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ラストピース・コレクタ  作者: 去人
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第三話 「国家機密の教科書」

第三話「国家機密の教科書」


「おじゃまします」

 案内されたアジトというところは、想像していた秘密基地のような場所ではなく都心から少し離れた町の一角にあった。入ってみると、広くはあったが中は普通の住宅のような構造だった。イメージとしてはシェアハウスの行われている家に似ていた。

「ただいまー!」

 坂井さんがでかい声で入室する。すると、ソファに寝ていた男性が目を覚ました。

「ん? ああ。帰ってきたか。おつかれ。ふぁ。ねみぃな」

 三十代後半くらいに見えるその男性は、ぼさぼさの頭を掻きながらそう言った。

「桜木君を無事回収できました。今から彼に諸事情の説明を行います。」

 と里美さんはその男に言った。

「おー。報告ご苦労。おつかれ。もうちょっと寝ていいか?」

 男はあくびをしつつそう言う。

「ええで。説明、多分もうちょっとかかるしな」

 坂井さんの返答を聞くや否や、男は一秒以内に再度就寝した。

「あの人も能力者なんですか?」

 僕は小声で聞く。

「せや。あの人がうちの部隊の隊長な。くっそ強いで」

 あの人がリーダーなのか? 威厳も風格も何もなくただ惰眠を貪るその男を見て僕は少し驚いた。

「ではそろそろ全てをお話ししましょうか。そこに座ってください」

 里美さんはホワイトボートを物置から引っ張り出して、その前に椅子を置いた。

「このホワイトボードな、普段作戦会議とかに使うねん。アツいやろ?」

 坂井さんが嬉しそうにボードをばしばしと叩く。

「さて、まずは能力の仕組みについて科学的な説明をすませましょうか」

 僕の前にホワイトボードを設置し終えると、坂井さんをフル無視して里美さんは説明に入った。

「まず、文明の発達した現在においても、脳の仕組みや構造については科学で解明できていない部分がほとんどを占めている、という話はご存知ですか?」

「…はい。聞いたことくらいはあります」

「そして、人間は日常生活において脳の10%しか活用していないというのも有名な話です。まあこの話は令和初期には否定されていて、実際には脳のいろいろなところを人間は満遍なく使っていると言われています。ですが、脳の全ての部分を一斉に使うということはないとされています」

「はぁ…そうなんですね」

「この事実から我々の能力の正体とはなんなのかを簡潔に説明すると、『人間の脳の大部分を一斉に使うことで起きる現象』になります」

 僕はなんとか話について行こうと必死で食らいついていたが、坂井さんはすでにスマホで全く面白くなさそうなゲームをやり始めていた。

「坂井さんも聞いていてくださいよ。貴方はちゃんと仕組み理解してないんですから」

「いやちょっとおれは、この巨人の耳掃除をするゲームに忙しい」

 全く面白くなさそうだ。そんな坂井さんを傍目に、僕は里美さんに質問をしてみる。

「なんで、脳が大部分稼働したくらいで現実に影響を与えられるんですか? さっきの外国人は銃弾の軌道を操ったり、鈍器を生成したりしていましたよ」

「そうですね…では、1998年あたりから研究されていた、GCPという分野をご存知ですか?日本では超心理学と呼ばれています」

「いえ、聞いたこともないです…」

「簡単に言うと人の意識が物質に影響を及ぼす可能性について示唆する学問分野で、これだけ聞くと眉唾なオカルトに聞こえますが実際に明治大学やブリンストン大学など名のある研究機関が参加していました」

