act.82 お悩みモニカちゃん⑥
外へ出ると言うのに、全く気にせず下着姿で堂々とイグナールの前を横切るヴィクトリア。眠っているとはいえ、モニカにそんな真似は出来ない。よっぽど自分に自信があるのか、はたまたイグナールの事など、意に介していないのか……
そんなヴィクトリアを見ながら、手ごろな木の棒に油を染み込ませた布を巻いて松明を作るモニカ。そしてイグナールとマキナがいる仮拠点から少し離れたところで、程よく開けた場所を見つけた。
そこでヴィクトリアが三方を土の壁で区切っただけの簡単な浴室を作ってくれる。丁寧に松明を設置できる場所も設けてくれている。あんな小屋でさえ作ってしまう彼女からすると朝飯前であろう。土属性魔法は主に魔力を流し込んだ土を操る魔法が多い。
その気になれば、炎魔法や水魔法の様に自ら生み出すこともできるのかもしれないが、広い湖や海上でないのであればそんな必要はない。主流な用途としては畑仕事や土塊の人形ゴーレムの作成である。
旅人であるモニカには畑を作る必要はないし、ゴーレムの作成と操作に関しては魔石の魔力では心もとない上に、センスや魔力量以上に作成の経験値がものを言う。なのでモニカも知識としては知っているだけの代物だった。
しかし、ヴィクトリアが見せたような旅での生活を豊かにする使い方があるのならば、少し学んでみてもいいかもしれない。さすがにあんな小屋を作ってしまうのは無理だろうが……
「『我に眠りし力よ、我が意思に従え』『揺蕩う水よ、形を成し顕現せよ』」
モニカは簡易浴室の中に巨大な水弾を作り出す。ヴィクトリアに呼びかけた水浴びとはこのことだ。
「ほう、モニカは水属性の魔法使いだったのか」
関心したような口ぶりでモニカの作り出した水弾を眺めるヴィクトリア。
「それでは世話になろうかのう。見つけた川が小さかったからのう。今日は諦めとったよ」
ヴィクトリアは着けているビスチェとパンツを外し、森の中で全裸となった。壁の上部に取り付けた松明の灯りに照らされた彼女の裸体は素直に美しいと感じた。ドレスや下着で装飾された彼女も綺麗だったが、一糸纏わぬ姿も絵になる。
モニカは書物で読んだ知識しかないが、美しく長命だと言う森の守り手、ヴィクトリアがエルフだと言われても頷いてしまいそうだ。
「さぁ、何をしておる。せっかくじゃ裸の付き合いといこうではないか」
そんなヴィクトリアの裸体を見た後に裸を晒すのはとても恥ずかしいが言い出しっぺはモニカなので逃げ出すわけにはいかない。モニカは意を決して衣服を脱ぎ始める。




