王弟殿下の小人さん ~後編~
ポイントが三千を越しました。本当に、ありがとうございます。
ポイントたまったら投稿すると書きましたので後編です。
有言実行、貰ったからには返しますっ!
本日二話目、御笑覧あれ♪
「野生種の苺苗がほしいんだっけ?」
森の外れに馬をとめて、騎士らは何かを取り出し、大地に叩きつけた。
するとそこに現れたのは高さ二メートルくらいの材木が数十本。瞠目する幼女の視界の中で、材木は勝手に動き出し一列の長い柵になる。
その左右にズラリと馬を繋ぎ、騎士団は青い粉を柵の回りに振り撒いた。
「準備完了です、殿下」
ぴしっと居並ぶ騎士ら十数名。
それに頷き、ロメールは千尋を抱き上げる。
思わず眼を見開いて固まる幼子に、彼は、くふりと愉快そうに眼を細めた。
「......殿下?」
「ああ、言ってなかったっけ? 私は国王陛下の四番目の弟だ」
聞いてねぇーよっ! ってか、わざと黙っていたろ、その、したり顔っ!! 隠せてねーぞ、こらっ!
然も楽しげなロメールを心の中で毒づき、憮然とする千尋を抱え、一行は並んで森の中へ入っていった。
「苗ねぇ。わかるかい? ハロルド」
森の中の小道を進みながら、ロメールは前を歩く騎士へ声をかける。
ハロルドと呼ばれた騎士は少し思案げに眉を寄せて、小さく呟いた。
「私には少々..... 植物に関しては不得手でございます」
燃えるような赤い髪にくすんだ藍の瞳。年の頃はドラゴと同じくらいであろうか。四十いくか、いかないか。
整った顔立ちの精悍なイケオジである。
その言葉に反応して千尋が周囲を見渡すと、他の騎士らも困惑顔で首を竦めていた。
「ふむ。庭師でもつれてくるんだったかな」
ふざけんな、そこ、重要ーーーーーーっ!!
なんで苗を採取に来るって分かってるのに、その専門家を連れて来ないのさっ!
千尋も地球では野山を駆け回り、野苺やスグリなどを取って食べた田舎育ちだ。
それなりの知識はあるが、ここでも通用するとは限らない。魔力があり、魔法があり、魔物のいる世界なのだから。
常識からして大きく外れ、生態系だって違うだろう。
ぐぬぬぬとロメールの耳を引っ張り、千尋は頬をプックリと脹らます。
リスのようなその顔に、周囲がどっと笑い出し、千尋は恥ずかし紛れにロメールの頭をぺちぺち叩いた。
「痛い痛い、ごめんって。ほら、これあげるから」
大して痛くもないだろうに大袈裟な声をあげ、ロメールは千尋に小さな包みを差し出す。
受け取った彼女は不思議そうにそれを開いて、次にはギラリと眼を輝かせた。
これってお菓子じゃないの??
薄い紙に包まれていたのは焼き菓子で、ほんのりとバターの匂いがする。
「ふおおぉぉっ、お菓子だっ」
眼を丸くして驚く千尋に、再びロメールは噴き出した。声を出して笑い肩を大きく揺らす。
「ふおおぉって、君、面白い子だね、ほんとうに」
仕方がないではないか。こちとらお菓子どころが食べ物にすらありつけず死ぬところだったのだ。
しかも食べ物に不自由しなくなった今でも甘味には飢えている。
贅沢かもしれないが、現代日本で飽食に慣れ親しんだ千尋に、今の環境は辛いモノだった。
甘味と言えば水菓子か干し菓子。バターも生クリームもあるのに、甘くないというだけで全くの別物になる。
王侯貴族すら滅多に口に出来ない蜂蜜を千尋が使える訳もなく、日がな一日、甘いお菓子を妄想しながら果物を食べる毎日だった。
千尋は焼き菓子を手に取ると、期待に満ちた眼差しで口へ運ぶ。そして咀嚼すること数回。
甘味への期待again。肩透かしも大概にしろや、こら。ガッカリだよっ!
