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覚悟


「隣国の」

「第二王子」


エイリアスがいなくなった日、アランが訪れたタイミングで母から招集があった。

部屋に集まるとエイリアスの出自が明かされた。アランと姉は絶句していた。

母は神妙な顔つきで頷いた。


「まあ、エイミーは言わなくても分かっていたみたいですけど」


母からチラリと視線を向けられる。

その言葉に私は意味深にふ、と笑った。


「普通に没落貴族だと思っていたわ」


部屋が静まり返る。居たたまれない。

母は私を買いかぶりすぎだ。


「それなら君は彼とどうやって知り合ったんだ?」


アランに問われて私は少し考えこむ。

それを話すには準備が必要だ。

私は一旦席を外し、自室に向かい机の引き出しから小袋を取り出し再び彼らのいる部屋へと戻ってきた。

早速小袋を開け、中から出てきた三種類の宝石をテーブルに並べ、空になった袋も置いた。


「アラン様はどれが一番価値のあるものだと思いますか?」


そう問題を出すと彼はテーブルに置いてある宝石を見比べる。

そして真ん中の宝石を手にした。


「最近はダイヤよりブルーサファイアの方が価値が上がっているからこれかな?」

「正解はこの袋なんです」


実はこの袋は一昔前に滅びてしまった小国のもの。

歴史書にはあまり記されてはいないその国の紋章がこの袋には薄っすら刺繍されているのだ。

とはいえ、この袋は薄汚れており一見そんなに高そうなものには見えないだろう。


「そ、そんな引っ掛けみたいな問題……」

「だけどエイリアスはすぐに分かったのよ。ただ通りすがっただけなのに宝石を気に留めることなく袋を選んだの。それで只者じゃないなって。すぐスカウトしたわ」


それが彼との出会いだった。

まあ彼を落とすまでは色々あったわけだけれど。

それは今は話す必要はない。

懐かしい記憶が蘇り口元が緩んだ。

経緯を話し終えると母は口を開く。


「エイミーが彼を連れてきたとき、まさかと思って調べてみたの。そうしたらそれが疑惑に変わって……思い切って本人に確認したわ。そしたら――」

「本人だった、と」

「ええ。流石にこのまま黙っているわけにもいかなかったからエイリアスに許可を取って隣国に手紙を送ったわ。彼の手紙も添えて。そうしたら数日経って第一王子から連絡がきたわ。

“ご迷惑をおかけしますが弟をよろしく頼みます”と」

「ここに残ることを許可したんですか?」

「エイリアスがどんな内容の手紙を添えたのかは分からなかったのだけれど恐らくそれが関係していると思うわ」


十中八九そのせいだろう。

恐らく彼の性格は王子であろうと変わりなかったのだろう。


「それから私は第一王子に定期的にエイリアスの様子を報告していたの。そして昨日、彼の立場から容認するには大きい問題が起きた」


姉に視線が集まる。

ことの大きさを感じているのか姉は沈んだ顔をしていた。


「そのことを私は報告しなければならなかった。だけど手紙を出す前にエイリアスの方がいなくなってしまったわ。クレア、ごめんなさいね。貴女に辛い思いをさせてしまって」

「いいえ。お母さまは悪くありません。私が彼に恋をしてしまったのがいけないんです」

「いけないことはないだろう?それにエイリアスだって君のことが好きだから告白したんだ」


両手で胸を抑え、俯いている姉にアランは優しく励ます。

それでも姉の表情は曇ったままだった。

部屋の空気が重くなる中、私は口を開く。


「私はエイリアスは必ず帰ってくるって信じているわ」


彼と約束を交わしたあのとき、絡めた小指は力強く握られた。

あの感じた力が彼の想いの強さだ。

そんな子分を信じなくて何が親分だ。


「姉さまは、私とエイリアスを信じてくれる?」


姉の覚悟を私は試すように訊いた。

いつもはこんなことは言わない。

けれどエイリアスが覚悟を決めていることを知っているから、私は姉に聞かなければならなかった。

私は彼との約束を信じているから姉はどうするのか、と。

姉は迷っているのか視線を伏せていたが、答えが出たのか顔をあげた。


「私は何年でも、何十年でも待つわ。二人を信じる」


揺るぎない姉の覚悟。

私はその覚悟が堪らなく嬉しかった。

だから――信じてるわよ、エイリアス。





あと5話くらいで一応完結になるかも?

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