 なんだか怪しいセミナーに来てしまったように気分になったが、能力自体は僕もはっきりみたのでひとまず話を聞く。

「わかりやすい例で言うと、乱数発生機の実験があります」

 わかりやすい例のはずなのにわからない単語が一個増えた。すると僕の理解に苦しんでいる顔を見てか里美さんは付け足してくれた。

「ああ、乱数発生機っていうのは本当に字のままランダムに数字を表示し続けるコンピュータのことです。サイコロを自動で振り続ける機械みたいなものだと思ってください」

「なるほど」

「ちょっと、坂井さんも聞いていてくださいよ」

 里美さんの再度の注意にも応じず坂井さんは寝っ転がってスマホをいじっている。

「待ってな。今フランクフルト同士で殴り合うゲームに忙しいから」

 と坂井さん。全く面白くなさそうだ。

「えー。話を戻しますと、この研究で、人の意識が集中すると周囲の乱数発生機の表示する乱数に偏りが出るということがわかったんです。もちろん人間一人一人の微弱な意識では影響がないんですが、多くの人間の強い意識が集中するとそういった現象が見られるそうなんです」

「多くの人間の強い意識…例えばどんなのですか?」

「実験では、オバマ大統領のスピーチに大勢の人々が集まって称賛の歓声を浴びせていた際や、9.11のテロの際などに乱数発生機たちに影響があったそうです」

 オバマ大統領に9.11のテロ。世界史で習ったような気もするな。たしかどっちも、今から120年かそれくらい前の出来事だったはずだ。

「このように、意識が現実に影響を与えているかもしれない可能性は古くから示されていましたが、これらの多くは非科学的とみなされたり統計の取り方に問題があるのではないかと指摘されたりして、あまり真剣に捉えられませんでした」

「そうですよね…僕もいまだにあんまり信じられませんし」

「ですがドイツ出身の医学者、クノーブライヒ氏が2070年代に添臓という臓器の存在を発見し、事態は大きく動きました」

 添臓? そんな言葉は今まで一度も聞いたことがないな。僕が首を傾げるのを見て里美さんは続ける。

「もちろん桜木さんが知らなくとも無理はありません。ここからの内容は世間には公表されていない研究の結果ですので」

 今までのは公表されていたのか。あとでググってみようと思った。

「この添臓という臓器は非常に小さくて見つけづらく、しかも200万人に1人しか持っていないという非常に珍しいものです。肝臓の側面に位置しており肝臓の機能を手助けしているとも言われていますが詳しくはわかっていません」

「その臓器が今までの話とどう関係があるんですか?」

「添臓は、その内部がビオミシンという酵素で満たされると脳を異常に活性化させるという性質を持っていたんです。脳の普段使わない部分まで一斉に稼働することができるほどに」

 だんだん最初の話と繋がってきた。

「そして活性化した脳は、単体でも強い意識を放つことができ現実の物質に影響を与えることができるようになります。これが能力の正体です」

「つまり、能力を持っている人っていうのは200万人に1人の添臓保有者で、かつそれがビオミシンに満たされている人ってことですか」

 僕はなんとか理解できた部分だけでもまとめて相槌を打った。

「飲み込みが早くて助かります。脳の活性化の様相は、生まれ持った添臓の形状によって異なり、それにより個々に多種多様な能力が発現するようです」

「脳が活性化するっていうのは…あくまで能力が使えるようになるってだけで頭が良くなるとかっていうことではないんですよね?」

「ええ。それは坂井さんを見ていただければわかるかと思います」

 里美さんは皮肉を言って床に転がっている坂井さんを指差した。

「なにーや! おれは今町中をデイリーヤマザキで埋め尽くすゲームに忙しいねん!」

 と坂井さん。それはちょっと面白そうだな。

「あの、里美さん。ビオミシンっていうのは何をどうすると溜まるんですか?」

 僕が質問を投げかける。

「普通に生活していては十年かかっても添臓のうちの10%ほどしか溜まらないので、我々能力者は手術でビオミシンを添臓に直接注入していますね。少し経つと減っていくので、数ヶ月ごとに能力が使えるほどの量まで注入し直したりしています」

 そこまで答えると、里美さんは何かに気づいたようにはっと口を押さえた。

「どうかしましたか?」

 と僕。

「いえ、何も」

 里美さんは表情を変えずにそう答えた。

「えっと…僕はその手術をした覚えはないんですが、どうして能力が発現したんですか?」

 僕がそう質問すると、坂井さんはスマホから視線を外し里美さんの方を見た。目配せをした、と言った方が近かったかもしれない。里美さんは少しだけ坂井さんを見ると、すぐに視線を僕の方に直して答えた。

