異世界で豪邸を〜追放されて森で暮らしてたら家族が増えました〜
短編です。やっと満足いく仕上がりになった。でも、30日目までやっと行きました。長かった……………
ザクッ!ザクッ! ドゴッ! シュアーッ!
………よーし、こんなもんだろ。偶々良い感じの洞窟があってホントに助かった。これならそれなりに暮らしていけるだろ。
……………さてと…… それじゃあ、早速日記を書いていくか。
では改めて……異世界生活1日目。 俺こと土代 柱は今日から日記をつけることにした。何故か知らないが、今日使う予定だったまっさらなノートもあることだし。いや、それよりもまずはどうして異世界で暮らすことになったのか順を追って説明していかねばなるまい……
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今から5時間くらい前に遡る。朝のホームルームが終わり、1時間目が始まる前の休み時間、俺は授業で使うノートを取り出していつものように机に突っ伏してシエスタしてたんだ。……シエスタって昼寝って意味だから少し違うか。
まぁ、とにかくそんな時に突然俺を含むクラス全体が魔法陣と一緒に大きな光に飲み込まれた。お陰で眠気は完全に吹っ飛んじまった。そんで次にはなんか随分と偉そうな感じの肥満体の王様が玉座に座ってた。俺はその時に所謂“異世界転移”ってやつに巻き込まれたんだなってことを悟った。
しかしまあ、異世界転移ってのは物語では良いけど、現実でしかも自分に起こるとなるとなんとも面倒なものなんだな。しかも、皆パニックになってギャーギャー喧しいのなんの。鼓膜が破れそうだ。
話によると、俺たちを呼んだのはなんでも魔王軍と戦ってほしいとのことだ。つまり、魔王軍対策の兵器として呼ばれたわけだ、俺たちは。
こういう召喚ものを見てるといつも思うんだけどさ。なんで毎回毎回何の力もない非力な学生を呼び出すんだ?日本でも自衛隊とかいるんだから、そういうのを呼べばいいのに。
......で話を戻すけど、別の世界から召喚された人間は必ず強力なスキル(能力)が得られるらしい。だからこそそのスキルを使って魔王軍と戦ってほしいとのことだ。クラスメイトたちも最初はパニクっていたが、やはり流石は憧れの異世界転移、しかもチート付きと分かったら大分落ち着き、寧ろ興奮しだした。
次に全員分のスキル確認が行われた。ホント能力は色々だ。剣術、槍術、火魔法、大地魔法、投擲、体術…………とまぁ、実戦向けの能力が超人並みだ。
そして、俺の番になった。俺の能力は“リフォーム”とのことだ。なんでも、どんな劣悪な環境下の空間でも途端に快適な生活を送れる空間にすることが出来るらしい。つまり俺の能力はとてもじゃないが実戦向けではない。
んで結局、俺は戦力外ということで城から追い出される羽目になった。でもこの能力って生活の補助にはなるから全く無駄なわけじゃないと思うけどな……… あの王様(笑)目腐ってんのかな? ちなみにクラスメイトたちは俺を馬鹿にしたような目で俺を見ていた。
.......ちっ! 薄情な連中だな。仮にも同じクラスメイトなんだから庇ってくれてもいいのに。まあ、俺はクラスメイトの名前を殆ど知らないくらい誰一人まともに関わってないから無理もないか。何人かは俺のことを誰?って首傾げてるし。
そして、俺は国から出てすぐの迷いの森とかいう場所に連れられ置き去りにされた。
なんでもこの森は沢山の魔物が住んでいて危険な場所とのことだ。俺をこの森に連れてきた衛兵たちが嘲笑いながらそう言っていた。早く死ねとも。酷い話だよ。
ちなみに衛兵たちはその2分後に魔物の餌としてミンチになった。皮肉にも彼らが魔物の危険性を教えてくれた。俺はスプラッター系はなんともない派だけど、流石に奴らの二の舞いは勘弁なのですぐに目をそらしどこか別の場所に隠れた。
そうして、しばらく魔物の目をくぐり抜けてやっとのことで巨大な洞窟を見つけたのである。
この洞窟を俺の活動拠点にすることに決めた。食事は偶々魔物が食べている木の実やキノコと同じ物を採ってきたのでそれを食べた。魔物とはいえ、同じ生き物だし、毒の心配はないと思いたい…… 味はベリーグッドだった。木の実だけに。
リフォームの能力はホントに素晴らしい。俺が指を鳴らすだけで大きな岩石は跡形も無く吹き飛ぶし、手を壁や床に当ててなぞるだけでデコボコがなくなりあっという間に平らになった。指先からライターのように炎を出すこともできる。………これ頑張れば家が簡単に作れるんじゃね?
