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隣国の森と小人さん ~ななつめ~

 またもやレビューがっ:::

 四つ目です、ありがとうございますっ

 書籍化よりも、皆様の感想やレビューが嬉しいワニがいます。

 批判や苦情でも、今のネット世界なら相互理解に努められる。つくづく良い時代になったものです。

 良いことばかりでないのは知っていますが、あえて言います。


 ビバっ、インターネットっ!!

     <( ̄^ ̄)>


「いったい何が......?」


 森外周に待機していたフラウワーズの騎士団は、固唾を呑んで森を凝視していた。

 

 辺りを警戒しつつ、中へ入っていったフロンティアの一行を心配していたが、そこに大きな地響きがおき、巨大な水柱が上がる。

 何事かと見守る彼等の目の前で、森をおおうように無数の光が帯となって飛び交い、辺り一面が眩い光で満たされ、フラウワーズ騎士団は一瞬、視界を失った。


 あまりの眩しさに、思わず彼等が眼をつぶった、そのあと。


 再び眼をあけた時、世界は一変していた。


 かさかさと乾いた音をたてて、踝あたりまでしかなかった草原の草が、ふくらはぎまで伸びて、さわさわと揺れている。

 所々に色とりどりな花も見られ、荒涼としていたはずの大地が、一面の緑に覆われていた。


 だが、何よりも眼をひいたのは森である。


 外周が枯れつつあった森。まるで幽鬼のように立ち並ぶ痩せ細った木々は姿を消し、燃えるように葉を繁らせ、無機質な印象だった森が生気に満ちあふれていた。

 濃く生い繁る深い森。

 乾いた大地が、一変して瑞々しい緑に変貌している。

 

 言葉もなく立ち尽くしていたフラウワーズ騎士団。その中の一人が、誰にともなく呟いた。


「.....森の主様が目覚めた?」


 その男は老齢の騎士。戦慄く瞳を限界まで見開き、信じられない面持ちで森を見つめている。


 森の主?


 聞き覚えのある言葉だった。古い言い伝えに何度も出てくる大きな魔物。

 

 いわく、彼の昔、森に棲まうは魔物の一族。

 その質は穏やかなれど油断めさるな、相手は魔物。人が出るより古くからおわす魔物。

 賢く聡く、大地を見守る古き魔物。

 智恵ある魔物の棲み家を侵さずば、彼の者らは大いなる恵みと共に人とあらん。


 古い言い伝えに必ず出てくる森の主。


 だが、その姿を見た者はおらず、ただの伝説だと思っていた。

 乾いた荒野が大半を占めるフラウワーズにおいて、突如として存在するこの森を称える昔語りなのだと。

 

 そうだ、ここにだけ森があった。


 人を惑わし、死に至らしめる過酷な大地に、古くから萌える広大な緑。

 その昔には、ここら一面が農耕地であったと記録されている。

 今は見る影もないが、豊かな畑があり、フラウワーズも自給自足が出来ていたのだと。


 ほんの数百年ほど前の話だ。


 その頃はフラウワーズでも魔法が使え、今のように石炭で暖を取る事も人力で井戸を動かす事もなく、人々は豊かな生活をしていたという。


 絵空事だ。そう思っていた。


 豊かな隣国フロンティアを羨み、思い描いた妄想なのだと。

 

 しかし、目の前に突き付けられた現実。


 この美しい緑に萌える大地ならば頷ける。

 

 ここが以前は豊かな農耕地であったのだと。

 さわさわと広がり、ときおり風をはらんで波打つ草原は、見渡す限り一面を覆い尽くし、フラウワーズ騎士団の心を踊らせた。

 

