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隣国の森と小人さん ~やっつめ~

何か昨日、日間と週間と月間で十位内に入っていたようです。

読者様からお知らせ頂きました。

これも皆様のおかげです。ありがとうございます。

他愛ないワニの物語を読んでくださるだけで感無量なのに、ほんと感謝しかありません。

これからも頑張ります、ありがとうございました。

       m(_ _)m


「事情は分かりました。何ともはや....」


 森から出てきたフロンティア一行から説明を聞き、ガリウスは表現し難い複雑な顔をした。


 彼等の話が本当ならば一大事である。


 森が本来の力を発揮し、魔物、獣が活性化。さらには古き盟約が甦り、ここら周辺では魔法が使えるようになったのだと言う。

 今はまだ無理だが、ここで生まれた者が、ここで得たモノを食し、生活していれば、自ずと生来持っていたはずの魔力が発現するだろうと。


 俄には信じがたいが、目の前にある現実は否定出来ない。

 一瞬で甦った緑の大地。これが現実にあるのだから、他にどんな荒唐無稽なことが起きても信じざるをえないだろう。


 森の主の伝説は、こういう事だったのか。


 森の主が弱っていたから、大地から魔力が失われ魔法が使えなくなった。

 言われてみれば分かりやすい図式である。

 この森が存在していたからこそ、数百年前までこの辺りが農耕地だったのだ。

 何故にそのような大事な記述が歴史から失われていたのだろうか。

 多くの文明機器が開発され、山や川を崩し埋め立て、人々は住める場所を増やしていった。

 その過程で潰した森の中にも、件の伝説に沿うものがあったはずだ。


 そこまで考えて、ガリウスは、ざーっと血の気を下げる。


 まさか?


「もしも、主を殺して森を潰していたら...... そこはどうなりますか?」


 小人さんは、やや眼をすがめ、切な気に苦笑した。


「どうもならないよ? ただ、魔力と魔法が失われるだけ。人の力だけで生活する、普通の生活があるだけだよ」


 普通の生活? つまり、魔法が使えるならば、普通でない生活が出来る?


 ふと見れば、フロンティア一行の一人が空中に水を浮かべていた。

 そこから滴る水で皆が手や顔を洗い、次には不自然な風で水気を飛ばす。

 ふわりと漂ってきた風は仄かに温かく、それを自在に操っているだろう人物の周りで渦を巻いていた。


 これが魔法。これがフロンティアの日常。


 井戸も盥も必要なく、手拭いすら持たなくても良い。

 この様子なら発火薬がなくとも火を起こす事だって可能だろう。

 なればこその軽装なのだ。王家の姫君がたった一台の馬車で訪れる訳である。

 魔法があるから、不必要に大きな荷物はいらない。何でも代用が出来る。

 数百年前にはフラウワーズでも日常的だったはずの風景。


 これと比べたら、フラウワーズ王都の暮らしは原始的極まりない。


 今更ながらに、過去の人々の犯した愚行に歯噛みするガリウスだった。

 無くしたモノの大きさに愕然とする。


 耐え難い事実に悔恨を滲ませるフラウワーズ騎士団の面々を見つめつつ、フロンティア一行は眼を見合わした。


 彼等への説明は小人さんが引き受け、その話を黙って聞いていたのだが。


 森の主とその成り立ちや意味、今回はフロンティアの王都からクイーンの助力があって復活したのだと説明していた。

 金色の王の件や主の次代の話などは完全に隠蔽している。

 彼女の肩にいるポチ子さんの存在も、その話の信憑性を裏付けていた。

 フロンティアの王家は森の主と良い交流を持ち、その恩恵を受けているのだと。


 上手い話の持って行き方だ。こちらに不都合なことは全て隠し、森の主と敵対する不利益のみを、これでもかと知らしめる話し方。


 思わず感服する騎士達。


「この先は貴方々しだいだ。復活した森を有効利用出来るよう期待するね。主のテリトリーを侵さない限り、ここは安泰なはずだから。フラウワーズは魔力が乏しい国だ。今あるモノを大切にね」