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とまあ、洞窟の大改造に取り掛かり、今に至るわけだ。これから俺はこの異世界で家を建てて優雅に暮らすことにする。それだったらもっと豪華に豪邸でも建てて悠々自適に暮らすか。
異世界生活2日目。
朝から身体のあちこちが痛い。まぁ、無理もないか。床や壁は綺麗になったけど、まだベッドとかの家具がないからそのまま寝たんだ。とりあえず、今日の目標はいくつか家具を作ることに決定だ。
まずは材料を集めることにした。幸い、外に出れば沢山の木、洞窟の奥には大きな鉱脈があって様々な鉱石が見つかった。これなら良い家具が作れそうだ。
……………それから数時間が経ち、机や椅子、そして寝るためのハンモックが完成した。ハンモックは散策中に見つけたツタを使わせてもらった。もっと良い材料が揃ったらベッドを作ることにする。それまでは当分ハンモックだ。しかし、リフォームの能力は冗談抜きでホントにすごい。どんな家具を作りたいってイメージで材料に触れると簡単に家具を作ることができた。ただまぁ、副作用があるみたいで作ったらひどく疲れるけど。それでいくつか家具を作ってたらいつのまにか鑑定機能っていうのが出来ていた。それは素材を見ただけでどんな特徴があるのか事細かく知ることが出来る。マジでリフォームは有り難い能力だ。
奥の鉱脈には強い光を放つ鉱石があったので、それを灯代わりにした。
異世界生活3日目。
俺は重大なことを忘れていた。この洞窟、ドアがないじゃん。今までは幸運にも魔物に襲われなかったけど、これじゃいつか絶対寝込みを襲われるぞ。というわけで今日は家のドアを作ることにした。
……といってもドアの材料はどうするか。そう思いながら散策していると前の世界では見たことのない木を見つけた。めちゃくちゃ硬く石並みの硬さだ。しかもこの木、加工してみると分かったことだけど一方向からの衝撃に滅法強いという性質があるようだ。これならドアにうってつけだ。この木を何本か使って加工しドアを作った。
森の中で出てくるのは魔物だけじゃなく、賊も出てくるかもしれない。だから、ドアの造りは少しだけ変えてよ○もとみたく引き戸形式にした。最初は普通の扉のイメージで作ってたから取手も出来てて後は2つに分けるだけだったから問題なかった。これならドアの見た目に騙されて簡単に開けることは出来ないだろう。
異世界生活4日目。
素材集めに出ていたら偶然イノシシみたいな魔物に見つかり追いかけられた。なんとか逃げ延びたが油断だった。俺は戦闘能力皆無の弱い存在だということを失念していた。だから、俺には自分を守ってくれる存在が必要だ。食料は昨日、一昨日で大量に採ってきたからしばらく引きこもっていても大丈夫だ。これからじっくり考えよう。
異世界生活5日目。
なかなか良いアイデアが浮かばないので気分転換に洞窟の奥で鉱石を物色していたら、ある面白い鉱石を見つけた。魔石というものだ。大気中の魔力の結晶らしく、ここは魔石も豊富なようだ。その魔石から俺はある1つの仮説を見出した。
試しに土塊で人形みたいなのを作り、それに魔石を入れてみた。すると、途端に人形が動き出した。どうやら魔石はゴーレムの材料になるらしい。昔読んだラノベで土人形に魔力を注ぎ込んでゴーレムを作るという描写があったからもしやと思ったが、正解だったようだ。これなら俺を守ってくれる強いゴーレムを作ってしまえば全部解決だ。あとは強靭な身体を作るだけだな。
異世界生活6日目。
昨日からほぼ徹夜でいくつも失敗を繰り返し、やっとのことで1体のゴーレムが完成した。いかにもな感じのゴーレムだが、材料にもこだわったから頑丈さは折り紙付きだ。これなら魔物と十分戦えるだろう…………
駄目だ、眠い。早く寝よう………………………
異世界生活7日目。
生活に追われている間は気が付かなかったが、この世界に来て早くも1週間か…… なんだか感慨深いものがある。いつのまにか家具も増えて最初の頃よりずっと暮らしやすくなった。