「それが我々もわかっていないんです。ビオミシンは加熱処理した鶏肉に多く含まれているという情報はあるんですが…」

 それを聞き、僕には一つ思い当たることがあった。

「あ、唐揚げ…。あの、僕コンビニの唐揚げが大好きでほとんど毎日食べてたんですけど、今日唐揚げを食べた時、なにかが…染み込んでいく? ような感覚がしたんですよね。あの時にビオミシンが満タンになったんじゃないかなーと…」

「唐揚げですか。加熱処理した鶏肉にもビオミシンは微量しか含まれていないので、添臓を満たすほどとは考えにくいのですが…。本当に何年間も毎日食べ続けたのであればあるいは…」

 里美さんは言葉を選ぶように話しながら、考えこんだ。

「まあ科学の説明はこんなもんでええやろ。結局のところまだわからんとこの方が多いしな」

 坂井さんは里美さんの声を遮って、むくりと起き上がった。

「そろそろおれらの正体についてと、世界はほんまは今どんな情勢なんかを話すわ。説明は俺にまかしとけ」

 坂井さんは得意げにそう言って、続けた。

「第三次世界大戦の歴史がめっちゃ関わってくんねんけど、この辺は授業とかで習った?」

「なんとなくはわかってるんですが…その辺の範囲は次の授業までに予習してきなさいって言われたので、一回ちゃんと教えてもらってもいいですか?」

「なんかお前、やばい状況に巻き込まれてるくせに局所的にのんきよな」

「そう…ですかね?」

「あーまあええわ。ほんなら一から説明するわ」

 坂井さんは咳払いをして、説明を始めた。

「まず、2050年代になって中東とか東欧あたりでクーデターとか政権交代とかが相次いでん」

 中東というと、昔イランとかシリアという国があったあたりだろうか。

「そういうゴタゴタに先進国は首突っ込んで、そこを舞台にアメリカとロシアとの対立は加速していってん。ほんでアメリカのシリア封鎖とかロシアのシリア蜂起支援とか色々あって、2059年に第三次世界大戦が勃発したっていうのが、簡単な大筋や」

 僕の聞きたかった、来週の授業で大事な範囲は「色々あって」で済まされてしまった。

「大戦自体は三ヶ月くらいで終わってんけど、戦争ってやっぱめっちゃコストかかるし、そのあと国際情勢はごたつきまくったから、今でも技術とか文明の発展は令和初期くらいの状態でとまったままやねんな。まあこれも有名な話やけど」

 それは僕も聞いたことがある。ここ七十年は全然技術が進歩していないらしい。

「ほんで、第三次世界大戦後すぐのカリフォルニア州の独立を機に世界中で州とか都市の独立が相次いで、2060年は独立の年って言われてんねん。これは多分めっちゃ入試とかにも出る用語やで」

 確かにすごいテストに出そうだ。アラブの春とかみたいに。

「それを経て世界は一時500ヵ国くらいの独立国家が乱立するゴチャゴチャ状態になったわけよ」

「その辺りは少し戦後史で習いましたよ。そこから2070年代に入って徐々に各国の首相同士の話し合いが行われて国同士が併合されて行って、100ヵ国くらいがバランスを保ってる今みたいな状態になったって」

