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【書籍化・コミカライズ化】 天空の異世界ビストロ店 ~看板娘ソラノが美味しい幸せ届けます~  作者: 佐倉涼@5作書籍3作コミカライズ
その後の彼ら編

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〈コミカライズ4巻記念SS〉バッシと歌と暴走牛

「ー__ー ……ーー♪ …ーー♪♪」


 深夜の空港、第1ターミナルにて、バシッバシッと肉を殴打する音とともにご機嫌な鼻歌が聞こえてくる。

 世界一の交通量を誇るグランドゥール空港とはいえ、夜間ともなれば飛行船の便は減り、往来するのは冒険者や貨物輸送を請け合う運搬人になる。必然、昼に比べるとやや治安は悪くなりがちだ。


「ー__ー ♪ ーー…ーー♪♪」


 バシッ、バシッ、バァン、バァン。


 この鼻歌に合わせた規則的な殴打音は、たまたま夜間便に乗り込もうとした貴族を捕まえ、人目につかない通路の隅へ引きずり込み、カツアゲをしている柄の悪い冒険者の仕業……というわけではない。

 音は、第1ターミナルにある一軒の店内から聞こえてくる。

 その店は小さいながら瀟洒な作りで、ガラス張りの窓に緑の蔦が生い茂り、明るく開放的な雰囲気を醸し出している。

 とはいえ今は閉店時間。店の特徴的な大きな窓にはすべてスクリーンが降ろされている。

 そんな店内の厨房では今、大柄な牛人族の男が、巨大な肉塊に向かってハンマーを振り下ろしていた。


「ーーどんなに硬い肉だろうと、俺の腕にかかれば絶品料理に大変身♪」

「バッシさん、ご機嫌ですね」

「おうともよ、ソラノちゃん。暴走牛の肉に大事なのは、叩いて叩いて叩きまくって柔かくしてやることだぜ!」

「なるほど……」


 今、バッシは、閉店後の店内にて明日の仕込みをしているところだった。

 バッシの鍛え上げた右腕から繰り出される強烈な一撃により、暴走牛は見る見るうちに平たくなっていく。恐ろしいほどの攻撃力だ。まるで親の仇であるかのように叩き込まれる打撃技は、ソラノの腕では到底真似できない。


(それにしても……)


 ソラノは客席側で箒を握りしめたまま、厨房にいるバッシの鼻歌に耳を傾ける。

 バッシは体も大きいが声も大きいので、殴打音に混じっての鼻歌がはっきりと聞こえてくるのだが。


(バッシさん、歌…………あんまり上手くないんだなぁ)


 バッシは料理が出来て性格も良く、最近ではクララさんという恋人もできた。ソラノにとって良き師匠であり共に店で働く仲間でもある、尊敬できる人物である。

 そんなバッシをパーフェクトだと思っていたソラノだが、如何せん彼は音痴だった。

 普段、深く渋みのある声は聞いていて心地よく安心感があるが、今ではただの騒音だ。

 しかしバッシは己のことを音痴とは思っていないようだし、大変気持ちよさそうに歌っているので、指摘するのも野暮だろう。

 ここは我慢、我慢だ。

 ぐっと堪えながら掃除の続きをするソラノ。

 すると、皿洗いを終えたレオが、元気に言った。


「よおし、皿洗い終わったぜ! 俺も肉の仕込み手伝う!」

「おぉ、よろしく頼む!」


 そうしてレオは、塊の肉を前にしてバッシと同じようにハンマーを振り下ろし始めた。

 レオは元冒険者なので腕力がある。 ハンマーを通じてぶち込まれる攻撃技は、なかなかの迫力があった。これならば肉はあっという間に繊維がほぐれて柔らかくなるだろう。


「「♪嫌われ者の暴走牛も、人気者にしてやるぜ♪」」


(なんかレオ君まで歌い出した)


 二人は全く同じタイミングで肉を叩きながら、ニコニコと歌っている。

 ちなみにレオも歌があまり上手くない。

 肉叩きの音をベースに不協和音を奏でる二人。

 しかし二人ともとても楽しそうで、それを見ているとなんだかソラノまでも。


(私も歌いたくなってきたな)


 類は友を呼ぶものだし、この店の面々は似た者同士が多い。

 ソラノは箒を片手に、合唱に参加することにした。


「「「♪ヴェスティビュールの料理は、どんな店にも負けない美味さ♪」」」


 上手いとか下手とか関係ない。ようは楽しければいい。

 そして料理が美味しければいいのだ。

 三人は深夜に朗々と歌いながら、明くる日の営業に備え、そしてーー。


「ねえ、店の中からご機嫌に歌いながら人を殴る音が聞こえるって通報が来たんだけど」

「「「!!!」」」


 店の扉が叩かれて、入ってきたのはグランドゥール空港の治安を担う人物、デルイであった。鮮やかなピンクの髪を揺らし、困惑顔の彼を見て固まる三人。


「ち、違う、誤解だ!」

「俺たちは明日店で使う肉を叩いていただけだ!」

「そうですよ、人なんて殴ってません!」


 三人は誤解を解くべく必死で状況を説明した。デルイは、バッシとレオが掲げる平たくなった肉を見て言う。


「まあ、そんなとこだろうと思ってたけど。仕込み、がんばって」


 問題がないことを見てとったデルイが店から出ていく。三人は息をついた。


「ふぅ、危なかったな……」

「もうちょっと小さい声で歌うか……」

「ついつい盛り上がってしまいましたね……」


 反省三人は先ほどよりも小さい声で歌いながら、仕込みと掃除に励んだ。

 なお、バッシとレオが叩きに叩いた暴走肉の肉は、翌日大変美味しいビーフシチューとローストビーフに生まれ変わり、お客に大人気となったのだった。


「アンタ、仕込みしながら歌う癖まだ治ってなかったんだねぇ」

「音痴なんだからほどほどにしろよ」

「お袋、親父!?」


 両親からの容赦ない指摘に、バッシはちょっぴり心が傷ついたという。


「バッシさん、大事なのは楽しいと思う気持ちですよ!」

「俺はバッシさんの歌、好きだぜ!」

「ありがとう、ソラノちゃん、レオ……!」


コミカライズ4巻、5/8(金)発売予定です。

おかげさまで累計12万部を突破したそうです。ありがとうございます。

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作品存続のためにも、これからもよろしくお願いします。

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i595023
― 新着の感想 ―
 楽しい職場、旨い賄い、頼もしい仲間。なんの問題があるんだ( •̀ᾥ•́)(←音痴)
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