昨日完成したゴーレムを連れて素材と食料を探すことにした。そしたら、案の定魔物に襲われかけた。今度は狼の魔物、奇しくも初日に衛兵たちをミンチにしたのと同じやつだった。せっかくなのでゴーレムの性能を見てみるかと思い、戦わせてみたら………
結果はゴーレムの圧勝だった。というより勝負ではなく一方的な虐殺だった。襲いかかってきた魔物を捕まえて首をゴキンだ。こればかりはさすがに魔物に同情した。だが、強さは申し分ない。これなら安心して外に出られる。後、不思議なことに魔物が死んでしばらくすると、死体はなくなり、代わりに拳くらいの石が現れた。調べてみると、魔石だった。どういう原理かはよく分からないが、魔物が死ぬと魔石になるようだ。なんにせよそれならゴーレムの素材には困らない。
異世界生活8日目。
昨日の魔石を元にまた新たにゴーレムを作ることにした。1度コツを掴むと簡単に作れるもんだな。これなら何体でもゴーレムを作れそうだ。2体作って門番代わりになってもらうことにした。これならもう安心だ。
また、ゴーレムについて分かったことだが、どうやら自分を作った者の言うことには絶対に従うようだ。なんでリフォームの能力でこんなことが出来るんだ?と少し疑問に感じたが、多分快適に暮らすためという名目に当たるのだろう。家事をやってもらったりセキュリティとかも快適に暮らすのに大事なことだからね。この調子で気が付いたらゴーレムが10体くらい出来上がった。流石に作りすぎてしまった………
他に空いてた部屋をゴーレム格納庫として一旦そこにしまうことにした。
異世界生活9日目。
流石に木の実やキノコも飽きてきた。もうそろそろ別のものを食べたくなる。そこで新しい食材を探しに護衛のゴーレムと出かけることにした。魔物はすぐ魔石になるから食えそうにないし、どうしたものかと考えていると大きな川を見つけた。悩みは解決した。帰ってすぐに網やら魚籠やらを作って魚をゲットした。タンパク質が欲しいと思ってたから魚がいてホントに良かった。魚は焼き魚にして食べました。
異世界生活10日目。
ある程度生活に余裕が出てきたので、家の改築を行うことにした。穴を空けてトイレや風呂場、キッチンを作った。今までは無くてもなんとかやっていけていたが、快適な生活とは言い難いので作ることにしたのだ。それぞれ水や火のプリズマで実現することができた。プリズマというのは魔石の一種だが、通常のものと違い、魔力を注ぐと火や水といった様々な物質を自在に作り出せる代物だ。しかも半永久的に使用が可能というまさにチートなアイテムだ。ちなみに残り湯や排泄物はそれぞれ設置した管を通って外に排出されるという仕組みだ。これでより快適な生活が出来るようになった。
異世界生活11日目。
昨日作ったところで不便に感じた所を改良して、それが終わるとホントにやることがない。仕方がないのでゴーレムたちの改良に取り掛かることにした。ゴーレムたちも家事やら警備やら改築の手伝いやら色々としてくれるが、やはり戦闘能力の向上はもっとさせておくべきだろう。今までの魔物は弱い部類かもしれないし(仮に弱かったとしたらそれにやられる衛兵って<笑>)賊相手でも一筋縄ではいかないだろう。
そこでいくつかのゴーレムに新たにドリルや大気中の魔力を吸収してそれを弾丸状にして乱射するガトリング砲を取り付けた。やっぱドリルや銃はロマンでしょ。しかし、開発は簡単ではなかった。ゴーレムの身体を作るよりも遥かに難しかった。ドリルはまだなんとかなったがガトリング砲はリフォームの能力がなければ永遠に出来なかっただろう。
異世界生活12日目。
何やら外が騒がしい。外に出てみると、何人か薄汚い格好をした人相の悪い頭も悪そうな連中がいた。奴ら曰く金をよこせだのこの家をよこせだの完全に盗賊だった。いや、盗賊というよりもハゲタカだな。全員頭頂部があれだったし。なので問答無用で昨日作ったドリルゴーレムとガトリングゴーレムをけしかけてみた。結果は言わずもがなだった。具体的に言えば、ある者は頭を潰され土手っ腹に風穴が空き、またある者は原形を留めない状態にされていた。実に悲惨ですなー(棒)。しかし、スプラッター系に強いとはいえ、ここまで人の死に無感情とは我ながら自分の感性が怖くなるよ。でもまぁ、いっか。赤の他人......悪党なら尚更、心を痛める必要もないしな。
