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国王陛下の小人さん ~前編~

少々問題問題発生いたしましたので、しばし休筆いたします。

詳しくは活動報告を御覧ください。


運営からの指示待ちです。制限が解除出来るようになったら、投稿再開いたします。


取り敢えず、書いたところまで投稿いたします。


「まさか.....」


「事実です」


 上品に設えられた部屋の中でソファーに座るロメール王弟殿下。その背後に立つのはハロルド騎士団長。

 大理石のテーブルを挟み、差し向かいに座っているのは国王陛下。濃い金髪に、黄土色に近い金の瞳。

 如何にも王様然とした彼は、ロメールの話を聞いて驚愕の面持ちを隠せない。

 ロメールは今回の城下町の件から、すぐにまた小人さんが騒ぎを起こすだろうと正しく予想し、今まで調べた情報込みで、国王陛下に謁見を求めた。


 そして全ての経緯を聞き、国王は眼を見開く。


「王家の子供が、そんな目にあっていたとは。いったい誰の胤だ? 厳重に注意せねば」


 話をちゃんと聞いてください。兄上。


 茫然と呟く国王に、ロメールは心の中でだけ毒づいた。


「お話したとおり、彼女は殺されかけました。父親が名乗り出る事はないでしょう。むしろ事実の隠蔽に再び彼女を殺そうとするかもしれない」


 王宮住みな王族は立場が弱い。金の光彩を持つ者なら地位をもらい公務にもつけるが、大半はロメールと同じく金に掠りもしない容貌だ。

 金の光彩は王家の直系にでも稀にしか出ない。

 兄上の他は六番目の弟が金髪だ。それぐらい少ない。


 だから、我が子が金の光彩を持つのを歓迎出来ない輩もいる。

 

 今の兄上の子供で金髪なのは第二王子だけ。赤ん坊の頃は薄い金髪だったが、成長するにつれ兄上によく似た濃い金髪になってきた。


 そこへ、あのプラチナブロンドのチィヒーロを出してみろ。王家を二分する御家騒動になりかねない。

 まして彼女は森の主に認められてしまった。

 この話は兄上に伏せてあるが、いずれバレるだろう。


 これを危惧した部屋住みの王族が、彼女を始末しようとしたのも頷ける。

 野心があれば、兄に取って代わろうとも考えるのだろうが、この穏やかで豊かなフロンティアに内乱を起こしたい愚か者など、今の王族にはいないはずだ。

 

 だからと言って殺す必要は無かろうに。相談してくれたら、秘密裏に兄上と養子縁組とか、やりようは幾らでもあった。誰か知らないが短絡的すぎる。


「早急に王家で保護しよう。そのように取り計らってくれ、ロメール」

「出来ません」

「.....なに?」


 うんざりと据えた眼差しのロメールに、国王は困惑気な顔を向けた。

 

「彼女は今現在、ジョルジェ男爵の正式な娘になっています。これは国が認めた正しい関係です。国王陛下であろうと覆す事は出来ません」

「それでは、私の養子に....」

「それも出来かねます。彼はとても彼女を可愛がっています。男爵の同意がなくば養子には出来ません。たぶん彼は頷かないでしょう」


 淡々と事実を述べるロメールに、口を挟んだのは国王ではなく傍に控える側近だった。


「不敬であろう。国に仕える貴族なれば、国王の御意向に喜んで応じるべきではないか?」


 鼻白んだ顔で側近の男はロメールを睨めつける。


 こいつは..... 宰相の息子だったか? ダッケンとか言う名前だったな、たしか。


 挑戦的な顔で口角を歪めるダッケンに、ロメールはあからさまな溜め息をついてみせた。


「国王の横暴が全て罷り通るなら、何のために法律があるのだ? こういう理不尽から民を守るためにあるのだろう。地位や身分はひけらかすために有るのではない、下位の者の権利を守らずして何が貴族だ。恥をしれっ!!」


