魔法の扱いがトイチよりも苦手なマオの魔法の熟練度はトイチの魔法の熟練度には遠く及ばない。
苦手な魔法ではあるが、其でもマオは回復魔法の熟練度だけは頑張って上げていたのだ。
勿論、素質のない〈 ノマ 〉のマオが1人で魔法の熟練度を上げるのは難しい為、頼りになるニュイ人にんリ形かにコツを教おしえてもらいながらだ。
亜あ人じん種しゅのウェイターに包ほう帯たいを取とってもらったマオは、背せの高たかい亜あ人じん種しゅにしゃがんでもらい、回かい復ふくヒール魔ま法ほうマジックを発はつ動どうさせた。
眩まばゆくて暖あたたかい光ひかりがウェイターの怪け我がを癒いやしていく。
怪け我がが癒いやされると、傷きず口ぐちはみるみる内うちに塞ふさがった。
マオやトイチ八賢悳壹が使つかう回かい復ふくヒール魔ま法ほうマジックは、身しん体たいからだに元もと々もと備そなわっている免めん疫えき力りょくや治ち癒ゆ力りょく等などの能のう力りょくを限げん界かい迄まで高たかめる効こう果かがあるだけで、病やまいを完かん治ちさせる万ばん能のうな回かい復ふくヒール魔ま法ほうマジックではない。
出で来きるのは、小しょう怪け我が 〜 大おお怪け我がを癒いやし、傷きず口ぐちを塞ふさぐ手て伝つだいをしたり、火傷やけどや霜しも焼やけけ…等などの治ち療りょうも可か能のうだ。
無なくしてしまった身しん体たいからだの一いち部ぶを復ふっ活かつさせる様ような奇き蹟せき的てきな効こう果かは期き待たい出で来きない。
セロフィートならば、身しん体たいからだの一いち部ぶを〈 テ原げん質しつフの源みなもと 〉で構こう成せいし、神しん経けいをくっ付つける事ことは可か能のうだろうが、回かい復ふくヒール魔ま法ほうマジックで出で来きるのは、痛いたみを和やわらげて、血けつ液えきの出しゅっ血けつを止とめる手て助だすけをするぐらいだ。
マオの回かい復ふくヒール魔ま法ほうマジックでウェイターの怪け我がは治なおり、傷きず口ぐちも塞ふさがり、殴なぐられたり、蹴けられて出で来きた痣あざも綺き麗れいに消きえていた。
ウェイター本ほん人にんも十じゅう分ぶんに驚おどろいているが、一いち部ぶ始し終じゅうを見みていた店てん主しゅもウェイトレスも驚きょう愕がくしていた。
何なにに対たいして驚きょう愕がくしていたのかと言いうと、人にん間げんが奴ど隷れいドンクラに回かい復ふくヒール魔ま法ほうマジックを使つかう事ことに対たいしてだ。
人にん間げんが奴ど隷れいドンクラに回かい復ふくヒール魔ま法ほうマジックを惜おしみ無なく使つかう光こう景けいを見みた事ことがないのだ。
更さらに回かい復ふくヒール魔ま法ほうマジックの威い力りょくと範はん囲いだ。
≪ アウトラノベ大たい陸りく ≫にも魔ま法ほうマジックを使つかえる素そ質しつ持もちは居いるには居いるが、マオ程ほどに高こう度どな回かい復ふくヒール魔ま法ほうマジックを扱あつかえる魔ま法ほうウィ使つかいッズは居いない筈はずだ。
ウェイターを治ち療りょうしてくれたマオに対たいして、店てん主しゅは深ふか々ぶかと頭あたまを下さげた。
マオに「 謝しゃ礼れいを支し払はらいたい 」と申もうし出でたが、マオは店てん主しゅの申もうし出でを丁てい重ちょうに断ことわった。
然しかし、店てん主しゅは引ひき下さがらない。
困こまってしまったマオは、頼たよりになるニ器きュイ人にんリ形かに助たすけを求もとめる事ことにした。
ニ器きュイ人にんリ形かに “ 任まかせる ” と言いうか、 “ 丸まる投なげした ” と言いうべきか……。
ニ器きュイ人にんリ形かに委ゆだねた事ことで、謝しゃ礼れいの件けんの話はなしに関かんしては穏おん便びんに纏まとまり、マオは心こころの中なかで胸むねを撫なで下おろした。
ニ器きュイ人にんリ形かのお蔭かげで店てん主しゅの話はなしは無ぶ事じに終おわり、其その日ひの話はなし合あいは、お開ひらきになった。
マオとニ器きュイ人にんリ形かは、客きゃく間まから出でると亜あ人じん種しゅのウェイトレスに案あん内ないされて、裏うら口ぐちから飲いんレレ食しょくリッ店てんトンを出でたのだった。
裏うら口ぐち迄まで案あん内ないをして、見み送おくってくれた亜あ人じん種しゅのウェイトレスは、名な前まえを教おしえてくれた。
ウェイトレスの名な前まえは “ クレレ ” と言いうらしい。
“ クレレ ” は両りょう親しんから名な付づけられた名な前まえではなく、主あるじとなった店てん主しゅの奴ど隷れいドンクラになった時ときに与あたえられた名な前まえだと言いう。
奴ど隷れいドンクラは両りょう親しんから名な付づけて貰もらえず、奴ど隷れい商しょう人にんから番ばん号ごうを付つけられるそうだ。
買かわれた時ときに主あるじから名な前まえを与あたえられるのは、契けい約やくの様ようなものらしい。