お金ってすごいね!
「聞いておくれよお金ってすごいんだ!」
「あん?なんだって?」
「だからだから、お金がすごいって話だよ」
「それは聞いてたよ。だからどうすごいんだよ」
「だって、だって、ネットじゃ誰からも相手にされない僕の小説が、学校の先生なら絶賛さ!」
「ほお、それはすごいな」
「そうだよ。ネットじゃ社会不適合者のゴミは死ねって言われるのにね?」
「ああ」
「だから、僕学校やめちゃったよ」
「あん?どうしてやめたんだ?」
「小説ってさ、いや、何も小説に限ったことじゃないんだけれどね。創作ってのは誰かを幸せに出来なきゃしちゃいけないんだってさ」
「ほお」
「だからさ、僕は大きな勘違いをしてたのさ。だって僕は読者が幸せになればとか考えてないもの。だから僕が書いていたのはどうやら小説じゃないらしいんだ」
「まあ、お前の小説はいつでも問答無用で低評価だもんな。お気に入り登録はゼロ件で。」
「そうそう。そうなんだよ。それなのに、学校の先生が何で絶賛してくれたのかっていうのはね。つまり、僕がその学校に入ることでその先生はお金を得るわけじゃない?要するに、小説の内容云々以前に僕はあの先生を幸せにしていたらしいんだ。だから小説として認められたんだよ」
「なるほどな」
「だから、やめたよ。初めから僕に創作の学校なんて向いてなかったのさ。」
「そりゃそうだ。だって、お前って普通の学校でも不登校だったろ?」
「ははは!言われてみればね? 忘れてたよそんなこと!」
「忘れっぽいやつだな」
「そうだよ。結局ね。だから、知らねえよ。いちいち人にお伺い立てて作る創作なんてマジクソつまんねえじゃん。だから、さ。やめたよ。学校」
「ああ。そうか」
「うん。小説って自分のために書いちゃいけないらしいからね。俺は表現をするよ。言葉を繋いで編んだ表現をね。でもそれは人を傷つけもするし不快にもさせる。でも、知らないね。文学を貶めたりしないよ。これは文学とかいう高尚なもんじゃなくて、ただの落書きなんだから。落書きか!そいつはいいや!」
「ははは!」
「落書きはいいよね!俺は昔からトンネルとかの壁にスプレーで描かれた落書きとか好きさ!」
「あん?あんなもんの何がいいんだい?」
「さあね。では逆に聞くが、君は世界の70数億の人間すべてが君の分身だったとして、その世界でダイヤモンドが今と同等の価値を持つと本当に言い切れるのかい?」
「なるほど。そいつは無理な話だな」
了