焼き菓子は甘くなかった。甘いといえば甘いが、小麦の仄かな甘味がバターの塩気で際立っているだけである。
あれだ。クラッカーとビスケットの間みたいな感じ。
期待しただけに落胆も大きく、千尋はガックリと項垂れた。
「あれ? おかしいな。美味しくない?」
思わず眼を遠くしてしまった千尋は、オロオロと自分を見るロメールに力なく微笑んだ。
「美味しいです。ありがとうございます」
いや、絶対そう思ってないよね???
きっと喜んでくれるだろうと考えていたロメールは、嘆息する幼子の反応に狼狽えた。
こういった焼き菓子は王侯貴族らでしか作れない。バターやチーズは高価なモノだ。
庶民にも手が届かなくはないが、それを菓子に使おうとは思わないだろう。
高価であるからこそ食事で振る舞う。間食という概念すら庶民には薄い。
小腹が空けば果物を噛る。それが普通だ。
幼女が、お菓子だっと叫んだ時、さすが料理長の娘だなと思った。よほど溺愛しているのだろう。王侯貴族らに作る菓子を娘にも与えていると思ったのだ。
しかし、結果は期待外れ。
幼女は落胆の色を隠せぬほどガッカリしている。
違う菓子を与えているのか? これよりも美味しいモノを? 帰ったら詰問してやるっ!!
実際は異世界の菓子と比べられただけなのだが、それを知らぬロメールは、八つ当たり気味で料理長に憤慨していた。
「あっ、あれっ!」
しばらく進んだ辺りで、千尋は見慣れた花を指差した。
さわさわと揺れる大きな葉に、ぽつりぽつりと咲く小さな白い花。
まだ開花期ではないのだろう。沢山の蕾がついたそれは、葉も花も薔薇科特有の形をしていた。
千尋はロメールに下ろしてもらうと、一目散に駆け出していく。
近くからマジマジと見つめ幼女は破顔した。
「木苺だーっ、あったぁーっ」
「これが? ふむ、結構大きいものなのだな」
生い茂る木苺は高さ二メートルほどあり、ロメールの背丈よりも大きい。
「根っ子ごと引き抜けば良いな。頼むぞ」
ロメールが指示すると、何処から取り出したのか、数人の騎士がシャベルを抱えて頷く。
「さっきも思ったけど、何処から出してるの? 木材とかシャベルとか」
「ああ、まだ知らぬか。魔法でな。こう小さな玉に封じてあるのだよ。騎士団には貴族が多いから魔法がつかえる者も多いのだ」
ほああぁぁ、異世界定番テイクツー。
「私にも使えますか? 魔法っ」
キラキラした眼差しで見上げられ、ロメールは何と言えば良いのか言葉に詰まった。
準男爵とはいえ料理長は平民だ。彼の魔力では調理に役立つ程度の生活魔法しか使えない。
だが、それも魔法には違いあるまい。特にこんな幼子なのだ。その程度でも十分嬉しいだろう。
「そうだな、励めばきっと使えるようになる」
微笑ましそうな笑顔で頷くロメール。思わず手を合わせて跳び跳ねようとした瞬間、千尋は騎士らの動きに眼を凍らせた。
「だめーっ、根っ子が傷つくっ!」
なんと騎士らは木苺の株真下にシャベルを突き刺している。すでに幾つかのシャベルは地面に突き刺さっていた。
「あああああっ、あー.....、ダメだ、これ」
慌てて駆け寄った千尋は、多くの主根が切られているのを確認し、この株自体は無理だと判断する。
木苺は丈夫で繁殖力の高い植物だ。根っ子を切られても平気で新たな芽を出す。
しかし、この株は終わりだ。繁殖力が強いかわりに見切りが早いのも木苺の特徴だった。
すぐに弱り、この株は枯れ果てるだろう。
「しゃーない。根っ子回収して、ベイサルシュートを採取しよう。挿し木、接ぎ木で増やせるかもしれないし」
根っ子を植えておけば、来年には勝手に芽を出す。むしろ周囲を深く囲って隔離しておかないと、爆発的に繁殖し地を埋め尽くす恐ろしい植物なのだ。
テロ・プランツ並みにしぶといのが野苺である。
「博識だね。挿し木? 接ぎ木って?」
首を傾げるロメールに大まかな説明をし、千尋は他にも蔓苺やスグリ、グミなど多くの植物を手に入れた。
騎士らも慎重になり、千尋の指示どおりに大きく外れたところからシャベルを入れ、土をほぐしながら丸めるように根っ子を回収していく。
「植物の採取とは手間のかかるモノなのですね」
一息つきながら呟く騎士に、ほにゃりと千尋は笑った。年相応の可愛らしい笑みに、騎士の顔も綻ぶ。
「だから面白いんだよ。手をかけてやれば、それに応えてくれるし。ここは良い土だね。森が嬉しそうだ」
うーんと息を吸い込む幼子の瞳が、陽の光を浴びてキラリと金色に輝いた。
えっ?
