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第九章・友情のカタチ

 和弘と和也はようやく仲直りした。周りに迷惑をかけつつも長い長い兄弟げんかが収まり、全員で帰路につこうとしていたが・・・

 僕たち九人は、廃ビルを後にした。外に出ずとも、周囲がすでに真っ暗になっていたことは十分わかっていた。しかし、兄さんと塩山君が持ってきていた懐中電灯のおかげで、廃ビル内で迷うこともなく外に出られた。


 廃ビルを出て、来た時と同じようにフェンスをくぐって出て、車道まで全員固まって歩いていた。卓真君が率先して集団の真ん中に入っていた。よっぽど暗いのが嫌いなようだった。

 車道まで出ると、等間隔に電灯があるため、廃ビル内ほど真っ暗ではなかった。しかし、田舎道のせいか電灯の数も少なく、懐中電灯がないと、卓真君ほどではないにせよ、不安になるほどの暗さだった。


 車道に出ると、突然塩山君がここでお別れだと言ってきた。

「はぁ、なんでだよ」

 兄さんが語気荒く言った。塩山君が白髪と赤毛の少年の体を押して、兄さんから離れようとした。兄さんは塩山君を止めて再度質問した。すると塩山君が振り返って、真剣な顔つきで言った。

「お前は俺たちと一緒にいちゃいけねぇ。和也の元に戻るべきだ。俺だって卓真と同じでお前たちには仲良くしててほしいんだ」

「だからって、このまま俺の前からいなくなるつもりかよ」

「そうだ。俺は、俺たちは二度とお前の前には現れない」

 白髪と赤毛の少年が何か言いたそうに口を開きかけたが、塩山君が止めた。そして、また兄さんに語りかけた。

「俺たちみたいな半端ものといるよりも、和也とかと一緒に表の世界にいたほうがいい」

「何勝手なこと言ってんだよ」

「ああ、言い方が悪かったな。前々から俺はお前のことが気にくわなかったんだ」

「なんだと」

 塩山君の視線が兄さんからそれているのを、僕は見逃さなかった。

――もしかすると塩山君は嘘をついているのかもしれない。

 と僕は思った。

「お前ときたら、ツーリングするにしたっていつも安全運転だし、爆音とどろかすわけでもない、酒だってほとんど飲まない、シンナーとかもしないどころか俺たちがしようとしたら怒って止める、たばこは一切吸わない、俺たちが暴れて退学くらいそうになったら、校長室に直談判しに行って停学どまりにする、俺たちが悪さしようとしてもなんだかんだと理由つけて止める、ほんと、鬱陶しいったらないんだよ」

――やっぱり兄さんってそういう人だよ……

 僕は心の中でため息をついていた。

「お前なんかに来られたら好き勝手できないじゃねぇか。だからこれを機にお別れだ。追っかけて来るなよ、追っかけてきたらただじゃおかねぇからな」

 そう言って塩山君は、白髪と赤毛の少年を連れて歩き去っていく。方角は駅とは逆の方向だった。兄さんは、うつむいてぼそぼそとつぶやいた。

「塩山は、あいつはいつだって俺のことを気遣ってくれていた。何をするにも俺の意見を聞いてくれたし、体に悪いことをするときは、事前にそれを告げていた」

「和弘に悪いことを止めてほしかったのね、きっと」

 母さんのその言葉で兄さんは顔をあげ、少し塩山君が歩いて行った方に走って、懐中電灯の明かりしか見えないその背後に向かって叫んだ。

「俺はお前たちがなんと言おうと、親友だと思ってるから。たとえなんと言われようと、それは変わらない。変えるつもりはない、だから、」

 兄さんはそれ以上言葉がつまって言えないようだった。僕は隣に行き顔を見た。まっすぐ前を見つめていた兄さんの表情が変わっていった。驚いたような顔をしていた。僕が塩山君たちのほうを見ると、真っ暗だった。懐中電灯の明かりさえないように見えた。しかし、明かりは天に向かって放たれていた。塩山君は手を振り上げて、少し腕を振ってからまた歩き出した。白髪と赤毛の少年を連れて。

 兄さんをまた見ると、少しだけ涙を流していた。それを僕が見ていると気づいた兄さんは、慌てて涙をぬぐって、母さんたちのほうに戻りながら、

「さぁ、帰ろうぜ」

 と言った。その表情はいつものように明るい笑顔だった。


【次話に続く】

 塩山たちとはずっと友人であると和弘は改めて誓い、駅へと向かう。次話第十章に続く。

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