憧れてなんかないの!
「おかあさま、この指輪着けてみるの。そして指輪のささやきを聞くの」
オリビアはお母様に指輪を渡した。
「あら、オリビア。指輪どうしたの?」
「砂浜で拾ったの」
「へんなものを拾ってはいけませんよ」
「私も今とっても後悔してるの! とにかく着けてみて!」
お母様は指輪を着ける。
……。
「綺麗に洗ったのですね。がんばりましたね」
お母様はオリビアに指輪を返す。
オリビアは口を開けたまま、目を見開いて受け取る。
「どういうことなの……」
……オリビアには騎士の素質があるのです。万人に私の声が聞こえる訳ではない。言うなればこの私〈騎士の指輪ダイア〉に選ばれたのです。
「おかあさま、私、不本意ながら騎士の指輪に選ばれてしまいました」
「オリビアもお父様やお兄様に憧れがあったのね。お父様は職業軍人でお兄様は街の警邏隊だけど、騎士ではないのよ。この国で騎士を名乗れるのは国に大きな功績のある人だけなの。国から贈られる大切な称号なの」
「この指輪が言うの。鉄の指輪なのに名はダイアと言うふてぇやつなの」
「あら、名前まであるのね」
「しかも『鍛錬は九割を解決する』とか言うの。『何か』で九割解決できるのはその道を極めた達人ぐらいなの」
「お兄様もオリビアぐらいのころに騎士ごっこしたものよ」
「くそぅ、にいさま、なんてことなの」