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神々の黄昏と小人さん ~とおっ~


《何故だ? 神々は、その世界の命運に関わる事を伝えることは出来ないはず。あくまでも個人の範囲でしか》


 カストラートの国王達を見下ろしながら、賭けを持ちかけた神は信じられない面持ちで呟いた。


 世界の理に関わってはならない神々の不文律。ただ見守るだけ。それが如何に辛く苦しいものか。

 天上におわす全ての神に共通する苦悶である。

 

 出来ることは、個人に与える神託や加護くらい。それを駆使して、どのように世界を導くかが、彼等の永遠の命題だった。


 神々の代行役たる御先がいれば、神々の真意を伝え、上手く人々に絡むことも出来るが、アルカディアにはそれも存在していない。


 多くの御先や御遣いのいる世界もあるが、その大半は地上世界より、天上界や、奈落や深淵に潜んでいた。

 全世界共通のそれらは、ときおり地上に降りる事はあれど、積極的に人間に関わらない。


 この御先がアルカディアに生まれたら、賭けは間違いなく負けていた。


 御先が神々の意思を代弁してしまうからだ。人間に直接伝えられてしまう。


 アルカディアに御先が生まれなかったのは僥倖だ。しかし、その神々の真意が、どうしてかアルカディアの人々に伝わってしまっていた。


《いったい、なぜ?》


 賭けを持ちかけた神は、絶望的な眼差して崩折れる。


 彼の名前はレギオン。彼の見守る世界、ヘイズレープの人々がつけた名前だった。

 豊かな深い森に覆われていたヘイズレープは、それに比例して猛獣の跋扈する弱肉強食の世界。弱い者は淘汰される厳しい環境である。

 当然、その理には人間も当てはまり、レギオンの作った世界の人間らは、強さを絶対とし、たまに神託や加護をくださる神に、鬼という意味を持つ名前をつけた。


 信仰は力を生み、その力は世界に還元される。

 知恵と技術を兼ね備えた人間は、他の生き物を凌駕して繁栄を極め、何の憂いもなく、この世界が安定して続くものだとレギオンも思っていた。


 ほんの些細なボタンのかけ違えが、星をも呑み込む戦火を巻き起こし、地表を丸裸にしてしまうなど、誰も思っていなかったのだ。


 賭けに負けたところで、実質、レギオンに損はない。

 与えた僅かばかりの命の種を失い、滅びゆく我が世界を静観するだけ。


 静観..... 出来るものかっ!


 勝利は目前なのだ。諦めきれる訳はない。


 なんとか.... なんとかして、魔力の返還を止める事が出来れば。

 むしろ魔力を奪い合い、愚かな戦いを引き起こさせる事が出来れば。


 金色の王か。


 レギオンは、にたりとほくそ笑み、水鏡から、新たな神託をカストラートに降ろした。




「あーっ、ほんとに光ってるんだねぇ♪」


 夕闇の帷が星の煌めきを鏤める頃。


 ようやく小人さん達は、王都端を越えた辺りにある気になる木の多目的広場へ到着する。


 深紫の帷を背景に、薄ぼんやりと光る気になる木。

 その広い小梢の下で、真ん丸に眼を見開いたまま、小人さんはポッカリと口をあけていた。


 なんとも不思議な光景である。幹も枝も、新芽のひとつにいたるまで薄い金粉を纏うかのように仄かな輝き。

 しかしそれは、神秘的とかそういった神々しいモノではなく、こう、親しみやすい暖かさを伴った光だった。


 飽きもせず、ずっと見上げている小人さんを微笑ましく見つめ、アドリスは食事の支度を。騎士らは夜営の準備に取り掛かる。


 おもむろに取り出した封じ玉を割り、中から出てきた資材を用いて、直径五メートルほどの天幕を二つたてた。


 そしてドルフェンが、その一つに小人さんを案内する。

 物珍しげな顔で千尋が入ると、中には、寝台から大きなクッションとテーブルセットまで用意されていた。


 しかし、それとは別な事に小人さんは、面食らう。

 

 は? なにこれ?