 そう締めくくり、踵を返す幼子に、慌ててガリウスが話しかけた。


「お待ちくださいっ、是非とも王都にっ」

「はえ?」


 ガリウスは小人さんの前に膝をつき、すがるような眼差しで彼女を見据える。


「今のお話を王都の城で御願いいたしたい。我々では詳細が理解出来ておりません。これを正しく伝えるためにも、是非っ!」

「無理」


 思わず惚けるガリウスを、小人さんはスパッと一刀両断する。


「ひとつ、アタシは五日間しか滞在許可を貰っていない。フラウワーズにもフロンティアにもね。ふたつ、貴方々に話した以上の内容はアタシも話せない、これ以上はアタシじゃなく、ちゃんとした大人同士の交渉が必要だ。みっつ、森と森の主を大切にする。それだけの事が理解出来ない王族ならば、アタシは話す価値を感じない。以上」


 あんぐりと口を空けるガリウスに、ふんすと胸を張り、今度こそ小人さんは踵を返して馬車に向かった。


 あと三日しかないのだ。一番近い街まで馬車で半日と聞く。

 取り敢えず農村に戻って、これからの説明をしたら、すぐにでも街に向かいたい。

 余計な手間はかけたくないのだ。


 どこまでも、自分本意な小人さんである。


 


「.......という訳で、森の主が復活したの。ここらも緑が戻ってきたし、農作業頑張ってね。モルトにも話しておいたから、きっと眼を配ってくれると思う。でっかいカエルが現れても驚かないでね?」


 唖然と話を聞く村人達。


「あの光はそれでしたか」

「ここからでも確認出来ましたよ」

「ええ、キラキラと光の雨が降って、みるみるうちに緑が.....」

「ありがたいことです。そうですか、主様が」


 そこまで言って、人々は唇を噛み締めた。


 この荒れた大地を開墾し、必死に農耕を続けててきた。

 元が農耕地でなくば、とても続けては来れなかっただろう。

 近くにフロンティアがあり、その余力が伝わる位置にあるため、他の土地と比べればまだマシな土地だった。

 だが、その収穫量も年々減ってきており、先細りな未来しか見えていなかった。

 漠然とした不安が人々の胸中を占め始めた処に、この異変である。


 なんと、ありがたいことか。


 微笑むフロンティア一行の中で、小人さんのみが少し思案気に村の畑を見ていた。

 

「あのさ。気になってたんだけど、肥料ってどうしてる? 堆肥みたいな場所や臭いがないんだよね」

「肥料ですか? えーと、収穫の処理で出た野菜クズとか残飯とか。あとは根を取り除いて枯らした雑草とかでしょうか」


 はい?


「他にも森の肥えた土とかを運んだりしています」


 村人の答えに、思わず額を押さえる小人さん。


 あっちゃー。なるほどね。


 森の土が肥えていて植物の育成に良いのは知っている。それに関連して、緑肥や腐葉土的なモノも理解出来ているのだろう。

 だが、森の生き物が養分の一助になっていることは分かっていないのだ。

 数百年前までは魔力で豊かだった弊害なのだろう。

 何もせずとも豊作ならば、何の努力もする必要がない。

 この世界の人力による農業とかは、まだ始まったばかりなのだ。


 うーん。教えるべきか、本人らに任せるべきか。

 何でも切っ掛けは必要だよな。


「あのさ.....」


 慎重に言葉を選びつつ、千尋は村人に説明をした。


 動物の糞尿や死骸が森の栄養の一端なのだと。むしろ主役と言っても良いと。

 淡々とされる説明に、村人らは眼から鱗だったらしい。


「なんか分かります。それで厠の周辺は雑草が生えやすいのですね」

「鶏小屋や、放牧場もだよ。やけに草が良く伸びると思ってたんだ。そういう事か」


 村人達も薄々は感じていたようだ。


 納得顔な彼等に安堵し、小人さんは大きく頷いた。


「家畜の糞尿を集めて、藁や土を混ぜ混んで放置するんだ。発酵が進むと表面が真っ白になるから、そしたら良く混ぜて、また放置。雨に当たらないよう屋根をつけてね。それを繰り返していると臭い匂いがなくなるから。匂いがしなくなったら堆肥の完成だよ」


