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02.

『何か問題が?』アルマカンは不服面。

「いいですか」中村はアルマカンの眼を見据えつつ、「存在が在ると仮定します。そこに光を当てます。何ができます?」

『影ではないのか?』アルマカンは手を打って、『おぉそうそう、その影がまた闇になって困っておっての』

「当たり前です」中村の声が一段低くなる。「都合のいい面だけ追求してどうするんですか!?」

『何やら初手から手厳しいの』困り顔のアルマカン。『悪い芽を摘まねば破綻するだけではないか』

「逆です」中村が突っ込む。「都合とか善悪とかって〈あなたの都合〉でしょう?」

『いかんのか?』アルマカンが素朴に首を傾げてみせる。

「いけません」押す中村。「そもそも〈あなたの都合〉の判断基準って何なんです?」

『決まっておる』アルマカンが胸を張る。『神に従順、つまりは信仰に満ちた平和な世界じゃ』

「はい落第」断言。

『厳しい?!』

「それってもしかして、」中村が眼を細めた。「盛大に事故りませんでした?」


『……見てきたかのように申すのぉ……』感心というより引きつり半分でアルマカン。『いや確かに隕石とか火山とかちょっとした偶発事故で……』

「やっぱり」対する中村は得心顔。

『だからの、』アルマカンが食い下がる。『その都度時間をちょっとばかり逆行……』

「ダメ押し」即答。

『ダメ?!』情けなくアルマカン。

「それって、」中村が指を一本立てて、「事故が幾何級数的に増えませんでした?」

『ぬぅ……確かに……』アルマカンが胸を押さえつつ、『で、では、最初の助言は?』

「まず2つ」中村が指をもう一本。「いいですか? これ最重要ですよ」

『ぬうぅ……』アルマカンが唇を噛んで、『いやいやこれも成功のため成功のため……』

「ひとつ、」中村は指を1本折って、「何人たりとも時間を遡ってはなりません」

『な、な、な……』アルマカンは窒息気味に、『それでは失敗を修正……』

「だから、」押し込む中村。「後出しで都合よく修正しようって魂胆がいかんのです」

『……』アルマカンからは唸りも出ない。『……で、ではどうしろと?』

「小手先でいじくるから破綻するんですよ」中村は指を小さく振って、「ここは大元を押さえないと」


『大元とな!?』アルマカンに喜色が兆す。『で、では! そこさえ押さえれば!』

「はいがっつかない」中村の声は揺るがない。「だからって欲を出したら盛大にコケますよ」

『うぅ……』アルマカンが涙目で、『……では2つ目の助言を聞けば……』

「その前に、」中村が刺して釘。「なぜ時間を遡っちゃいけないか、です」

『まま待った……心の準備が……』アルマカンは眉根にシワを寄せつつ、『……うむ、聞こう。どういうわけかな?』

「大原則です」中村は噛んで含めるように、「起こり得ることは、いつか必ず起こるからです。ハインリッヒの法則をご存知で?」

『何じゃヒヤリ・ハットの話かの?』アルマカンの声がすっぽ抜ける。『〈1つの重大事故の陰には29の軽事故、さらにその陰には300の異常が存在する〉というヤツじゃな』

「そう、それをちょっと解釈し直しましょうか」中村が頷き一つ、「〈起こり得ることは、いつか必ず発生する。たとえ確率がいくら低くあろうとも〉――間違ってませんよね?」

『しかし、』アルマカンが食い下がる。『万が一の確率にそこまで……』

「例えば56億7千万回の中だったら」中村はむしろ穏やかに、「〈万が一の事態〉は56万7千回起こる道理ですが何か?」

『ぐぅ……』

「いやそこ〈グゥの音〉も出しちゃいけませんって」中村は一分たりとも隙を見せない。「滅亡の要因なんて掃いて捨てるほど転がってるんです。いちいち対処なんてできるほどお暇ですか?」

『神なのに?』イジケ気味にアルマカン。『この世界じゃ創造主なんよ?』

「偉そうなことは矛盾を克服してからどうぞ」にべもなく中村。「時間遡航なんてタイム・パラドックスの温床じゃないですか。一発アウトの裏技なんて害にしかなりませんよ」

『ぐぐぐ……』アルマカンは拳を震わせつつ、『……承知! 時間遡航の裏技は封印しよう!』

「完全撤去」断言。

『……ダメ?』アルマカンが中村の眼を覗き込む。

「ダメです」真っ向正面、睨み返して中村。

『はあぁ~……』深くうなだれてアルマカン。『解った! 時間遡航は完全撤去する!』

「ご英断です」

『しかしじゃ』アルマカンが上げた首を傾げつつ、『そうしたら闇やら事故やらに対処できなくなるではないか?』

「そこで2つめです」中村が示して指2本。「対処、しないんですよ」

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