて、俺のベットへダイブする。
「お兄ちゃーー」
「一緒に寝ねえぞ」
俺は紅葉の言葉を遮り、一瞬にして返事を返す。こいつが俺のベットに寝っ転がって言う事なんて一つしかない。
「わぁ、恐ろしく早い返答。私じゃあなきゃ見逃しちゃうね」
「誤魔化したって寝させないぞ、明日は予定があるんだから早く寝ろ」
「ちぇ、お兄ちゃんのドケチ、どエッチ」
「だから、ちょくちょく俺を変態みたいに言うな!」
俺の話を聞かずに、紅葉はスタスタと俺の部屋を出て、自分の部屋へと戻って行く。妹様は何がしたいのか本当に分からない。
「ふぅ…それにしても初めてマルマルに会うのか、どんな姿してるんだろうな」
紅葉が言っていたように、本当に可愛いおじさんだったりしてな。俺は少し楽しみな気持ちで部屋の電気を消し、眠りに入った。
ー朝10時ー
俺と紅葉は、マルマルに言われていた通りの場所で待っている。又もや、紅葉が買ってきたセンスの良い服である。
「オフ会とか初めてだね」
「言われてみればそうかもな」
俺はマルマル以外に遊ぶような友達は居ないので、俺も初めてだ。なので、マルマルに会う嬉しさと、初めてと言う緊張でドキドキしている。
【着いたよー!】
LINEで着いたという報告を受ける。俺達は辺りを確認すると、周りには汗をかいたおっさんと大学生のお兄さんと自分達と同学年代位の女子がいた。
「お兄ちゃん、あの人だよね」
そう言い、紅葉はおじさんに指を指す。想像していたよりもザ・おじさんだが、多分あれがマルマルだろう。
「多分」
「話しかけようか?」
「俺が言ってくるから紅葉はここにいて良いよ」
俺はおじさんに近付いて行く。紅葉やお母さん以外と喋るのは久し振りなので、声が詰まる。しかし、勇気を振り絞って俺は言葉を発する。
「あのマルマルですか?」
「え? マルマル?」
おじさんはそう言って、自分のお腹を見る。お腹が綺麗にぽっこりしている。
「(お腹が)マルマルで悪かったな!」
少し大きめな声で怒って、何処かへ行ってしまった。もしかして人違いをしてしまったのだろうか少し申し訳ない事をしてしまった。
そんな事を思っていると、声を掛けられる。その声の主は、先程いた自分達と同年代位の女の子だった。黒髪のツインテールで身長は紅葉よりも少し大きく、特徴的なのがお母さん顔負けの大きな膨らみを持っている。
「あの……僕がマルマルですけど」
「え?」
俺はその発言で思考が止まり、ラインの会話を見る。この美少女がいつも俺とゲームをしているマルマルだと思うと、信じられない。
「お兄ちゃん、誰その女」
紅葉が近付いて来て、マルマルと名乗る少女と相対する。二人は見つめ合うが、紅葉は状況を理解していない。
「えっと…お兄ちゃんとどういう関係ですか?」
「あ、紹介し忘れましたね。どうも、マルマルこと
野坂真流です」
紅葉は目をパチクリさせて目を擦り。これが現実では無いのかも知れないと、首を傾げる。
「この子がマルマル?」
「はい」
男だと思っていたゲーム友達が、会ってみたら美少女だった。
「ベタ過ぎるでしょ!」
紅葉がそう叫んだのだった。俺はこれからどうなってしまうのか想像もつかず、未だに目の前の少女がマルマルだとは思えなかった。
プチ話
マルマルと会う前、家での出来事。
紅葉「今度少女漫画みたいに食パンを咥えて、お兄ちゃんに突撃しようか」
或斗「ベタ過ぎる」