四日目「妹様はおにーちゃんとお出掛けしたい 後編」
ー或斗視点ー
「ふぅ〜食った食った」
紅葉はお腹をさすりながら、元気よさそうに歩いている。先程までマックのおもちゃが可愛いとハッピーセットを頼もうとして俺が「それじゃあ足りないだろ」と他のハンバーガーを頼み。
機嫌が悪かったのだが、お腹いっぱい食べて機嫌が直った様で良かった。
「さて、お兄ちゃん、本命のお店へ行こうか」
「一人で行くんじゃ無かったのか?」
「お店の前で待ってて欲しいの」
「そうか」
すると紅葉は俺の前に出てきて、手を差し伸べる。此方を見つめ、とびきり可愛い笑顔を振り撒く。
周りの人は天使なのに、悪魔級な可愛さの妹様に釘付けである。
「お兄ちゃん行こっか」
そう言い、俺の手を掴み、手を繋ぎ歩き始める。そんな紅葉の手は柔らかく、小さくて暖かかった。
ー歩く事数分ー
紅葉に連れられて、着いたのは小物屋さんだった。色んな物があり、プレゼントをあげたりする時にとても便利で小さい時から行きつけのお店である。
「じゃあ、お兄ちゃんはここでステイ。お座りしてリードに繋がれて待ってるんだよ」
「扱いが犬だろ!」
「忠犬アル公、飼い主の帰りを待つんだぞ」
そう言い、スタスタと素早く、お店の中に入っていく。友達にでもプレゼントを渡すのだろうか、まあ紅葉は昔から友達が大好きだからな。
そう言えば、最近幼馴染の影坂さんとは会っていないな、昔は良く三人でゲームしたな。
でも影坂さんの誕生日は冬じゃなかったか、誰に渡すつもりなのだろうか……。そう思っていると、二人の女性が此方を見ながらひそひそと喋っているのに気がつく。
(何か、変な所があるだろうか)
体を見渡すが、対して変な所は無かった。もしかして紅葉が選んだお洒落な服と俺の顔が釣り合っていなさすぎて馬鹿にされているのだろうか。
それなら此方が気付かないように言って欲しい物だが……。
そう思っていると、二人の女の子が此方へと近づいて来る。困惑で体が動かない。
「あ、あの」
「なんですか?」
久しぶりの人との会話で少し高い声になるが、不自然では無い。何の用だろうか、もしかしたら、道が分からず、困っていただけなのかもしれない。ここは丁寧に会話をして上手く乗り切ろう。
「お兄さん、お茶しませんか?」
「え?」
あまりの衝撃に心の声がつい出てしまった。もしかして、これって逆ナンと言う奴であろうか。その衝撃に俺は硬直してしまった。
ー紅葉視点ー
買いたい物を箱に入れて、自分のバックへとしまい、お店を出る。お兄ちゃんの所に戻ってやるか。
「さて、お兄ちゃんはどこかな?」
お店の前の周りを見渡す、するとお兄ちゃんが目に入る。その瞬間、衝撃を受ける。お兄ちゃんの周りを茶髪の女の子とか弱そうな女の子が囲っていた。
素早く、ショッピングモールによくある観葉植物の後ろに隠れる。
「兄者よ、デート中に浮気とは良いご身分だな」
そして、耳を澄ましてお兄ちゃん達の会話に耳を立てる。
「あの、お兄さんかっこいいなって思って、お茶でもどうかなって」
「えっと…俺の事?」
「あ、はい」
自分に指を指して、自分に言ってる事を確認する。ナンパされたのが信じられな過ぎて、自分では無いのかもしれないと現実逃避している。
(これってまさか逆ナン!)
兄者にも、遂にモテ期が…。お兄ちゃんは普通に整えたらイケメンだからなぁ。やっとお兄ちゃんの良さを分かる時代が来たと喜びつつも少し複雑な気持ちになる。
「その、自分連れが…」
お兄ちゃんが頑張って、ナンパに対抗する様にそう言う。良いぞ兄者、そのまま逃げ切るんだ。
「彼女ですか?」
「妹です」
ナンパした子の友達がそう言うと、お兄ちゃんは素直に答えてしまう。クッ、あの友達の子、手慣れてやがる、まずい恋愛経験ゼロの兄じゃ勝てない。
「彼女はいるんですか?」
「いないです」
「じゃあ妹さんには帰ってもらって、この子とお茶しませんか?」
お兄ちゃんこのままだと、押し切られちゃうよ。うぅ…あの中に入って行きたいけど、あの女の子の恋愛の邪魔はしたくない。
お兄ちゃんは取られたく無いけど、最終的に決めるのはお兄ちゃんだから。
「ごめんなさい」
お兄ちゃんは頭を下げて、申し訳なさそうに謝る。
「妹は俺にとって大切な存在なんです。妹を置いて行けません」
会話だけ聞くと、ただのシスコンのキモお兄ちゃんだが、その顔は真剣で心の底からそう思っている事が伝わる。
「お兄ちゃん…」
仕方ない、私もその気持ちに応えてあげなきゃね。私は立ち上がり、お兄ちゃんへと近付く。
「お兄ちゃん、お待たせ。それじゃあ行こっか」
「ちょっと待って下さい!」
女の子は私たちが行くのを止めようとするが、私はお兄ちゃんの手を取り、走り出す。
「紅葉!?」
お兄ちゃんも驚きで戸惑っているが、付いてきてくれる。女の人には申し訳ないけれど、この時私は楽しいなっと思ってしまった。
ーーー
女の人達を撒いて、私達は止まる。お兄ちゃんは久しぶりの運動で少し息切れしてる。
「さぁて、お兄ちゃん買いたい物を買えたので帰ろうか」
私は何事も無かったように、帰るように促すが、お兄ちゃんがそれを止める。
「紅葉…そのありがとう」
「何のこと? 私はただ迷子の子犬を拾っただけだよ?」
「……そうか」
お兄ちゃんはそれだけ言うと、もうナンパの話をする事は無かった。だが、此方を優しい顔で見てくれている、そんなお兄ちゃんもかっこいい。
「じゃあ、帰ろっか」
「そうだな」
二人で手を繋ぎ、歩き出す。
「結局何を買ったんだ?」
「うーん…内緒」
指を立てて口元に当てる。
「なんだよ、それ。ハハハ」
お兄ちゃんは久しぶりに笑った、それが嬉しくて私も一緒に笑った。日は落ちかけて、綺麗な色を作っていた。私達はその中を歩いて帰って行った。
プチ話
或斗「ちょっと俺も買い物して良いか?」
そう言い、工具屋さんに入り色々と何かを買ってきた。
紅葉「何に使うの?」
或斗「次回のお楽しみ」
紅葉「???」




