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快適な洞窟と降臨する神

はい、もう意味不明です。

 「……つまり。お前が何となく書いた魔法陣で、ここに来てしまったと? 」

 「そうです! そうですから! お願いだから助けて! 」

 「お前の言いたいことはよくわかった。だが断る」

 「理不尽の極みッ! 」

 「五月蝿い、黙れェェェェェッ! 」


 あれから十分。地面に埋められたままのウエノから色々な情報を聞き出したタナカは、ここに来てからのストレスを発散すべく、ウエノに八つ当たりをしていた。……その流れで、よくわからない茶番を繰り広げていることには触れるべきではない。


 「仕方ない……今回は許してやるとしよう。ほら、手を出せ」

 「ありがたき幸せ……だがよ、タナカ。手も埋まってるんだが」

 「あっはい」


 雰囲気はよくてもどこか抜けているタナカであった。


 

 「さて。ウエノよ、異世界に来てしまった現状を見て、お前はどうすべきだと思う? 」

 「いや、なんでまだ厨二b「余計な口をきくな、馬鹿者が」ごめんなさい」

 「とにかく、だ。君の意見を言いたまえ」

 「そうかよ……俺としては、まずは安全の確保をするべきだと思うんだが」

 「何を当たり前のことを」

 「お前が意見求めたんだろうが! 」


 相変わらずの理不尽である。ウエノはこの先も理不尽な扱いを受け続けることになるのだが、頑張って耐えていただきたい。


 「じゃあ、それに向けて、俺たちは何が出来るのかを確認しようか」

 「それはわかったが……お前が安全確保に向けて出来ることってほぼ無くないか? 」

 「しね」

 「だから理不尽だって! 」

 「それは置いといて。で、お前、何が出来るんだ? 」

 「それはな……」


 話が長くなるので中略。ウエノに何ができるのかはここでまとめるとする。


 ・戦闘

 ・建築(素人なので期待はできない)

 ・木登り

 ・危機関知(勘だけは鋭い)


 「お前……万能過ぎるじゃねえかよ! 」

 「クソ運動不足なモヤシとは違うんだよ」

 「しね、馬鹿野郎」

 「どうとでも言え! ここでの俺は勝ち組さ! 」

 「知らんわ! わかったから早く拠点建てやがれ! 」


 このようなやりとりを四・五回繰り返して、彼らは辺りの探索を始める。


 「おいおい、この辺りには木がたくさんあるから、建材には困らないだろ? なんで危険を冒してまで探索しなけりゃならないんだ? 」

 「さっきの蜘蛛とか、めっちゃ強そうだっただろ? ああいうの相手に、木の小屋で対抗できるかよ。せめて山か何かに横穴でも掘るべきだ」

 「考え方がチキンだな」

 「馬鹿とはここの作りが違うんだよ」

 「黙れ」

 「断る。……まあ、普通の人ならこれくらい思い付くだろ。とにかく、崖でも高い山でもなんでもいいから探してくれ」


 そんなこんなで探索すること三十分。崖どころか山すらも見つからないまま、タナカが疲れはてて座り込んでしまった。


 「ゼー……ハー……待ってウエノ……もう限界……」

 「弱すぎるだろ……さすがモヤシ」

 「返す言葉も見つからない……」

 「仕方ない。しばらく休もう……その辺りにでも座っとけ」

 「おう。……だがよ、もうしばらくしたら夜が来るだろ? 俺はこの辺りで休んどくから、お前は付近の探索を続けてくれ」

 「りょーかい」


 タナカは近くにあった平たい岩の上で寝転び、ウエノに探索を任せて休憩を始める。……数秒で眠りに落ちたタナカを見て、ウエノは呆れた顔をするが、思考を切り替えて木々の間を歩いていった。


 一時間後。再び目を覚ましたタナカは、辺りを見渡してウエノの姿を探す。近くにいないことを知り、少し焦るが、どうせいつものように道にでも迷っているのだろうと気にしないことにした。


 さらに一時間後。タナカは、ウエノの声に無理矢理現実へと引き戻された。


 「タナカ~、起きろ~」

 「……なんだよ、うるさいな……」

 「その言い草はないだろ」

 「おお、すまんな、寝起きで気が立ってるんだよ」

 「そうかよ……おい、良い感じの洞窟見つけたぞ」

 「マジかよ!? ほら、早く案内してくれ! 」

 「……はぁ、これだからモヤシは……」


 ウエノは、人に仕事を任せておいて礼の一つも無いタナカに、少しキレそうになるが、今怒ったところで無駄だと諦めることにした。


 歩くこと三十分。問題の洞窟は、よくウエノが戻ってこれたと思うほどに、先程の岩から遠いところにあった。


 「着いたぞ」

 「ゼー……やっとか……ハー……これで休める……」

 「おいお前そろそろヤバイだろ。早く中入れ。安全は確認してあるからよ」


 ウエノは息も絶え絶えのタナカを引きずって、洞窟の中に入る。洞窟の様子を見て、タナカは驚愕した。


 「おい……なんだよ、この、すごく生活しやすそうな場所は! 」

 「え? いや、洞窟ってベットとかが備え付けられた快適な場所じゃないのか? 」

 「それはどこぞのゲームの話だ! 実際の洞窟はベットもキッチンもトイレも風呂も無い! 」

 「そうなのか……ま、まあまあ、良いじゃないか! 快適ならそれでよ」

 「良いわけあるか! 絶対どこかの他人の所有物だぞこれ! 」

 「……とか言いながらベットに寝転んでくつろいでいるのはどこのモヤシでしょうかね」

 「うっ……これはだな……アレだ! 」


 各種の便利な器具がある、とても快適そうな空間にタナカは再び悪寒を感じたが、すぐにフカフカな布団の誘惑に負けて寝転んでしまった。タナカの適当な答えに、ウエノも再び呆れるが、こちらは眠気に負けて、まだ日が高いと言うのに眠りに落ちてしまった。


 「おい、ウエノ……え、寝たの? 早くない? ……仕方ない、俺だけで辺りを見てくるか」


 気持ち良さそうに寝息をたてるウエノを放置して、タナカは探索を再開する。……ウエノの眠りもすごく早いことには触れないでおこう。

 タナカは洞窟のなかを物色していく。洞窟には、各種器具の他に、錆びて破損した兜や、折れた剣などのガラクタは大量にあったが、使えそうな物は全く無かった。


 「チッ、しけてやがる……おっと危ない、素が出るところだった。失敬失敬」


 こういうときに独り言を呟いてしまうのはタナカの悪い癖だが、まさかこれが、人に聞かれているとは夢にも思わないだろう。


 「へぇ、君、意外と性格……アレなんだね」

 「なっ、誰だ!? 」


 この洞窟にはウエノとタナカの二人しかいないはず。そうだとしたらこの声の主は何なのか……声の聞こえた方、ちょうどベットがある方に振り向いたタナカは、その姿を見て絶句する。


 「な……」


 二つあるベットのうち、ウエノが寝ていない方……その上に、緑色に光る水晶玉が浮いていた。


 「やあ、神です」

 「え……は……!? 」


 なんの前触れもなく降臨した神に、タナカは開いた口が塞がらなかった。

 固まるタナカに、一言。


 「君に、良いことを教えてあげよう」


 期待させるようなことを言うのだった。

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