人生設計なんてないの!
夜眠る前、指輪を窓から庭に投げたが、朝起きると左手の人差し指に戻っている。
「くそぅ、なんてことなの……」
……さあ、鍛錬するのです。
「くそぅ、鍛錬ばかめ、めげることを知らないの」
お母様は小物類作りの職人である。お母様が見て、普通の鉄の指輪であれば、常人から見て恐らく本当に、普通の鉄の指輪に見えるのだろうと判断した。
不本意ながら庭で木の棒を振るって鍛錬の真似ごとをする。さっきまで筋トレであった。お母様は「体を鍛えるのは良いことね」と静観の構え。
剣を振る。木の棒であるが。
違和感。何かきもちわるい。
もう一度振る。
なんとなく、修正点が分かる。
もう一度振る。
「くっ、なんてことなの、ちょっと楽しい」
おそらくこの指輪、武術系の職を目指す者には垂涎の的である。
「これは、かなり、いけるところまでいけてしまうのでは……」
……手取り足取り以上の訓練指導効率なのです。しかし、いけるところ以上まで到達する喜びはとても大きい。一緒に歩みましょう。果てなき騎士道の道を!
「最適な人生設計の道が見えてしまう……」
軍治安系の就職は実技と座学の試験を通り国立学校を卒業すれば、各人の適性により配属される。普通に勤めれば食いっぱぐれのないルートである。
座学の教本は父と兄のものがある。
……組み手の相手や、実戦的訓練もしたいですね。