 彼等の眼が、知らず知らずのうちに優しく弧を描き始める。

 信じられない面持ちはそのままだが、誰ともなく笑みが浮かび、小さな笑い声がもれた。

 心の底からあふれる歓喜。

 身体全体が、この奇跡を歓迎していた。渇き切っていたのは大地だけではない。

 人々も肌で感じるほど渇いていた。


 こうして緑に囲まれ、初めてそれを自覚する。

 緑とは、これほどに心を穏やかにさせるものなのか。


 驚愕に眼を見開きながらも、フラウワーズ騎士団の面々は、わくわくと踊る心を止められなかった。




「おおおおっ、ここがモルトのお家?」


《さよう。我が子らの棲まう湖にございます》


 千尋の目の前に広がるのは広大な湖。地球で言えば琵琶湖ほどもあろうか。対岸が霞むほどの大きさである。

 その水面は穏やかで、水は美しく透き通り、ゆらゆらと水草の萌える水底を一望出来た。


「綺麗だねーっ、もっと暖かい季節なら泳げたのになぁ」


 ちゃぷちゃぷと水に手を入れてはしゃぐ幼女に、フロンティア騎士団はぎょっと眼を見張る。


「泳ぐって..... は? 水に入ると言う事ですか?」

「漁師でもあるまいし、水に入る? 意味がわかりません。何故?」

「そんな事をしたら、病気になりますよ? 水は冷たいし、身体に良くありません」

「溺れたらどうするんですかっ、泳げる者など、海辺の民ぐらいしかいないのです、危ない事は考えないでくださいっ」


 慌てた顔の騎士達の口々にのぼるアレコレ。


 あ~、忘れてたわ。こういう時代だよね、うん。


 地球の中世でも、泳ぐというのは一般的ではなかった。

 人々の大半は川や海に頭まで潜る事はなく、泳ぐと言う意味すら知らずに人生を終えるような時代だ。

 冷たい=凍える。体温を失うの図式しかないのだろう。もっと端的なイメージでは、溺れて溺死か。


 久々に現代とのギャップを感じ、小人さんは乾いた笑みを浮かべた。


 そういや日本だって、大きな海難事故で修学旅行中の子供らが大量に死ぬまで、水泳という概念が乏しかったんだよなぁ。


 その事故から、日本の義務教育に水泳の授業が盛り込まれるようになったのは有名な話だ。


 久しぶりに前世の益体もない記憶を思い出していた千尋の耳に、モルトの低い声が聞こえた。

 

《我が殉ずる王に、水の禍は起こらぬ。安心召されよ》


 好好爺な眼差しでモルトが頷くと、湖の水面に小さなカエルがいくつも現れる。

 赤、青、黄色、緑..... あらゆる色のカエル達が顔を出し、興味深気に千尋を見つめていた。

 小さいと言っても、初見のカエルがモルトなので、それと比べてである。

 千尋の掌サイズから人間の子供サイズまで。

 色んな大きさのカエル達が姿を現し、湖の畔は一気に賑やかになった。


 荘厳なイメージすら抱ける湖は、今やカエルの合唱状態。ほのぼのとした光景に、思わず顔が緩むフロンティアの一行である。

 通常であれば、カエルの魔物がひしめきあう、絶叫ものの事態なのだが、巨体蜜蜂が蔓延る王宮の面々は、妙に魔物慣れしていた。

 ゆえに恐怖より、漠然とした日常感のが先に立つ。慣れとは怖いものである。

 森の主が知性ある魔物で、むやみやたらに人を襲わないと知っているのも大きいのだろう。

 森と共にあり、主と共存する国特有の余裕だった。


 共にあり、それを良く知る。何事においても重要なことだろう。


 意識せずとも、それを実践しているフロンティアの一行に、モルトは多大な好感を抱いた。


 全ての人々がこのようであれば、何人もの同胞が喪われることも無かっただろうに。


 人々を守ろうと。森を死守せんがために散っていった仲間達。

 

