名前問題
ペットの名前を考える回です。……平和すぎるのでそろそろクソ強い竜でも出して戦わせましょうかね……
「……おいウエノ」
「……」
「……おい」
「……な、なんだ？ 」
タナカの問いかけにいつも通り応じたウエノ。しかしその頬に冷や汗が伝っている。そして、そのウエノの返事に対して……
「なんだじゃ……ねぇよッ！ 」
タナカの、怒りの鉄槌()が振り下ろされたのであった。
「痛ぇ……いきなり何しやがる！ 」
「黙れ！ なんで竜に乗って空飛んでるのに一向に森を抜けねぇんだよ！ 」
「こっちが知りたいわ！ お前は天才なんだからよぉ、あとどれくらい飛べば森を抜けるとかわかるだろうがよ！ 」
「わかるか！ ……ああもう……暇だ……」
竜の背中に寝転ぶタナカ。なんとなくで飼い始めたペットの背中が意外と居心地良かったことは気にしてはいけない。
「……あ、そうだ」
「どうしたモヤシ？ 」
「……」
「なんだその目は」
「お前まだこいつに名前つけてないよな？ 」
「グハッッ」
図星である。ウエノはそのことを完全に忘れていた。
タナカの冷たい視線が突き刺さるなか、竜の方からもどこか悲しい雰囲気が伝わってきてウエノは冷や汗が止まらなくなっている。
「い……今考えてたところだよ……」
「おいおい……さすがに考えてないのはかわいそうだろ……」
「仕方ないだろ……」
「……はぁ。仕方ねぇ、少しだけなら考えるの手伝ってやるよ」
「ありがとうな……」
そして考えること数十分。普段はツッコミ役であるタナカがボケたり、ネタ要素満載の案が出されて再び竜が悲しそうな雰囲気になったり、著作権的に問題になりそうな案が出たり……色々あったが、最終的に……
「決められませんでした……」
「何でだよ！ ある程度候補絞っただろ！ 」
「お前さぁ！ レ○アとかレ○スとかさぁ！ いいと思うけど！ ダメだろ、著作権的に！ 」
「ええ……じゃあどうするんだよ……こいつ特に特徴ないから難しいだろ……」
「確かにそうなんだが……あれ、じゃあもう俺らの願望でよくね? こういう風になって欲しいっていう」
「おお、良いんじゃねぇか? ……決まったら教えてくれ、俺は寝る」
「ええ!? 」
さらに考えること二十分ほど。ついに名前を決めたウエノはタナカを起こした。
「なんだよおい……決まったのか? 」
「ああ」
「それで、どんな名前にしたんだ? 」
「そうだな……こいつの名前は『ディヴァ』だ」
「ええ……呼びにくくない? 」
「仕方ないだろ、かっこ良さそうな単語がこれしかなかったんだよ……あ、ちなみに元は『ディバイン』って単語だ」
「願望の欠片もないな! 」
かくして、ペットの名前は決まったのだが……二人がこの世界における名前の概念を考えて苦しむことになるのはしばらく後の話である。
ディバイン……神威って意味でしたっけ?
