振り返った道の向こうに。
しのあり連載1周年記念がなので。今は3/26の27時をちょっと過ぎたくらいなのです。
「そろそろ、一年になるんだね」
「ほえ?何のことですか?」
部活から帰ってきて、二人きりの部屋の中でふと思い出したこと。突然だったからか、有里紗ちゃんも困ったように尋ねてくる。
「ほら、……あのさ、そろそろ、うちらがルームメイトになってから」
「そうっすね、……なんかあっという間でしたね」
「ずっと走ってばっかだったもんね、一瞬だよ」
いろいろなことがあって、それでも思い返すとあっという間に過ぎてった日々。何だか寂しいようで、それでいて嬉しい。荷物を置いて、「隣いい?」って有里紗ちゃんのベッドに向かう。それを笑顔で迎えてくれるのを見てから、ぎりぎり触れない程度の距離に座る。
「もー、部活もいいですけどちゃんと勉強してくださいよ?受験生になるんですから」
「インターハイ行けたらスポーツ推薦で通るから大丈夫だもんっ」
「それでだって試験は受けるんですよ?」
「うぅ……、わかってるけどさぁ……」
未来のことなんて、誰に訊いたってわからない。これから何が起こるのかも、うちが将来どうなるかも。それでも、二人ならなんとかなりそうって思える。隣にいるだけで、不思議と力がもらえるような感じ。
「まあ、まずは先輩だったらインターハイなんでしょうけどね」
「もちろんだよ、……去年の分も、頑張らなきゃだもん」
「志乃先輩らしいですね、……まっすぐで、なんか羨ましいっすよ」
「えっへへ~、そう言ってくれると嬉しいよぉー」
まっすぐ向けられる、有里紗ちゃんの気持ち。恋心がちょっとでも混ざるだけでヘタレさんになるのに、……うちも、なんか照れちゃうな、そんなに純粋に褒めてくれると。
「先輩といると、あたしまで元気になれるような気がするんです」
「もー、どうしたの?これ以上褒めたって何も出ないよ?」
「別にそういうのじゃないっすよ!ただ、……志乃先輩に憧れてるだけですから」
そう言いながらも、顔が赤くなってるのが見える。大人っぽくて、明るくて、すっごくかわいい。我慢なんてできないよ、二人っきりだし、……『恋人』だから。
「有里紗ちゃん、ぎゅーっ」
「ひゃっ、し、志乃先輩!?」
「だって有里紗ちゃんかわいいんだもーん」
「も、もう……っ」
ジャージ越しでも、肌から伝わる温もりはわかる。うつむいた赤い顔と、見上げた顔とで、目線がちょうど重なる。
もっと、甘えたいな、……駄目?ぎゅっと閉じた瞳が、その答えをくれる。
顔を寄せて、くちびるを重ねる。ぷにぷにした柔らかさと、恥ずかしがって言ってくれない気持ちが体に伝わってく。
ずっと、大好きでいるからね。その言葉は、言うことを考えただけで顔が爆発しそう。……でも、きっと、伝わっちゃってるんだろうな。重なったくちびるの温もりから。