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森の恵みと小人さん ~前編~

 えーと、最近の感想に誰視点の話かわからない。視点がコロコロ変わって理解しにくいなどの指摘をうけるのですが....。

 作者視点でございます。

 通常、作者視点で話が進み、時折その場の登場人物の視点や思惑が絡みます。

 作者視点なので全貌も把握しているし、内輪話的なものや、登場人物らの知らない内容も混ざります。

 小説とはそういうものだと思っていたんですが、違うんのかな? ひょっとしてワニがおかしな事やってますか?

 同じ疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思い、欄外に書きます。

 

 この作品は作者視点でございます。

 


《チヒロ様は巡礼はなさらないのですか?》


「へあ? 巡礼?」

 

 思いもよらぬメルダの言葉に、千尋は首を傾げる。


 巡礼、巡礼..... そういや地球にもあったなぁ、聖地巡礼とか。お遍路もそれにあたるかな?


 現代日本では別の意味で多くの巡礼があったが。


 少し遠い眼をする小人さんに、メルダは複雑そうな顔で説明する。


 何故か蜜蜂の機微が感じ取れる、今日この頃。いや、前からか。

 初対面から表情豊かだったよな、メルダは。


 彼女の話によれば、金色の王となったものは、各地の森に向かい、それぞれの森の主と盟約を結ぶのだとか。

 盟約を結んだ森同士は金色の魔力で繋がり、それが完全に環になると、共鳴を起こし、相乗効果で内側が豊かな魔力に満たされるのだという。


「ほへー、そうなん?」

《はい。なので巡礼をお薦めいたします》

「ねぇ、ドルフェン。この国には他にも森はあるん?」

「ございますよ。ここはフロンティア中央に位置しますが、南方のゲシュベリスタと西方のアーダルシアに。あとはこの国ではありませんが、東方の隣国にも国境近い位置に一つありますね」


 言われて、千尋は書物と地図で習った地域を思い出す。

 南方西方は豊かな穀倉地帯だ。特に南方は海にも面しており、豊富な魚介類が特産なのだとか。

 地図で説明され、小人さんが、じゅるりとなったのは致し方無い事だろう。


 日本人に魚介は、馬の鼻面に人参をぶら下げたようなモノである。

 地理の先生がドン引きするほど、ゲシュベリスタに食いついたのは良い思い出。....だよね?