 僕が少しだけ覚えていた知識を話すと、坂井さんは嬉しそうに大きい声を出す。

「ダウト! それ嘘教えられてんねん!」

 困惑する僕を置いて坂井さんは続ける。

「こっからは世間には公表されてない話で、授業でも嘘を教えられてるとこやから、おれの話こころして聞いてな」

「はぁ…」

「併合されて行って今くらい国の数が少なくなった理由はな、首相同士の話し合いなんて言う甘っちょろいもんでは断じてないねん」

「ええ、じゃあどうやって併合していったんですか」

「戦争や。住民らにもばれへんように秘密裏に戦争して、それで勝った方が負けたほうを併合しとっただけや」

「そんな戦争なんて、ドンパチやっていたら、どれだけこっそりやったって住民が気付くでしょう」

「普通の戦争やったらそうなるわな。けど今の戦争は極少人数の兵で、最小限の動きで敵の軍事機能を麻痺させて敵国を降伏させるっていうのが定石や」

「動いても住民にばれないくらい少人数の兵で、敵国の軍を撃破なんてできないんじゃ…」

「能力者兵ならそれが可能や」

 だんだん本題につながってき始めた。

「いったんまた歴史の話に戻すわ。当時ドイツでもいろいろ都市が独立して国家が乱立しとったんやけど、そのうちの一つのアーヘンっていう都市から独立したアーヘン共和国が2072年動きをみせてん」

「動き?」

「突然謎の戦闘力を持つ少人数の兵を隣国に送り込んで、軍事基地とかを制圧しだしてん。もちろん秘密裏にな。小規模活動すぎて十分な証拠も残らへんレベルで。襲われた国は軍事基地に援軍を送ったけど、それでもかなわへんくらい送られてきた少人数兵は強くて、隣国はお手上げ状態になってんな」

「それが初の能力者兵の使用だった…ってことですか?」

「せや。初めて添臓の存在とその性質を発見した医学者はアーヘン共和国の研究機関に在籍しとったから、アーヘン共和国は能力者についての研究を丸々軍事利用して独り占めすることができてんよ。それを使って隣国の軍事機能を手も足も出んくらいに制圧していって、自分に有利な条件でどんどん併合して行ったわけや」

 授業で聞いていた内容とはまるで違う歴史説明が繰り広げられて僕は困惑する。

「2070年代にアーヘン共和国が急に膨張したのはそういう事だったんですね…。交渉のうまい敏腕外交官がいたからだって習ってました」

「最初は技術も能力も独占してたアーヘンの一人勝ちやったんやけど、だんだん先進国らもスパイとかをアーヘンに送って能力の仕組みとか添臓とかについての情報を得始めて、軍事に利用するようになってん。ほんでいろんな国がアーヘンと同じような手口で周囲の国に能力者送り込んでどんどん拡大、それ以降は世界中が水面下で群雄割拠の戦国時代みたいになったんや」

「でも、軍事基地が占領されたりなんかしたら、襲われた側の国は被害を国際社会に訴えて明るみに出したりしそうじゃないですか? なぜ今でも一般人には全くばれていないんです?」

 と僕の質問。海外の記者会見で総理に詰め寄る記者みたいな聞き方だなと自分で思った。

「まあこの能力の戦争が始まったんは第三次大戦後すぐで情報が錯綜してたから、国際機関も機能してなかったしな。それにもう今になると、能力者使用はどこの国もやってる行為になったから、どっかが声を上げたら世界中の能力軍事が明るみに出て大混乱になるしどこも声上げられへんねん」

「なるほど…いろんな事情が絡み合ってるんですね」

「ほんで今は戦国時代も終わって統一が進んで、世界は列強五か国によってほぼ全域が支配されてるわけや」

「えっ。世界地図には100ヵ国ぐらいまだ存在する風に書いてありますよ」

「あんなんも嘘や。表ではそういうふうになってるけど、裏ではどこの国も能力戦の結果列強に実質属国化されとんねん」

 勉強していた戦後史が嘘だと聞かされ、さらに常識である世界地図も嘘となるとさすがに僕も混乱してしまう。そんな僕に里美さんはノートパソコンの画面を見せつけた。

「これが現在の世界の、本当の勢力図です」

 そこには僕の知っているのとは全く違う区分で塗り分けられた世界地図が表示されていた。

「うわあ! ヨーロッパ全土がほとんどイギリスじゃないですか」

 ヨーロッパには大きくイギリスの国旗柄が表示されていた。アジアにはもうロシアと中国とインドしかない。ヨーロッパの少しとアフリカのほぼ全土がドイツになっており、南北アメリカ大陸はほぼアメリカ連邦の領域となっていた。