ゴーレムたちにゴミはちゃんと捨てることを命じて俺はまた二度寝した。偶には何もしない日もいいだろう。
ドリルゴーレムとガトリングゴーレムは門番としてドアの横にいかにも番人な感じで設置することにした。ガトリングゴーレムは確実に跡形もなく敵をオーバーキルしてくれるのだが、ガトリング砲の魔力の装填に少し時間がかかるのが難点だな。そこは要改良だ。
異世界生活13日目。
しかし、自給自足な生活をするといっても森の中じゃあ限界がある。せっかくなので作った家具のいくつかや集めた鉱石を森を出てすぐにある街で売って何か別のものを買おう。調味料や肉も欲しいし。それにこの街は俺が召喚された国の隣国に位置しているので心配ない。
そこで1体のゴーレムと護衛兼荷物持ちとして一緒に森を出て街に入った。流石にこのままじゃ街がパニックになりそうだし、ローブを被せて顔が分からないようにしたけど。門番からすげー怪しまれたけど、売るものを見せたら護衛だと納得してくれたようだ。ついでにどこで売れば良いかも教えてくれた。意外と良い人だったな。門番の話によるとあの森に住むのは犯罪者がほとんどらしい。道理で警戒されるわけだ。
家具やら鉱石を売ったら結構高値で売れた。その金で食べ物や新しい服を買った。服もずっと一張羅だったから買えて良かった。
それからシーツや布団も買った。ベッドの骨組みはある程度出来ていたのでこれで念願であるベッドの完成だ! ハンモックも寝るには問題なかったが、やはりベッドの方が安定していて寝やすい。ベッド最高!
異世界生活14日目。
また別の素材を探しに森を散策していたら、人の声がした。子供の声みたいだが、こんな森で何をしているんだ? 昨日の話からすると、この森にいるのはならず者くらいらしいが。まぁ、気になったので声のする方に向かってみた。すると、そこにいたのは双子の少女だった。歳は4〜5歳くらいで金髪の可愛らしい子たちだった。泣いていたので詳しい話はよく分からなかったが、なんとなく察しはついた。服はボロボロだったし、大方親に捨てられたか奴隷かなんかで売られるところを逃げ出したかだろうな。
仕方がないので家に連れ帰って木の実ジュースを振る舞ってあげたら大分落ち着いた。美味しいものはやはり正義だよ。
所々めちゃくちゃだったが、話を聞いてみると2人はやっぱり親に捨てられたようだ。しかも余程手酷く捨てられたらしい。そのまま追い出すわけにもいかないし、家にしばらく置いてやるしかないか。ちなみに、ゴーレムたちには自分に敵意を向いた者を殺すように命令しているのでこの子たちが襲われる心配はない。まぁ、俺に牙を向けば話は別だが。
異世界生活15日目。
少女たちは自分の名前をよく覚えていないらしい。色々とショックだったのだろう。無理もない。仕方がないので俺が名前を付けてやることにした。少し悩んで俺は名前を決めた。2人の名前はアカとアオだ。名前の由来は瞳の色からだ。というか2人とも瞳の色以外区別がつかないし。
…………え? あまりにも安直すぎるって? 悩んでそれ? あいにく俺にネーミングセンスはないからな。何事もシンプルイズベストだ。それに2人もその名前を気に入ってくれたみたいだし、全然大丈夫だろ。
今日から俺とアカとアオとゴーレムたちの共同生活が始まった。2人とも街で新しく服を買ってあげて美味しいものをご馳走してあげたらすっかり懐いた。作った家具を売った金はまだたくさんあるし、無くなったらまた作ればいいし。
だが、いつのまにか2人とも俺のことを「パパ」と呼ぶようになった。さすがにそれは勘弁してほしい。俺はまだ17なのに。ひょっとして安易な名前を付けられたことに怒ってる?
