act.22 嬉し、恥ずかしイベント
何がモニカの気に障ったのかがわからないイグナール。ただ、その笑みの中に隠された得体の知れない怒りには、逆らわない方が賢明であると判断する。
「そ、それでモーニカさん……彼女、えっとマキナさんはどういうお方なんでしょう? 俺の貞操を奪い去ったと思えば御主人様と言ってきて全く意味がわからないのですが」
「なんか気持ち悪いんだけど……まぁいいわ、イグナールが眠っている間に、マキナから聞いた話を聞かせてあげる」
イグナール、モニカ、マキナは焚火の周りに集まる。
「モーニカ様にはすでに説明させて頂いたのですが、マスターのためにもう一度お話しさせて頂きます」
マキナはモニカに一度目配せし、話を続ける。
「私は対魔王討伐のために製造された強襲型オートマトン、識別名マキナでございます。研究所内にて出撃準備をすませ待機していたのですが……情勢は大きく変わってしまったようです」
「彼女は失われた古代技術で作られた、自分の意志を持った人形……それがマキナ」
理解しきれないイグナールにモニカの補足が入る。
「古代技術……それって遺跡でたまに見つかるアーティファクトと同じってことなのか?」
「そうよ」
真剣な表情で語るモニカ。嘘や冗談の類でないことは明白ではあるが、イグナールはそんなすんなりとわかったとは言えない。それはマキナが――
「いや、どう見ても人間だぜ? ナニがとは言えないが……アレはどう考えても人間だった」
回復した記憶を呼び起こし、イグナールは思い出す。
「信じられないのは無理はないよね。私だってあれを見るまでは全然信じてなかったんだし。ねぇマキナ、イグナールにも見せてあげて」
「はい」
マキナはモニカの言葉に二つ返事で従う。そして彼女はおもむろに白いエプロンを外し、黒のワンピースに手を掛けた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
その突飛な行動を途中まで静観していたイグナールだったが、ようやく制止をかける。2年間、旅を出て成長したとはいえ、彼は17歳……思春期真っただ中の男子である。興味をそそられるのは当然だが、まだ心の準備が出来ていない。
得体の知れない女性にファーストキスを奪われ、清純な乙女のように動揺していたが、彼もまた男子と言うことだ。
「よし! いいぞ」
深呼吸をして先程よりも目をカッと開き、待機する。視界の端にジト目で、イグナールを見つめるモニカの視線を意にも介さずマキナを見つめる。いや、マキナの服の上からでもわかる程に膨らんだ胸を見つめる。
彼女は前にあるボタンを外し始めた。3つほどのボタンを外したところで、それは現れた。
「……え?」
イグナールが目にしたのは、胸の谷間の上に輝く球体だった。誰かが手を加えないとあり得ないほど綺麗な球体であり、マキナの握り拳ほどのサイズのそれは半分以上、体にめり込んでいる。一体化していると言ってもいい。




