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異世界に来た

四作目です。よろしくお願いします。

 とある世界の森の中。異世界としては何の違和感も無いそこの一部分に、異様な光景が広がっていた。

 重力が歪んだ空間に大量の岩が規則的に並んで浮かび、外敵を寄せ付けない、圧倒的な威圧感を放っている。その中心には、肩まで地面に埋められた者と、その目の前の、憤怒に顔を赤く……いや、紅蓮に染めた少年がいた。

 何故、このような混沌とした状況になっているのか。話は、十分ほど前に遡る。



 夢を見ていた。異世界に行く夢を。



 少年は、森の中で目を覚ました。

 少年の名は"タナカ"。日本において名字と呼ばれるそれしかないのは、"神"とでも言うべき存在が手を抜いたからではない。断じてない。……彼は、なぜか名前に関してだけを覚えていない。……そう、ご都合主義とか言うやつである。

 

 自分の知らない場所に放り出されたタナカは、叫ぶでも喚くでもなく、ただただ、この場所の情報量に酔っていた。ここはどこなのか?俺はなぜここに?何もわからない中、最終的に彼がとった行動は。


 「異世界……やったぞおおおおおおおおお!!! 」


 前言撤回。叫ぶ、だった。



 ひとしきり叫んで、気が済んだタナカは、周囲の探索を始めた。……が。人間、何かをしようとすると邪魔が入るものである。


 「誰か、助けてくれえええええ!!! 」


 響き渡る叫び声。聞き覚えのあるそれに、タナカは眉を潜める。

 「今の声……ウエノか……」

 ウエノ。タナカの友人である。有り体に言ってバカである。タナカは嫌な予感がしてならなかったが、友人の危機?に動かないわけにはいかず、渋々声の元へ向かった。……タナカは偽善者なのである。

 声が聞こえたのは、何やら大量の糸がある場所からだった。


 「おーいウエノー、今度は何やらかしたんだー」

 「この声は……タナカ! 起きたのか! とりあえず助けてくれ! 」

 「助けてって、お前、どこにいるんだ? 」


 見回せど、視界に映るのは微妙に揺れる糸ばかり。


 「上だ! 蜘蛛の巣に引っ掛かっちまったんだ! 」

 「上……は、蜘蛛!? 」


 ゆっくりと上を向くタナカ。視線の先には……糸に全身を絡め取られているウエノの姿と……巨大な蜘蛛が、大口を開けてこちらを見つめていた。

 予感的中。タナカは血の気が引いていくのを感じると同時に、何故か、日本にいた頃のとある出来事をを思い出した。


 「ぎゃああああああああああああああ!? 蜘蛛おおおおおおお!? 」


 自分のものとは思えない叫び声。……何が起こったのか、その次の瞬間、蜘蛛が唐突に砕け散った。降り注ぐ蟲の残骸。先程の光景と合わせて、すでに限界を迎えていたタナカの意識は、そこで途切れた。


 タナカは意識を失い、蜘蛛は砕け散り……危機は去ったが、蜘蛛の巣からの脱出もできなくなったウエノは、疲れたような声で呟いた。


 「誰か……助けてくれ……」



 それから三分後。意識を取り戻したタナカは、なぜ、蜘蛛が砕け散ったのかを考えることにした。


 「タナカぁ~、助けてくれ~」

 「あ、ごめん」


 ……完全にウエノの存在を忘れていた。



 さらに一分後。なんやかんやあってウエノを救出したタナカは、まず、なぜ自分達がここにいるのかを尋ねることにした。


 「なぁウエノ、お前何か知らないか? 」

 「知ってるもなにも、俺が原因だぞ? 」

 「は? 」

 「ん? 」


 早速ウエノが爆弾を投下。あまりに予想外すぎる返答にタナカはフリーズした。……が、一分で復活した。どうやら彼にとってはそれほどこたえたわけではなかったようだ。


 「お前……お前……」

 「どうした? 」

 「やっぱりお前かぁぁぁぁぁ!!! 」


 ……予想していたから復活が早かったようだ。……その事は置いておくとして。とにかく、蜘蛛が砕け散り、ウエノが爆弾を落として……冒頭の状況に至ったわけである。


 「さぁて、洗いざらい話してもらおうか……」

 「ちょ、タナカ、待て! 話せばわかる! だからここから出してギャァァァァァァァァァァ! 」


 ……この後、どのような拷問が行われたのか。それに関しては、言及しないでおく。

ウエノはバカでマヌケ、はっきりわかんだね()

それにしても、クソ運動不足のタナカがどうやってウエノを救助したんだろうか……

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