異世界生活16日目。
流石に1体のゴーレムだけで3人を護衛するのはキツイので別の2体のゴーレムにアカとアオを守るように命令して自分の護衛のゴーレムと皆で素材と食料を集めに行った。アカもアオもゴーレムに対して最初はおっかなびっくりだったが、いつのまにかそれぞれ「ゴーちゃん」、「ミスター・G」と呼んで懐くようになった。心なしか感情のないはずのゴーレムたちも少し喜んでるように見える。折角だし、あのゴーレムたちは2人の遊び相手にさせるか。かなり懐いていたので帰った時に前に街で買った染料で分かりやすく印を付けてあげた。印といっても簡単にそれぞれの胴体に大きく赤・青の星マークを付けただけだ。……もっとも、すぐに2人が染料でゴーレムの身体にあちこち落書きをしてしまったが。まぁ、これならどっちのゴーレムか分かるだろう。
異世界生活17日目。
流石に子供の前で返り血や臓物まみれの殺伐とした感じはあまり感じが良くないな。折角なので、情操教育も兼ねて歌を作ってやることにした。
スキップスキップランランラン♪ 魔物さんの〇〇<ズギューン>で<バギューン>で<ピー>。
狼さんは首ゴッキン♪ イノシシさんは斬首刑♪ ランランランラン楽しいな♪
タイトルは「魔物さんと一緒」………でいいか。曲は適当に作るとしよう。
異世界生活18日目。
また家具を大量に作って子供たちと街にやってきた。街で換金を済ませて買い物をしていると、いきなり俺に難癖を付けるチンピラたちが現れた。どうやら俺から金を巻き上げるつもりらしい。しかも、アカとアオのことも狙っているようだった。ロリコンだったのか? 仕方がないのでチンピラたちを路地裏の方に誘い込み、ゴーレムたちに問答無用で片付けてもらった。流石に殺すと面倒だから命だけは取らないであげた。まあ、四肢を砕き歯は全部叩き割られ見るも無残な状態だったが。俺の方はというと、チンピラたちに2人が怖がっちゃったから昨日作った「魔物さんと一緒」を歌いながらあやしていた。後々、俺たちが目を付けられると厄介だから比較的まだマシな状態だったチンピラの1人に全部責任をなすりつけてやった。街の往来に引きずり出して大きな声でチンピラの喧嘩ってことにして衛兵たちにお持ち帰りしてもらった。逃げることも出来ずにズルズルと引きずられる様はなかなか哀れだった。
異世界生活19日目。
家をまた改築して設備を整えた。アカとアオのために子供向けの滑り台やブランコを作ってあげた。2人とも喜んでくれて何よりだ。ゴーレムたちも2人に連れられて一緒に遊んでるし。とても平和だ。
後、2人用のベッドも作ってあげたのだが、2人とも使わず俺のベッドで相変わらず寝ている。念のため言っておくが、俺はやましいことはしていないからな。断じて。
異世界生活20日目。
この間買った肉が腐ってしまった。一応保存に気を使ったつもりだったのだが………
仕方ないので腐った肉はゴーレムにゴミ捨て場へ捨てさせた。このままだと夏とかになったら、どんどん食べ物が腐ってしまいそうだ。だから、今日は冷蔵庫を作ることにする。
といっても、前々からある程度作りは考えていたので何の問題もない。作りは至ってシンプル。食料の入った穴に水を貯めて半開きで蓋をしてそこから吸引ポンプを使って穴の中の気圧を低くさせたのだ。そうすると、水が凍りついて保存が出来る。完全に蓋をすれば当分溶けなさそうだし。そういうのを前にテレビで観て覚えてて良かった。ちなみに吸引ポンプは街で買いました。
異世界生活21日目。
最近は魔物や賊が家に襲って来ることが無くなった。ちょっと前まではたまーにのペースで来てたのに。ふと家の裏口を見てみるとちょっとここで書くのもあれなショッキングな光景が広がっていた。ここがゴミ捨て場になってたのか......
