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act.75 自立型警備ゴーレム


 取れたての魚と新鮮なウサギの肉――荷物運びはイグナール一人――を持って、モニカやマキナが待つベースに戻った。彼女達は野営の準備として、たき火と木を輪切りにした椅子を四つ用意して待っていた。


 マキナが手ごろな倒木を解体し、モニカが魔法で水分を抜いて薪にする。火を付けるのには炎属性の魔力を宿した魔石を使う。いつもそんな食卓を彩るのは硬いパンと塩辛い干し肉だが今日は違う。


「何々それ! すごいじゃないイグナール!」


 瞳を輝かせモニカがイグナールの持った荷物を見る。これを得るのに自分が貢献出来たのはせいぜい帰りの荷物運びくらいで、ヴィクトリアが全てを成したと言ってもいい。


 にもかかわらず、真っ先に称賛の言葉を貰って少し居心地の悪さを感じるイグナール。


「いや、これは全部ヴィクトリアが獲ったものだ。狩りが得意と言うのは本当だった」


 彼女がいかにして獲物を取ったかをモニカに話してやると、尊敬の眼差しをヴィクトリアに向ける。


「ヴィクトリアすごーい!」

「褒めてもこれ以上なんもでんぞ? それに狩りなんぞ、何よりも経験がものを言うもんじゃ。一朝一夕でこなされては狩人が泣くというものじゃ」


 ヴィクトリアはイグナールを気遣い、少しフォローを入れてくれたのだろうか。まぁどれだけの経験を積んだ所で彼女のようになれるとは思えないが……


 その後、魚とウサギの肉をたき火であぶり、マキナを除く三人で全てを平らげた。久々に膨れた腹を抑えながら、食事の余韻に浸るイグナールとモニカ。食欲を満たした後は、心地よい睡眠欲に襲われる。


 たき火を見ながらコックリコックリと頭を上下に揺らし始めるモニカ。それを見てヴィクトリアが動き出した。


「さて、そろそろ寝るとするかのう」

「ああ、モニカと先に眠ってくれ。火の番と見張りは俺とマキナがやっておく」

「それではそうさせて貰おう。しかし、イグナールも眠ったほうがよいぞ。見張りは(わらわ)が何とかしよう」


 彼女はそう言うとスカートを捲りあげる。その光景にモニカがギョっとて目を見開きヴィクトリアを凝視する。一応のマナーとして――ヴィクトリアは全く気にしないだろうが――イグナールは目を逸らした。


「『我に眠りし力よ、我が意思に従え』『母なる大地よ、我に守護を与えたまえ』クリエイト・ゴーレム」


 魔法の詠唱でもういいだろうとヴィクトリアに振り返ったイグナール。彼女の手から小さな魔石――透明感のある黄褐色――が零れ落ちた。それはまるで水に落ちるように土の中へ落ちて行った。


 しばらくするとその地面が盛り上がり、形を成していく。これがヴィクトリアが話していた自立型のゴーレム作成なのだろう。人の形となった魔石入りの土塊に周囲の警戒を命令するとのそのそと森の中に入って行く。


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