ばくんっと大きく心臓が鳴り、騎士は改めて千尋を見つめた。
地面に眼を戻した幼子の瞳は薄い茶色。ミルクティーのように、本当に淡い琥珀色だ。
見間違い? だが....
どうしても気になり、騎士は恐る恐る千尋のフードに手をかける。
その瞬間、多くのけたたましい羽音が辺りに響き渡った。
「え? なに??」
「抜刀ーっ!」
ハロルドが声高に叫ぶ。途端、騎士らが腰から剣を引き抜き、千尋達を囲うように構えた。
「抜かりました。奴等のテリトリーに踏み込んでいたようです」
すかさずロメールは千尋を抱き込み、低い姿勢であたりを窺う。
千尋を抱き込む腕の力が、その緊張をあらわしていた。
なん? なんかヤバい奴がきた???
「アレは一匹倒すと鈴生りで襲ってくるからね。絶対に動かないでね、チィヒーロ」
固唾を呑み、羽音のする方へ眼を向けると、そこには大きな蜂がいた。
へあ? 蜂?
可愛らしい容貌の蜜蜂だ。ただ大きさが尋常ではない。人間の赤ん坊くらいのサイズである。
お父ちゃんーーーーっ、説明、雑かーっ! あんなんだと知ってたら、養蜂なんぞ考えなかったわーっ!!
可愛い姿でも、その大きさだけで十分恐怖を感じた。あれで更に刺すと? 噛むと?
そりゃあ、危険だろうよっ! あのサイズの針って、殆どナイフと同じだろーっ!
「まいったねー。アレらは森の主だから、傷つけるとヤバいんだよねー」
森の主? 蜂が?
でも分かる気がする。昆虫は、その脅威的な数で大きな生き物を圧倒するのだ。
小さな白蟻が大きな建物を崩壊させるように。
千尋が恐々と蜂を見つめると、蜂も千尋を見つめていた。何故か見つめられていると感じる謎。
「私じゃ力不足かもしれないが試してみよう。誰かチィヒーロを」
ロメールは近くの騎士に彼女を渡すと、周囲を囲む数十匹の蜂へ静かに歩いていく。
「なに? なにするの? 危なくない?」
オタオタと手足をばたつかせ見上げる幼子に、騎士は眉を寄せて説明する。
ようは縄張りを荒らした御詫びに魔力を与えるらしい。
魔物は魔力を好む。人間らを襲うのも魔力を得るためだ。つまりは餌扱い。
だから、魔力そのものを放出して与えることで、知性のある魔物ならば見逃してくれるらしい。
主と呼ばれる蜂らは、その類いなのだと。
「通常の魔物なら倒して終わりなんですが。彼等は倒せない。傷つけたが最後、国中が彼等に襲われます」
千尋は背筋をゾッとさせる。
以前見た古い映画に、そんなのがあった。無数の蜂が人々を襲い、群がる。
なんで.... そんな危ない森だって知ってたら。
......知ってても来ただろうとは思うが、自分一人なら、自己責任で食べられて終わりだったのに。
「この国の人間なら彼等のテリトリーには絶対に入りません。今回は.....その、我々も夢中で.... 我々の失態です。何のためについてきたのか」
つまり森を熟知しているはずの騎士団が、千尋につられて森の奥深くまで足を踏み込んでしまったのだ。
アタシのせいじゃん。
アタシが走り回ったから、彼等の感覚が鈍ったのだ。
ロメールが何かを唱えると、その周囲に陽炎のような靄がたち始める。
大きな蜂達はそれに群がり、瞬く間にロメールの姿が見えなくなった。
大丈夫なの? アレ....