 逆に東方にある隣国、フラウワーズは荒野が多く、道具の先進国として有名だ。

 広陵な大地に多くの険しい山があり、僅かな平地で人々は暮らしている。

 地域的には細長く国が存在し、形が日本に似てるなぁと思ったので良く覚えていた。

 ここが関東平野でしょ? とか脳内補完していたのは秘密だ。

 そんなフラウワーズの名産は鉱石。鉄や金銀は言うに及ばず、輝石や宝石も多く取れる鉱山は、険しい山岳地帯ならではの恵みだろう。

 反面、国力は弱く、技術提携で食料を輸入している危うげな国でもある。


 そんなこんなを思いだしつつ、小人さんは蜜蜂らと一緒に毬栗を拾っていた。

 秋も深まり、豊かな森には多くの恵みが転がっている。


「これが食べられる物とは。存じませんでした」


 うっそだぁー。


 思わず、うへぇあとドルフェンを見上げる小人さん。


 基本、人々は滅多な理由がない限り森には入らない。魔物もいるし、獣もいる。

 特に魔物は人間を見ると問答無用で襲ってくるので、人々の殆どは森に近寄りもしないのだ。

 来るとすれば、依頼を受けた冒険者くらい。


 結果、放置されている森の恵み。なんという事でしょう。


 まあ、確かに、こんなヤバめげな見かけじゃあ、食べられるとは思わないかもな。


 小人さんは苦笑した。


 イガイガの中には甘い栗がある。ここらの生態系は地球とほぼ変わらない。

 木苺や蔓苺。グミなど多くを手に入れて確信した千尋は、他のモノにも手を出し始めた。

 野草や山菜、キノコなどである。

 どれもパッチテストを行ってから、少量を口に含む。含んだまま小一時間ほど放置し、何も起こらなくば飲み込む。

 一日たっても身体に異常が出なかったら合格だ。

 これを幼児な千尋と大人なドルフェンでやれば、まず間違いはないし、大人は平気でも子供は不味いなどの差異もはかれる。


 結果、地球の物と変わらない植物は、全部大丈夫だった。


 いつか痛い目をみるかもしれないが、初めの一歩は誰かがやらなきゃいけない。

 日本の大飢饉で活躍した野草の書物も、作者が直に食べて判断した物らしいし、必要な挑戦よな。


 腕を振り上げる小人さんだが、彼女がそれをやる必要性は全くない。

 採取と説明だけして他の誰かに任せても良さそうなモノだが、そんな事は思い付きもしない、好奇心旺盛な小人さんである。


 そしてそういった危険性に疎いドルフェン。

 

 基本、脳筋な彼は千尋の行動に疑問を持たない。彼女の望むまま、思うままの行動に付き従う。

 護衛としては失格だが、小人さんには、有難い保護者だった。

 

 だから、こうして気ままに森にも来られるし、採取も出来る。


 小人さんが、ドルフェンに屈託ない笑みの一つも向ければ、彼は何だってしてくれるだろう。

 安上がりな従者である。




「よっし、こんなもんだね」


 どっさりと栗を拾い、小人さんは御満悦。


 ドルフェンや蜜蜂達が毬を外してくれたので、あとは帰って調理するだけだった。


 焼き栗、渋皮煮、グラッセ、ペースト。ああ、モンブラン擬きも良いなぁ。


 無意識に緩む口元を抑え、ひょこたん、ひょこたんと踊る小人さん。

 無意識なので歪なステップだが、栗を封じていたドルフェンが愉快そうに眼を細める。


 こんな一幕が見られるから、この方の護衛は辞められない。


 始終、共にいるからこそ目撃出来る、可愛らしい小人さんの姿に至福を感じ、ドルフェンは彼女を抱き上げると、メルダに挨拶して森をあとにした。


「ねぇねぇ、ドルフェンっ、栗ってね、甘くてホクホクしてるんだよ。嬉しいねぇ、沢山あるもの。皆で食べようねぇ」


 身振り手振りを交えて、熱く語る小人さん。


 あああああ、何と御可愛らしい事でしょう。このドルフェン、その笑顔だけで、御腹が一杯でございます。


 口元をニヨニヨさせるドルフェンの眼に映るのは、両手を頬に当てて、むふーんっと微笑み、きゅーっと眼を細める小人さん。


 あまりの可愛さにノックアウトされ、しばし固まるドルフェンを、不思議そうな顔で千尋がペチペチ叩いていた。


 こうしてしばしば固まるドルフェンが、あらゆる所で目撃されるが、その理由を誰も知らず、彼の密かな楽しみは未だに守られている。


 可愛いは正義だった。


 えーと。書籍化決定いたしました。


 ちょいと渋っていたのは、ワニが扶養枠の人間だったからです。主婦(夫?)です。

 配偶者控除の対象なので、すでにお魚屋さんにお勤めしているワニが印税を得る事になると、間違いなく扶養控除を越えます。そうなると、保険や年金、税金など面倒事が羅列するので、仕事先との折り合いもあり、根回しして調べていました。

 結果、扶養を外れても大丈夫となったので、今回の打診をお受けする事にしました。

 娘を嫁に出す気分ですが、皆様、小人さんを可愛がってやってくださいませ。

 

 お気に召されたら、お星様よろしくです。

     ♪ヽ(´▽`)/


 

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自分の知る限りではどこまでパブリックな約束事かは知りませんが故栗本薫大先生が小説道場で解説する所の『小説作法』というものがありまして、それによると小説には一人称視点の書き方と三人称視点の書き方がありま…
漫画のバナー広告で見て興味惹かれたので読み始めました もっと、こう、なんていうか、城の厨房でこっそり活躍する話かと思って読み始めたんですが 大暴れしてて笑いが止まりませんw
本当に可愛くて好きなお話⭐︎
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