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act.4 両親は感覚派


 モニカがイグナールに対して行った治療は、魔力を生命力に変換して自己治癒力を極限まで高め癒す方法だ。元々は難病などで生命力が減少している者や、瀕死の人間の応急処置として使う魔法であり。瀕死の人間を完治させるような奇跡といった類の代物ではない。


 両親を凌ぐ常軌を逸した魔力量を誇るイグナールだからこそ起こった必然の奇跡である。そんな彼ではあるが、両親から属性は引き継ぐことがなかった。


 通常、生き物は親の世代から優れた方の属性を引き継ぎ生まれてくる。だが稀に、イグナールのように無属性で生まれてくる者がいる。原因には諸説あり、両親の属性が相反(あいはん)する

ためだとか、二人の力が拮抗しているためだとか……今だ原因の究明には至っていない。


 そもそも生まれてすぐ無属性だったとしても後天的に付与されることが多いからだ。


 だからイグナール自身や両親、そして周りの人間も心配はしていなかった。パーティへと誘った勇者ディルクも、旅の中で目覚めてくれればと当時15歳だったイグナールの将来性を買って誘ったのだ。幼馴染のモニカだけが属性の発現が遅いイグナールを心配し、そして無理に旅へ同行することにした。


 結局その2年間の旅でイグナールの才能が開花することはなく、己が身を守るための剣術を身に着けただけだったのだが……


「さて早速試してみるか!」


 意気揚々と右手を開き、前方へと向け、魔法を放つ体制を取るイグナール。数秒間その体制のまま固まり、沈黙が流れる。


「それで、魔法ってどう使うんだ?」

「はぁ……」


 彼の言葉に大きなため息を漏らすモニカ。無属性だったイグナールでも座学での知識はあると思っていた。名実ともに彼の両親は最強と謳われる魔法使いなのだ。


「イグナールのお父様もお母様も何も教えてくれなったの?」

「いや、教わったことはあるんだけど、全然わからなくてさ……」


 モニカは昔イグナールの母親から護身用の攻撃用水魔法を教わったことがあり、その時のことを思い出していた。


「アクアランスはね、こう水がシュッと鋭いイメージで、それをバビュン! と放つ感じで――」


 優れた魔法使いが、優れた師になる道理はない。勿論魔法を扱うにおいて感覚や想像力は大きく作用する部分ではあるものの、最強と呼ばれるだけあって常人では理解するのが難しい感覚を持っているようだ。





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