 うんうんと素直に聞き、紙に書き留める村人達。


「直接撒いては不味いのですか?」

「それも有りだけど、糞尿は発酵の過程でガスや熱を出すんだ。それが原因で逆に作物を枯らしてしまうことがあるの」

「なるほど。害が起きるのですか。ならば、冬など長く畑を放置出来る場合なら有効ですか?」

「ああ、そういう時は出来るね。むしろ直接まくことで、早い雪融けを誘発出来るよ」


 質疑応答に、わいわいと盛り上がる室内。


 フロンティア騎士団は、眼を丸くしてそれを見ていた。


 ひとしきり農業関連の話をし、それらを他の農地にも伝えるよう頼むと、フロンティア一行は近くの街に向かって出立する。


 それを見送る村人達が、拝むかのように手を合わせて感謝の気持ちを贈っていたとも知らずに。


 後にフラウワーズでもフロンティアでもなく、小人さんを崇拝する村の誕生だった。

 宗教でも忠誠でもなく、崇拝。


 合言葉は小人さん。教義は森の主を大切に。


 非常に分かりやすく単純な信仰の芽が、ポンっと大地に飛び出した瞬間である。




「少々お尋ねしても宜しいですか?」

「うん?」

「先程のお話、随分と農業に精通しておられる御様子。いったい何処で学ばれましたか?」


 ドルフェンの質問に、ギクッと小人さんの肩が揺れた。


 ダラダラと冷や汗を流し、千尋は言い訳を考える。


 どうしようか。ちょっとはしゃぎすぎたかもしれない。前世の漫画知識とも言えないしな。うーむ。


 そんな二人を見つめ、アドリスが退屈そうな欠伸と共に助け舟を出した。


「良いじゃないのよ、そんな事。だって小人さんだもの。不思議の塊なのは今更っしょ?」


 出ました、魔法の言葉。だって小人さんだもの。これで全てに片がつく。


 呆れた顔のドルフェンだが、深く追求する気もないのだろう。その口の端は微かに上がっていた。


「そうですな。まあ、チヒロ様に不思議は付き物です。今更でしたね」

「チっヒーロ様?」

「..........」

「おい、ドルフェン、もっかい頼む。何か今、チィヒーロの名前を変な呼び方してなかった? ねぇっ」

「はて? 何の事やら」


 今度は別の話題に興味が移ったようだ。


 ドルフェンの肩を掴んで揺するアドリス。それを、しれっとかわすドルフェン。


 ほっと胸を撫で下した千尋は、その光景を微笑ましげに見つめる。


 つくづく周りに恵まれてるよなぁ、アタシ。チラッと神様を恨んだこともあるけど、ほんと、今は感謝しかない。


 ガタゴトと馬車に揺られながら、小人さんは窓から空を見上げた。


 ありがとうね。今日もアタシは元気だよ。


 誰に聞かせるでもない呟きを脳裏に浮かべ、今日も小人さんは我が道を征く♪


ワニは基本お喋りです。なので思うがままに前書きや後書きに近況報告とか、色々入れますが、物語を読むのに邪魔だったりしませんかね? 少し気になりました。


既読マークにお星様ひとつ、楽しんで頂けたら、もひとつ下さい♪

      ♪ヽ(´▽`)/

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― 新着の感想 ―
邪魔にならないよ書き手の本音が見えて嬉しいよ。続きを楽しみにしてます。♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪
フラウワーズ騎士団の名前が登場時と違います。 ガイウス→からガリウスになってます。 少し気になってのでw
楽しく拝見させてもらっております。前書きや後書きもワニ先生のお気持ちや近況が聞けて好きです。今回のフラウワーズのカエルさんも素敵でした。蘇った森に涙するキングモルト、森の主達はなんて優しいんでしょう。…
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