ゴーレムたち、いつかの「ゴミをしっかりと捨てる」って命令を律儀に守っていたらしい。魔物や賊だったものはしっかりと捨てていたようだ。ほとんど原型を留めていないが……
………うん、何も見なかったZ。教育に悪いから子供たちには近づかせないようにしないとな。まぁ、殆ど通ることはなかったから大丈夫だと思うけど。
異世界生活22日目。
家のスペースも少し狭くなってきたので増築をすることにした。折角だし地下室でも作るか。ゴーレム達と穴を掘って地下室を作っていく。もちろん崩れないように気をつけて丁寧に。
……流石に今日一日だけで完成させるのは無理か。明日、また頑張ろう。
異世界生活23日目。
さて、今日も地下室作り再開だ。そうと決まればまずは地下っと地下地下だ。
ドーンだYO!
1日掛かりで穴を広げて整備してなんとか完成した。崩れると元も子もないので柱などは妥協しなかったからな。いやー、ホントに大変だった。地下室自体を作るのに大変だったから細かい設備は明日また作るとしよう……
異世界生活24日目。
地下室への移動は階段にするつもりだったが、子供達が危ないしな。どうしたものか……
アカもアオも地下室に行きたそうにウズウズしているし。
色々考えて試行錯誤した結果、地下室へ移動する時は滑り台、地上に登る時は階段という形にした。こっちの方がなんかカッコイイし。階段も一段一段大きめに。灯も忘れずに。作った後は2人ともキャッキャッと楽しそうに滑っている。もう11回目なのに全然飽きる素振りもない。………… おい、そろそろ俺にも滑らせてくれ。俺も滑りたい。
異世界生活25日目。
今日は洗濯物がある程度溜まってきたので洗濯をすることにする。そういえば、洗濯についてはまだ書いていなかったな。この世界に来て1週間くらい経った時に鑑定機能で偶然面白い木の実を見つけたんだ。なんでも水に入れると果汁が滲み出て服の繊維に付いた汚れを落としやすくしてくれる洗剤みたいな木の実だ。しかも、洗った後は柑橘系の良い匂いもしてるし。それでアカやアオと一緒に川で服を洗濯した。暮らす人数も多くなったから服もやたら多くなる。女の子なら尚更。人手が増えたんだし、少しずつ簡単なことから教えていかないとな。
異世界生活26日目。
今日は子供たちと一緒に言葉と数の勉強をした。育てていくからには最低限度の教養は必要だ。と言ってもこの世界の細かいしきたりとかは教える気はない。まぁ、ぶっちゃけよく知らないというのもあるが。人間、読み書きそろばんが出来れば生きていけるしな。(そろばんはこの世界にないけど) この世界の言語や文字については何故かこの世界に来てからすんなり読み書きが出来る。......一体何でだろう?