 何故に神々は、我らに言葉を与えて下さらなかったのか。意思の疎通さえ叶えば、こんな惨憺たる有り様にはならなかったものを。


 唯一、言葉を交わせるのは、主らと同じ金色の魔力を持つ、金色の王のみ。


 考えてもせんなき思いを胸に穿ち、モルトは一匹の子供を呼んだ。


 それは鶩の卵くらいな大きさのカエル。薄い緑のカエルは、地球でいうアマガエルのような姿形をしていた。


《クイーンに聞きおよんでおります。従者は小さきモノが良いとのこと。我が子で一番小さく、それでいて力あるのはこの倅。是非ともお連れください》


 紹介されたカエルは元気に飛び出して、千尋の前で胸を張る。


「なにこれ、可愛いっ!!」


 クルクルと喉を鳴らすアマガエルを掌に乗せて、大はしゃぎな小人さん。


 いや、可愛いのは貴女ですよと、生温い眼差しで、その光景を見つめるフロンティア騎士団。


 そしてモルトは、小人さんに一塊の卵を預ける。ウズラ卵程の大きさな卵が卵管に十個ぐらい並んでいた。


《森が枯れかけた時に生まれた卵です。たぶん、この中に次代がおります。どうかクイーンに》


 聞けば、水棲の魔物であるモルトの一族は、枯れると言う危機の際に森を引き継ぐ次代が生まれるのだと言う。

 両性体であり自身で一族を増やせる森の主。その生態は謎に満ちているようだが、千尋は俄に地球世界に通じる類似点を感じていた。


 地球で有名な両性体はナメクジだ。

 彼等は勝手に一人で増えて蔓延る。これの劣化版がカタツムリだ。

 カタツムリは雌雄同体ではないが、種に危機を感じるとナメクジ同様両性体のモノが生まれ、数を増やす。

 似たような感じで、他の生き物も両性体ほどではないにしろ、種の危機を感じると雌の個体が増えると言う。

 子供をなせる個体を増やし、種を維持するための防衛本能なのだと解釈されてはいるが、解明はされていない。


 そういった類似点が主らの生態にある。


《これで御互いの次代が育てば、我々は自由に行き来が出来るようになりましょう》


 自身の次代だけでなく、多種を混ぜる。これは中々に妙案だった。

 同じ種は同じ理由で滅亡してしまう場合が多い。それを回避するのに、多種が共存するのは大事である。

 多種多様であれば、一つの事象にあらゆる側面から対処も出来るし、打開も容易い。

 本来ならば、森に蔓延る多くの魔物達がその役割を果たしていたのだろう。

 しかし、魔力が乏しく、満足に力を発揮出来なかったモルトの森は、危機的状況に陥った。

 これを踏まえ、クイーンは、万一再び同じ状況になっても困窮せぬよう、御互いの次代交換を持ちかけたのだ。


 有無を言わさぬ攻撃に特化した蜜蜂達。魔力が乏しくとも、人間らの無法に耐え抜くほど、守護に特化したカエル達。

 この二つが合わされば、心強いこと間違いなし。


 御近所なんだから、あっても良いよね、こういうの♪


 クスクスと笑う幼女。


 これがまた、後に大騒動を引き起こすのだが、今の小人さんには知るよしもない。


 森を吹き渡る風が、程よい湿り気を帯びて大地を馳せる。


 茫然とするフラウワーズ騎士団。呆れたような顔のフロンティア騎士団。

 

 そのどちらにも共通するのは、柔らかい微笑みだった。


 こうして多くの人々を巻き込み、今日も小人さんは思うがままに我が道を征く♪

 

これでフラウワーズも安泰でしょう。人間が間違わなければww

フラグじゃないてすよ? うん。


既読マークにお星様ひとつ、楽しんで頂けたら、もひとつ下さい♪

      ♪ヽ(´▽`)/

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【書籍化よりも、皆様の感想やレビューが嬉しいワニがいます。  批判や苦情でも、今のネット世界なら相互理解に努められ る。 つくづく良い時代になったものです。  良いことばかりでないのは知っていますが、…
カエルといえばオカリナで嵐の歌を吹いてハートのかけらを貰いたい。 「オレタチヲじゃんぷサセテ頭ノ上ノムシ、食ワセテオクレ!」
カエルは、色んな大きさや色がありますよね〜 小さいのは許せる。 ひとつ情報。琵琶湖は一番広いところは対岸みえません。波もあって塩辛くない海ですよ。見に来てね。
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