他人がなんの天才か分かるメガネ
突然だが俺はメガネを拾った。
これをかけると、他人がなんの才能を持っているか分かる。
と言うことでさっそくメガネをかけて通行人を見てみる。
すると頭の上にその人が持つ才能が表示された。
『電線を感電しないで渡れる天才』
今のはどこにでもいそうな中年サラリーマンの才能。
意味不明すぎる。
役に立たなそうなゴミだと判明したが、もう少し試してみようと思いメガネを付けたまま学校へ向かう。
「よぉ、元気?」
歩いていると後ろから肩を叩かれた。
学校でも一番モテると噂されているイケメン君だ。
くりっとした大きな瞳が特徴の彼は、無自覚に女子を落とす達人として知られている。
この前も壁ドンでクラスいちの美少女に迫っていた。
『彼の瞳に私の姿が映るくらい、ぐっと近づいたの!
口元に食べかけのポテチが付いてるよ、だって!
きゃああああああ!』
なんて嬉しそうに話していた。
クソが。
そんな彼の才能は――
『陰嚢のしわを数える天才』
ぶふっ!
危うく噴き出すところだった。
「なんだよ? なにがおかしいんだ?」
「いっ……いや……なんでも……」
どうやらこのメガネは笑いを取るためのジョークアイテムらしい。
しかしこんなイケメンがしょうもない才能を――
「火事だあああああああああ!」
どこからか声が聞こえる。
「今の声どこから?」
「近いぞ!」
イケメン君と共に声のした方へ向かうと、民家から煙が立ち上っているのが見えた。
「助けてええええええええ!」
ベランダに子供が取り残されている!
「たっ……助けないと!」
「でもどうやって⁉」
「あっ! アレを見ろ!」
イケメン君が指さした方を見ると、ものすごい勢いで電線にぶら下がりながら移動しているサラリーマンがいた。
あれは……さっきの人⁈
サラリーマンは軽快な動きでベランダまで行くと、子供を抱えながら飛び降りて見事着地。
救出に成功したのだ。
「うわああああああああん!」
「大丈夫だ、もう安心だよ」
泣き叫ぶ子供にやさしく声をかけるサラリーマン。
まさしく彼はヒーローだった。
「良かったな、助かったみたいだ」
ホッと胸をなでおろすイケメン君だが、俺はとても複雑な気持ちなった。
だってさぁ……このメガネ、本物だったんだぜ?
「ん? なんだよ?」
爽やかな笑顔でほほ笑むイケメン。
俺はこのメガネをかけて鏡だけは見ないようにしようと誓った。
「あっ、お前口元に何かついてるぞ」
「……え?」
イケメンが急に顔を近づけて来た。
彼の大きな瞳に俺の顔が――――あっ。
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