とにかく、2人とも筋は良い。基礎的なことを教えてから俺が問題を出してやると、2人とも同時に正解を言う。これは教え甲斐があるってもんだ。前の世界にいた時は勉強する意味が分からなかったが、今こうして教えてみると教育の大切さがよく分かる。街ではまともな計算も出来なくてボラれてたり、字が読めない大人も結構いたからな。この子たちにはそうならないようにしないと。これから定期的に勉強を教えてやろう。この子たちのために。
異世界生活27日目。
今日は久々に街で換金を済ませて必要な物を買った。それから風の噂でクラスメイト達のことを聞いた。どうやら随分な活躍のようだ。立派に魔王軍と戦っているらしい。この国には魔王軍の被害が殆ど無かったから気になって色々調べてみたけどどうも魔王軍に喧嘩を売っているのはあの国だけなようだ。他の国は敬遠している状況だ。分かりやすく元の世界的に言えば、召喚された国が北朝鮮みたいな立ち位置の所だったんだ。これを知って益々追放されて良かったと思ったよ。危ない危ない。
それからどうも俺たちが住んでいる山の方で変な歌が聞こえてくるらしい。怖いなぁ、異世界。子供たちに危険がないといいんだけど。
異世界生活28日目。
今日は子供たちと昨日偶々買ったボードゲームで遊んだ。日本で言うオセロゲームみたいなもので楽しかった。アカもアオも楽しそうに対戦している。買ってよかったよ。…………ん? 俺と戦ってくれって? 良いけど俺強いよ。日本でもオセロは得意だったし。
…………………ついつい手加減なしでやって全勝してしまった。流石に大人げなかったな。お陰でアカもアオも拗ねてゴーレムにコアラみたいにペッタリくっついてしまった。おーい、街でなんか美味しいもの食わせてやるから機嫌直してくれよ。頼むから。
異世界生活29日目。
今日、子供たちと森で散歩をしていると、偶然大量の果物を背負って運んでいるお婆さんに遭遇した。そして、お婆さんはすっ転んで果物を道にばら撒いてしまった。そこで子供たちが「手伝うーー」って言って集めるのを手伝い始めたので俺やゴーレムも手伝った。子供たちのそういう優しい心は大事にしないといかんしな。お婆さんからは感謝されてお礼に果物を少し分けてもらった。なんでも農家の婆さんで売り歩いている最中だったらしい。流石に悪いのでお金は少し払ったが。もらった果物は森では見たことのない形と色をしていた。
家で切って皆で食べてみると滅茶苦茶美味しかった。スイカのような味でいつも食べている木の実とはまた違った味だった。
異世界生活30日目。
だいぶ家も賑やかになったものだ。最初はどこか山奥に住む凄腕の陶芸家みたく1人でひっそりと悠々自適に暮らすつもりだったが、やはり話す相手がいると生活が楽しく感じるものだな。ゴーレムたちは話せないし。
アカもアオもここでの生活が気に入ったらしく、ずっとここで暮らす!……と口を揃えて言ってるくらいだし。
居場所がないなら作ってしまえばいいじゃない!
昔、学校で居場所がなくて辛いと泣いていた時に母さんから言われた言葉だ。正直、 安易にそんな言葉を言われて少し殺意も湧いたが、そこから俺は開き直った。自分には無用と切り捨てて、誰とも関わらなくなって、ずっと1人の世界を満喫するようになったのだ。多少の寂しさは趣味でひたすら紛らわした。その結果があの追放だ。誰も助けようともしなかった。もう少し誰かクラスメイトと関われば良かったのかもしれないが、あいにく俺にはあれしか方法が分からなかった。そして、また開き直って生活をしていた。不思議と元の世界に帰りたいって気も起こらなかった。でも、俺はずっと人に飢えていたのかもしれない。あの時、2人を助けたのはそのためだろう。
だから、今度は切り捨てない。絶対に。
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「そういえば、土代のやつはどうしてるんだろうな?」
「さあ? あいつのことだしどこかでのたれ死んでいるんじゃねえの?」
「ぎゃははは! かもな」
そんなクラスメイトたちの下品な笑い声が部屋に響く………………………のが目に浮かぶ。
そんな彼らの予想とは裏腹に土代 柱は実は生きていてしかも自分たちよりも遥かに快適な生活をしていると知ったらどんな顔をするだろうか? まあ、知る由もないし、興味もないな。
異世界に来て早1ヶ月、クラスメイトたちが血生臭い世界を生きている中、俺は可愛い娘たちやゴーレムたちと毎日楽しく暮らしている。どちらが幸せなのかは言うまでもない。
ゴーレムに外敵から身を守ってもらうというアイデアはとあるゲームから着想を得ています。幼女が「ミスター・G」と呼んでいる時点でお察しだと思いますが。
同作者の「赤紫の魔剣使い〜少女は異世界を渡り歩く」にて協奏として出てきます。良ければそちらもどうぞ。時系列的にはおよそ6年後の世界となっています。
追記ーーーーー
続編を書かせて頂きました。是非そちらもどうぞ。時系列的にはおよそ1年後になります。