 ロメールに声高に叫ばれ、ダッケンは思わず怯んだ。

 憤怒を隠しもせず怒り心頭な弟を見つめ、国王陛下も小さく頷く。


「その通りだな。これは私の失言だった」

「我が国は法治国家です。国王陛下と言えども、その下には平等です。親子という、人として最低限の権利を我々が侵害するなど、あってはなりません。むしろ守ってやらねば」

「ならば、どうする? このままにもしてはおけまい」


 少し思案し、ロメールは兄を見た。


「国王夫妻が後見として仮親になるのはいかがでしょうか?」


 ロメールの言葉に、即、過剰反応が起こる。


「馬鹿なっ!!」


 またもや空気を読まないダッケンの馬鹿野郎様が口を挟んできた。


 仮親とは地球の中世にもあった制度だ。その人間の後見人である事を明言し、実質、親と同じ義務と責任を持つ。権利はなく義務だけのこれを引き受ける者は滅多にいない。

 義務と責任のみなのだ。美味い部分は何処にもなく、よほど我が子同然とでも思わない限り、引き受ける者はいないだろう。

 しかも仮親は何人でもなれる。複数の親を持てば、心強い事は間違いない。


「何が馬鹿なんですか? 彼女の親になりたいなら、好都合じゃないですか。見守れるし、国王権限の行使も出来る。丸く収まるでしょう?」

「そうだな、悪くはない。王家の子供を守る事が最優先だ。その大前提が手に入るな」


 得心顔な国王陛下を振り返り、ダッケンは心外と言わんばかりに言葉を続けた。


「何を仰いますかっ、わたくしは陛下のために....っ、仮親では、何の権利もないのですぞ??」

「控えろ、ダッケン。貴様、いつから陛下に意見出来るほど偉くなったのだ? 貴様こそ弁えろ、陛下の御意向に逆らうなど言語道断だ」


 したり顔でニヤリと嗤うロメール。

 己の発言を逆手に意趣返しされ、ダッケンの顔が真っ赤に染まる。


 部屋住みの王族なれど、ロメールは己の才覚と努力で国王陛下直属の片腕として地位を確立していた。

 立場的には側近筆頭ではあるが、肉親であり、王弟でもある彼の発言権は宰相を上回る。


 自力で王宮の上位に上り詰めた彼の腹黒さ狡猾さは群を抜き、ダッケンごとき若造が太刀打ち出来る相手ではない。


 こうして秘密裏に行われた会談で、小人さんの処遇は決まった。




「仮親?」


 会談の結果を聞いた男爵親子。


 小人さんは首を傾げ、ドラゴはあからさまに安堵の溜め息をついた。


「良かった。チィヒーロは俺のモノだ。絶対に手離さないからな。嫁にもいかなくて良い、ずっと父ちゃんと暮らそうな」


 千尋を抱き締めて半泣きな熊親父。


 いや、それは娘として如何なものだろう。


 困惑しながらも、その愛情が面映ゆく擽ったく、千尋はドラゴの髭に頬をすり寄せた。


 目の前で展開される親バカ劇場をじっとりと見据え、ロメールは苦笑する。


「まあ、それで後日その正式な契約と謁見があるんだ。よろしく頼むよ。......あと、私も仮親になるんで。チィヒーロ、お父しゃまと呼ぶように」

「へあ?」

「なっっ???」


 同時に眼を剥く男爵親子。


 血の繋がりもないのに似ている不思議。氏より育ちとは良く言ったものだな。


 軽く吹き出すロメールの視界には、お父しゃまと呼んでくれと叫ぶドラゴに、無いっっと叫ぶ小人さんが映っていた。





 事も収束に向かい、謁見の日がやってくる。


「御嬢様、御可愛らしいですよ」

「妖精みたいですね。金の光彩が引き立ちます」


 千尋は鏡の前でクルリと回ってみた。


 うーわー...... 昭和のアイドルみたいだな。


 白い膝下丈のワンピース。首もとは薄いレースでおおわれ、全体的にふんわりした形だ。

 腰にはサッシュが結ばれて、寸胴ながらもウエストが存在する。

 そこからパニエを幾重にも重ねたスカートが、フワフワと広がっていた。

 サッシュと差し色はパウダーオレンジ。首に揺れるのは金のリンゴ。

 頭にもオレンジのリボンを巻き、まだ肩を越したくらいまでしかない髪を彩っている。


「支度は出来たか?」


「お父ちゃん、可愛い?」


 千尋は身体を揺らし、細かいオレンジの花模様の入ったスカートを軽く摘まんだ。

 

 絶句するドラゴ。


 可愛いなんてもんじゃないだろう? 妖精? いや、天使か? 家の子は天使だったのか???


 この間、0.5秒。


 固まるドラゴを千尋は満面の笑みで見上げる。


「お父ちゃんも、かっこいーっ、すっごい、御貴族様みたいーっ」


 みたいではなく、貴族なのですよ、御嬢様。


 生温い眼差しのナーヤとサーシャ。


 この後、またもやドラゴが小人さんを抱き上げ、王宮になど行かないと駄々を捏ねたのは御察しである。


 


 

ごめんなさい。ワニが迂闊だったばかりに、御迷惑を御掛けします。

本当にすみません。

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― 新着の感想 ―
本当に素敵な物語ですね! 大好きです テンポが良く言葉のセンスが最高だと思いメッセージしました  冒頭から才気走っていて凄かったのですが 例えばこの章の「部屋住みの王族」という表現は端的で良かったです…
私、この小説すごく好きです!
[良い点] 74話まで一気に読んじゃいました。 テンポも良く読みやすく、最初から最後まで面白かったです。 [気になる点] 何回か使われている法治国家という言葉ですが、 法治国家というのは、手順に則った…
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