亜人種のウェイターは自分の仕出かした行為に驚きを隠せないでいた。
其の場に立ち尽くしたまま、茫然としていたウェイターは、1人の男に顔面を殴られた。
殴られた弾みでウェイターの手から持っていた丸いお盆が離れ、何処かへ飛んで行った。
殴られたウェイターも弾みで床に尻餅を付いた。
ウェイターが床に倒れた矢先、男達は一斉にウェイターを蹴り始めた。
散々ウェイターを蹴り付けた後、無理矢理ウェイターを立たせた男達は、ウェイターをサンドバッグ代わりに殴り始めた。
亜人種のウェイトレスは自分を助けてくれたウェイターがサンドバッグにされている光景を全身を震わせながら、泣きながら見ている事しか出来ない。
?
「 あのさ?
一寸いいかな? 」
亜人種のウェイターを殴っている男達に声を掛けたのは、背が低く小柄で珍しい黒髪の少年──マオ・ユーグナルだった。
亜人種のウェイターを殴っていた男は、背の低い少年を追い払う為に乱暴な口調で「 ガキは隅っこでママのミルクでも飲んでろ! 」と言う。
マオ
「 謝ってほしいんだけど。
アンタ達が台無しにしたオレの料理代も弁償してほしいんだ。
してくれるよな? 」
男に追い払われたマオは、其の場を離れる事はせず、ウェイターを殴ろうとした男の腕を掴んで止めると、そう言った。
男達は邪魔しに入って来た黒髪の少年に目を向ける。
男達は黒髪の少年見下ろす形になり、マオは男達を見上げる形になった。
先程迄威勢よくウェイターをサンドバッグにしていた男達が一斉に黙り込んでいる。
自分達を見上げている黒髪の少年の目を直視した男達の身体は硬直していた。
マオから発せられる覇気と殺気が混ざった気を直に当てられた男達の心は恐怖感に支配された。
生命の危険を感じ取った男達の全身から汗が大量に溢れ出て来ており、背中はビショビショになっていた。
世界最強の生物と言われているドラゴンに睨まれている蛙の様な状況に追い込まれている男達へ、マオは再度話し掛ける。
マオ
「 オレの料理を台無しにしたんだからさ、誠意を込めて謝ってくれるよな?
弁償もしてくれるよな? 」
マオに再度問われた男達は、何度も何度も生唾を飲み込むと、静かにしゃがみ始めると、床に両膝を付いて頭を深々と下げ始めた。
床に頭を擦り付けながら、必死に命乞いを始めた男達は持っていた硬貨の入った布袋をマオの前に出すと、「 命だけは…… 」と出ない声を懸命に絞り出し、蚊の鳴く様な弱々しくも情けない声で命乞いをした。
マオ
「 ウェイターさん、台無しになった料理代、全部で幾らするの? 」
ウェイター
「 はっはい!
全部で49.842Bsになります 」
マオに聞かれた亜人種のウェイターは、殴られていたウェイターとは違う亜人種だ。
殴られていたウェイターは犬耳っぽいが、黒髪の少年が声を掛けたウェイターは兎耳っぽいからだ。
マオ
「 ニュイリ、足りてるかな? 」
器人形:ニュイリ
「 んーーーとね~~、全然足りないよー、パパ 」
マオから手渡された布袋の中に入っている硬貨を数えたニュイ人にんリ形かは事じ実じつをマオへ伝つたえた。
マオ
「 足たりない? 」
器人形:ニュイリ
「 うん。
49.842Bsバース必ひつ要ようなのに、袋ふくろの中なかには2.087Bsバースしか入はいってないもん 」
マオ
「 はぁあ?
──おい、どう言いう事ことだよ?
47.755Bsバースも足たりないじゃないか!
然しかも、こんな少すくない金きん額がくで何なにを食たべに来きたんだよ?
2.087Bsバースで7人にん分ぶんの料りょう理り代だいなんて払はらえないだろ! 」