 天幕の中には広々とした空間があり、外観と室内の容量が合わない。

 ざっと見渡しただけでも、奥行き十メートル近くあった。

 大きな丸座卓の周囲には千尋が埋まってしまいそうなクッションが五つも配置してあるし、その奥にはダブルベッドサイズの寝台が一つとシングルサイズのが一つ。

 少し離れた位置にシングルサイズの寝台が二つ。


 床一面には厚手の絨毯。思わず靴を脱ぎそうになった、中身日本人な小人さんである。


「中央の寝台がチィヒーロ様とサクラです。右手端の寝台を私とアドリスが使いますので、何かあればお声を」


 言われて見た寝台の間は薄いカーテンで仕切ってあり、ダブルサイズの寝台には御大層なベールの天蓋もついていた。


「夜営って、こんなんだっけ?」


 以前にキルファン帝国の小島での夜営を思い出して、小人さんは苦笑する。

 簡単なタープと厚手のシェルフ。あれこそが夜営と言うものだろう。


 幼女の疑問を正しく理解したドルフェンは、複雑な笑みを浮かべる。


「本来、キチンとした準備を怠らない王族の旅とは、こういうものです。不自由のないよう執り行われます。......今までがイレギュラーすぎたのですよ。行き当たりばったりで、有り合わせのモノしかありませんでした」


 なるほど。護衛騎士団の本領発揮ってことか。


「横になるスペースがあれば十分だったのに」


 テーブルセットの下は複雑な刺繍のされたキルトのラグが敷かれ、そこでは素足になる小人さん。

 

 グデグデとクッションにもたれて寛ぐ幼女の近くで、サクラが御茶の支度をする。


 外観の倍はある室内空間。これも魔法なのだそうだ。封じ玉の応用。


 つくづく、魔法って便利だよね。この恩恵を快く手離してくれるというフロンティアの皆には、本当に感謝しかない。


 絶対に喧々囂々の大反対が起きるものだと覚悟していた千尋は、良い意味で肩透かしを食った。

 懊悩煩悶。まざまざとした人間の醜さが発露し、とんでもない混乱を国中に巻き起こすだろうと危惧していたのだが。


 蓋を開けてみれば、王宮の議会以外、大した反発もなく、すんなりと事は運んだ。


 あとは金色の環を完成させて、蛇口を閉じるのみ。


 西の森にいるジョーカーが、地球の神々の用意した切り札であるならば、きっと何とかなる。


 小人さんが、まだ見ぬ西の森に想いを馳せていた頃、カストラート国では、新たな神託が、王宮中を席巻していた。


《フロンティアが魔法を棄てるのならば、魔力の根元たる金色の王もいらぬはず。ならば、それを手に入れて傀儡とし、カストラートに魔法をもたらすが良い》


 数百年前から極秘に使われていた洗脳薬。


 これは神託で与えられた薬であり、フロンティア王家に入る予定な者に使われていた。

 カストラートの思惑を隠すためと、カストラートの言いなりになる人間をフロンティア王家に送り込むためだ。

 ハビルーシュ妃を見れば、その効果が窺い知れる。


 これを使えば、自我を押さえ込み意のままに操ることが可能。金色の王とて例外ではない。

 聞けば、金色の王は幼い王女だと言う。


 魔法の恩恵を享受していたフロンティアから金色の王を奪い取り、カストラートが新たに魔力の恩恵を受けるのだ。


 今までもたらされた御神託に、一抹の疑惑を抱きながらも、容易く魔力を得られるという誘惑には勝てず、カストラートは最悪に舵をとる。


 ほくそ笑むレギオンの思惑を知らぬカストラートの人々は、彼の策略に踊らされていた。

 人の欲望とは底がないもの。目先の利に惑わされ、蒙昧な争いが蔓延する中世において、この獲物は眼が眩むほど魅力的な宝物である。


 この世界唯一無二の金色の王。


 しかし、カストラートが間者をフロンティアに忍び込ませていたように、この世界は不安定な均衡を持つ中世だ。

 他の国々とて各国に間者を送り込んでいる。

 やにわ活発になったカストラート軍の動きを各国は掴んでいた。


 勿論、その理由も。


 フロンティアの間者も、これを掴み、ロメールへと早馬をたてる。


 神々の思惑も知らず踊らされる人々。


 擦れ違う人々の感情は、それでも交差し、小人さんと言う至宝を巡り動き出した。


 そんな各国の懊悩煩悶など露ほども知らず、千尋はアドリスの作ってくれた食事に舌鼓を打つ。


「美味しいねぇ。アドリスの御飯、大好き♪」


 にぱーっと笑う幼女に、ほっこりするフロンティア一行。

 

 まさかこの旅が、神々の雌雄を決するモノになるなど、夢にも思っていない小人さんだった。

 

 美味しい物に幸せを感じ、今日も小人さんは、小人さんである♪

 少し駆け足気味になってました。

 書きたい衝動が先走ってる気がします。後から修正を入れると思いますが、今は思うままに書いていきます。

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【 少し駆け足気味になってました。  書きたい衝動が先走ってる気がします。後から修正を入れると思いますが、今は思うままに書いていきます。】 凄いですね、昔よく言われていた言霊が降りてきている状態? …
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