「でも、あれ? そういえばアーヘン共和国はどうなったんですか?」

 先ほどの説明であれほど重要だったアーヘン共和国の姿はなかった。

「いやお前、それは今の普通の世界地図にも載ってへんやろが。授業でもそれは習うはずやし。アーヘン共和国は内部のゴタゴタで十一年前に政権交代して名前変わったやろ。ドイツ連邦に」

 そうだった。ソ連が崩壊してロシアになったのと同じように、アーヘン共和国は崩壊してドイツ連邦になったのだということは、戦後史の範囲で習っていたんだった。今日聞いた情報が多すぎて常識の方をド忘れしていた。確か内部でのクーデターかなにかが原因だったはずだ。

「そうや、ほんで俺らの正体教えとかなあかんかったな。話の流れでわかってきたとは思うけど、俺らは日本を防衛してる能力者兵や。政府から直々の公認を受けて、自衛隊とは別の極秘部隊として活動してんねん。列強支配の時代になって、戦国時代よりは情勢は安定してきたけどまだ色んな国からの侵攻はあるからな。日本は列強みたいに勢力拡大はせず、能力者兵をあげて防衛に徹してんねん」

 そういえば学校の社会の授業でも、憲法に則り日本の戦争に関する基本姿勢は専守防衛なのだと習ったことがある。こんな裏側の世界でもそれが適応されているとは。

「日本の能力者兵は大体全部で40人くらいおって、仙台、横浜、名古屋、大阪、福岡の支部にそれぞれ配属されてる。俺らは横浜支部の隊やな。ほんで東京に本部があるわ」

 坂井さんがそう説明し終わると、里美さんが喋り始めた。

「説明はこれで以上ですが、何か質問はありますか?」

「質問、ですか…」

 正直一気に情報を聞きすぎて何から質問すればいいのかわからないし、なぜ坂井さんは大阪支部じゃないのかなとも思ったが、僕は一番僕にとって重要そうな質問をした。

「えっと…結局僕はなぜ列強国の兵たちに追われてて、どうやったら襲撃は終わるんですかね?」

 その質問に、里美さんも坂井さんも少し難しい顔をして黙った。そして里美さんが慎重に話し始める。

「どうやったら終わるかというのは難しいですが…。追われている理由は、ひとえに初心者狩りと言えるでしょうね」

「初心者狩り?」

「添臓がビオミシンで満たされた際、ビオミシン反応という電波異常が周囲100km圏内で確認されます。今日の午前に、桜木さんの添臓が何らかのきっかけでビオミシンに満たされたため列強はビオミシン反応を観測したのでしょう」

「つまり…ほかの国は、能力が発現したばかりの人間が日本にいることをかぎつけて、初心者のうちに殺そうとしてるってことですか?」

「そうですね。抹殺か捕獲か、詳しい目的はわかりませんがそういうことになります。ですが今日から数日間、速ければ一日の間、我々とともに他国の刺客を撃退していけば、新しい能力者桜木隼人は日本の能力者兵の一員であると示すことができます。そうすれば桜木さんに手を出すことは日本へ戦争を仕掛けるのと同義になるので簡単には襲えなくなります」

 ようやく、説明の中に襲撃が終わるめどが見えてきたので少し安心する。

「つまり数日の辛抱という事ですか」

「うまくいけば、ですが」

 そこまで話し終えると、坂井さんがぱちぱちと手をたたいた。

「はい、これでくそ長い説明おしまい! ちょっとごちゃごちゃしゃべりすぎたわ、ごめんな。とりあえずこの後どうするか考えなあかん。隊長起こして指示あおごっか」

 一旦、僕が聞かなければいけないことはすべて聞き終わったらしい。そこまで聞いて僕はどうしても言いたいことがあった。

「ん? どうしてん桜木。なんか言いたげやな」

「ああ…いえ、その…」

 本当にこれだけはどうしても言わなければ気が済まなかった。

「いや、ホワイトボード使わへんのかい!」

 坂井さんの大阪弁がうつってしまうほどに強いツッコミを、僕は吠えてしまった。


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