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【書籍化・コミカライズ化】 天空の異世界ビストロ店 ~看板娘ソラノが美味しい幸せ届けます~  作者: 佐倉涼@5作書籍3作コミカライズ
続・お店の日常編

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花祭りの話

「忙しいねぇ」


「忙しいなぁ」


「忙しい」


「忙しそうですね」


「そんで午後も忙しくなるだろうな」


 上からマキロン、カウマン、レオ、ソラノ、バッシの言葉だった。現在昼下がりの店内は昼食を食べ終えた客がはけ、大量の洗い物のみが残されている。

 それを必死に洗っているのはレオだった。マキロンはレオが来たことで接客からやや解放されており、ほっと胸を撫で下ろしている。今は座って帳簿をつけていた。レオに仕事を教えるのはソラノの担当だ。雇うと決めたのはソラノとバッシであるから、みっちり教育しないといけない。

 当初の契約通り皿だけ洗ってもらっていても構わないのだが、本人が店に興味を持っているようなので積極的に聞いてくる。ならば教えるのが礼儀というものだ。それに覚えてくれればこちらも助かった。


「やっぱ花祭りが近いからなんですか?」

 

 ソラノは厨房の隅っこで賄いを食べながら尋ねる。本日の賄いはハンバーグ丼だった。ご飯の上にハンバーグを豪快に乗せ、本日のおすすめ前菜で提供する春野菜と温玉を乗っけたスペシャル丼だ。


「おお、そうだ。あれはでかい祭りだからな」


「中心街はもう賑わってるだろうねぇ」


「俺は王都を出てたから四年ぶりだ。懐かしいな!」


「具体的には何をするお祭りなんですか?」


 温玉の黄身部分にスプーンを割り入れる。とろりとした黄色い黄身が溢れ出し、春野菜の上に流れた。口にすればブランド卵ツィギーラの濃厚な味わいが肉肉しいハンバーグにマッチする。温玉とハンバーグは最強の組み合わせ、口の中が幸せだった。


「春の到来を喜ぶ祭りでな。花と緑の都の名にふさわしくこの季節、街には花が咲き乱れるだろ?天然の飾り付けで彩られた中心街では色んな店が活気付く。美しい都を一目見ようと諸外国からの客も来るからなぁ。王城では連日連夜の舞踏会、中心街の広場でも屋台が出たり、楽隊が音楽を奏でてダンスに興じる都の人間でいっぱいだ」


 バッシの言葉にカウマンが頷いた。


「今年は特に盛り上がるぜ。なんせ王国の第七王女様と友好国の第十二王子様の婚約披露があるって噂だからな」


「そんな噂あったんですか?知らなかった・・・っていうが第十二王子ってすごい数ですね」


「市場に行けば色んな噂が流れてる。なんでもお相手の王子様の方が、王女様に熱心に求婚しているという話だ」


「まあ、そんな王女様なんてお目にかかることはないですけどお幸せになるといいですね」


「おうよ。諸国と友好関係を結ぶために政略結婚が必要だとはいえ、そこに愛があるに越したことはないからな!」


 なぜかバッシは王族の婚姻について熱く語っていた。現在絶賛独身の身のバッシであるからして、そんな雲の上の話より自分のお相手を見つけた方がいいのではという気がするが、それはあまりにも余計なお世話なので言わないでおくことにした。


「あと、このお祭り中は花冠とブートニアがいたる所で売っているさね。友達やカップルで交換しあったりするんだよ。アタシも若い頃はうちの人と毎年出向いて、似合う花をお互いに選んだものでねぇ」


 マキロンが昔を思い出しながら語る。それは何とも素敵な催しだ。考えるとちょっとワクワクした。


「だから今週から花祭りが終わるまでは店のおすすめメニューも春っぽさをふんだんに取り入れている」


 バッシが自信ありげに言う。ソラノは本日のメニューを思い出した。


本日のおすすめ

前菜:春野菜の温玉サラダ

スープ:新玉ねぎのオニオングラタンスープ

魚料理:アクアパッツァ

肉料理:ロールキャベツ

デザート:タルトフレーズ


「確かに春っぽい」


 前菜には春野菜と銘打っているし、その後も新玉ねぎに、ロールキャベツ、タルトフレーズときている。


「デザートがおすすめで書かれているのは珍しいですね」


「おうよ。いい苺があったもんでな」


「てゆーかソラノはよ、何で一年も住んでいながら祭りの存在すら知らないんだよ」


「え・・・だって去年のこの時期はサンドイッチ走って売るのに必死だったんだもん」


「走って・・・?」


 レオが怪訝な顔をする。彼はついこの間店にきたばかりなのでこの店がどういう経緯で今の状態になっているのかを知らない。ソラノは店の前、ターミナルの方を指差す。


「お店の改装資金を貯めるためにサンドイッチ売ってたんだけど、寝坊して走ってる冒険者に近づいていってサンドイッチ売ってたんだよね」


「お前そんな事してたの?正気?」


「正気だよ。おかげでサンドイッチは売れたしお金も貯まったし言うことなしだと思わない?」


「だからあんなに足速かったのか。フツーの女の店員だと思ってたのに」


 レオが皿を洗いながらブツブツと言っている。彼は食い逃げしようとしたところをソラノに確保されたのが納得いかなかったらしい。


「ま、そんなわけで花祭りはもうすぐそこに迫っている。旅行目的で空港が混めばこの店も混むだろう。気合い入れていこうや」


「おう」


「はいよ」


「おお」


「はーい」


 バッシの言葉に四人は一様に頷いた。


 季節はすっかり春となり、王都では今が盛りと緑が溢れ花が咲き乱れていた。


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