心臓がバクバクする。おかしい。なんか変だ。
自分の胸をぎゅっと掴み、限界まで眼を見開いていた千尋の視界で、蜂の塊はぐらりと揺らぎ、飛び立った蜂から解放されたロメールが大地に倒れた。
「殿下ーっ!」
何が起きた?
叫んだのはハロルド。しかし彼も動かない。いや、動けない。
先程の話どおりなら、蜂に対して攻撃は出来ないのだ。
しかし蜂はさらに倒れたロメールへ近づいていく。既に彼の身体から、モヤモヤした魔力は失われていた。
まさか....っ、まさか、まさか、まさかっ!!
考えるより早く千尋は駆け出した。
食べるつもり? ロメールを??
後で騎士らが絶叫を上げているが、そんなもん知るかっ!! 目の前でっ、人がっ、食べられそうなんだぞっ!!
「やめてーーーーーっっ!!」
転けつまろびつ、千尋は飛ぶようにロメールへ覆い被さった。
フードが外れ、金の髪が陽にあたり鮮やかに煌めく。それに構わず覆い被さった千尋の全身から、金色のような靄が辺りに広がった。
度肝を抜かれた蜂達が争うように金色の靄に群がり、さらに奥からやって来た蜂達も、それに倣い、次々とやってくる蜂で周囲は真っ暗になった。
「何が起きて....?」
完全に周りを数百、数千の蜂達に囲まれ、騎士団は手も足も出せずに見守るしかない。
そんな中、一際大きな羽音をたてて一匹の蜂が飛んでくる。
大人サイズはあろうかという大きな蜂に、周囲の蜂達が道を開けた。
そしてその中心にいる二人の姿も見えるようになる。
「殿下ーっ、男爵令嬢っ、御無事ですかーっ」
叫ぶハロルドにロメールが軽く手をあげた。
安堵するハロルドを確認して、ロメールは自分に覆い被さる千尋を見た。
何でさ。何で君なのさ。
フードの外れた千尋の髪を撫でながら、その感触と色を確かめる。
白銀にも近いプラチナブロンド。色彩が薄いほど魔力は高い。
瞳も薄かったね、そういえば。
彼の服をぎゅっと握って離さない千尋の背中をポンポンと叩き、ロメールは苦笑した。
「チィヒーロ。大丈夫だから。起きて?」
言われて顔を上げた千尋は、周囲にひしめく夥しい蜂の群れを見て絶句する。
いったい何処からこんな数がっ?
「ロメール、大丈夫だからねっ、食べさせないからねっ」
千尋は彼を抱き締めるようにしがみつき、それでも震えてる幼子の温もりに、ロメールは思わず目頭が熱くなった。
ああ、君は私を助けようと..... まいったな。
《食べませんよ、失礼な》
え?
千尋は茫然と辺りを見渡す。
「蜂は人を食べたりしないよ。攻撃したら別だけどね。彼等は知性ある生き物なんだ」
《その通りです。その方が魔力を使いすぎたので、我が子らは少し還そうとしただけです》
ステレオ式に聞こえてくる副音声。
「へあ? じゃあ、アタシの勘違い?」
頷き苦笑するロメール。
千尋は顔を真っ赤にして蜂達に謝った。
「ごめんねーっ、てっきりロメールが食べられちゃうかと..... やだもう、恥ずいーっっ!」
《全くです。ところで貴女、私の声が聞こえてますよね?》
「うん? 聞こえてるよ?」
途端、ざわりと空気が蠢いた。響き渡る羽音が、さらに鋭さを増す。
《金色の魔力を感じて来てみれば。やはりですか。久方ぶりの王の来訪ですね。初めまして、新たな契約を結びますか?》
「ほぇ? 契約? なにそれ?」
《.......そこからですか》
彼女はクイーン・メルダと名乗り、千尋の前に舞い降りる。
大人大の蜂の到来に、ロメールも千尋も顔が凍りついた。
そして彼女は話してくれる。旧き盟約に結ばれた、この世界の成り立ちを。
「つまり何処の森にも主がいて、一つの森で一つの契約が結ばれていると?」
《そうです。魔力が高く、金色である事が条件になります。それを我らは王と呼びます》
そのように魔力の高いものは滅多におらず、結ばれた盟約も多くはない。数百年に一度くらいだという。
盟約に沿って、契約をむすんだ王は森の主のあるじとなり、命つきるまで共にあるらしい。
魔力の高い者に仕え、その魔力を分けてもらえるのは森の主にとって誉れであり、新たに森を活性化出来るのだとか。
ふんすっと胸を張り、メルダは手を..... 足なのかもしれないが、わきゃわきゃさせ、迫るように千尋にズズィっと顔を近付けた。
《なのでっ、是非ともっ、新たな盟約をっ、我が王よっ!!》
複眼までギラギラさせて鼻息の荒いメルダ。
いや、まだ王になってねーし、ってか第八王女だし。しかも廃棄されたようなモンだし。
「あー、よく分からないんで保留で。もっとよく調べてくるよ。盟約とか、森の主とか」
有耶無耶にしようと愛想笑いする幼子に、ロメールは確信する。
君はクイーンと会話出来てるんだね。ほんとに、何で君なんだろうね。
一人と一匹が何を話しているのか分からない。森の主と会話出来るのは、金色の王のみだ。いや、女王かな? 今回は。
新たな盟約が結ばれれば、今しばらくフロンティアは安泰だ。
各国は知らない。知らせる訳にはいかなかった。
少し遠い眼をしてロメールは空を仰ぐ。
世界中に点在する深い森。そこに棲まう主が魔力の根元なのだとは。
森が活性化し、森の主が健やかであれば、その近辺の大地は魔力で満たされる。
数百年に一度の盟約。
長い月日に風化され、それを忘れた周囲の国々は近代化の波に押され、凶悪な魔物だとして森の主を殺し、森を切り開いてしまった。
我が国が気づいた時にはもう遅かった。
殆どの国で森は失われ、魔力も魔法も失われていた。これを今さら公開しても、新たな火種と妬みを生み出すだけである。
少し調べて統計をとれば、森から放射状に豊かな大地があるのだと分かるだろうに。
それがなくとも我が国の森の主は空を駆け、数千の数を誇る生き物だ。
他の国のように簡単には倒せない。その脅威が幸いしたのだろう。
おかげで数百年周期に生まれる金色の王の記録が失われる事はなかった。
でも......
何で、それが君なのかなぁ? いったい何者なの?
未だにワチャワチャしている二人。その片方がしょんぼりと項垂れた。
《盟約がなされないならば、頂いた魔力を御返しせねばなりません。せっかく森が豊かになると思ったのに.....》
肩を落としてグスグスと泣き出したメルダに、千尋はポンっと手を打った。
「蜂蜜!」
《はい?》
「今回の魔力とやらは返さなくて良いから、蜂蜜ちょうだい。それで手打ちに」
《そんな物で宜しいのですか?》
「うんっ!」
元々、養蜂を始めようと思って御花畑に着手したのである。こうやって、魔力と引き換えに蜂蜜がもらえるなら、それにこしたことはない。
メルダは花丸がつきそうな笑顔で了承し、しばらくして大きな塊を運んできた。
それは六角形の長い管で、直径五十センチ、長さ一メートルくらい。茶色の筒状で中には蜂蜜がギッシリ入っていた。
《こんなモノで宜しければ、いつでもお持ちください》
ニッコリ笑うメルダ。女神キタコレ。
ひゃっほうっと喜ぶ千尋は、周囲の不穏な眼差しに気づいていない。
自分のフードが外れ、その見事な金髪を晒している事にも。
驚愕と感嘆を同衾させた訝しげな視線。
ロメールとハロルドにいたっては剣呑を通り越した黒い笑顔になっている。
「さてと。チィヒーロ? 喜んでるところ悪いんだけど少し話を聞かせてもらっても?」
「へあ?」
ようやく事態に気づいた小人さんだが、時既に遅し。
黙りを決め込んだ小人さんは、冷たい眼差しで嘆息する王弟の馬に乗せられ、ポックリポックリと帰宅していった。
その頃、王宮外郭では、冬眠前の熊のように険しい顔でウロウロするドラゴがいたとか、いないとか。
小人さんの伝説は、まだ始まったばかりである。
はい、お粗末様でした。個人的にお気に入りなのはクイーン・メルダです♪
お星様、ありがとうございます。
調子に乗ったワニがヤシの木の上で踊っておりますww