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悪魔国家の大戦争! ~悪魔ウラクの成り上がり~  作者: 釜蔵
第一章 悪魔ウラクと戦争
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第四話 御伽の国からこんにちわ!

2017/8/29 キャラ描写、台詞一部変更。ストーリに変更はありません。

 その後、私はグレモリーと別れて次元の狭間で素振りを行っていた。

 いきなり戦争をするだなんて……しかも三日後。

 状況の変化についていけない私は、いつもの通り鍛錬をして気を落ち着かせていた。



「ふぅ……いつまでも現実逃避していられないわね。早く召喚をしなくちゃ」



 召喚……。アビリティを媒体にされる召喚術。

 一体なんて物を起点にしてくれたんだと、私は嘆く。

 いくら悪魔でも、起源アビリティは自分で変えることはできない。

 普通の民が自分の国の王になったら……忽ち他の次元に食いつぶされてしまうだろう。

 いくら剣の鍛錬をしても、これでは意味が無いのだ。



「いや、やる前から諦めては駄目よウラク! 私には他のアビリティもあるじゃない」



 そう、私には民の他にもアビリティがある。

 まず、スキルは剣術と、生まれた時から所持していた運営術がある。

 もしかしたら運営術は、国を作るにあたって役に立つかもしれない。

 そして、先程の召喚術をいれた三つを所持している。


 問題のアビリティだが、彼女のアビリティは民、悪魔、そして……努力。

 毎日コツコツと契約と鍛錬をしてきたおかげか、いつの間にか努力のアビリティがついていた。

 そして、自身のアビリティを再確認すると、もう一つ見知らぬアビリティがあった。

 ちなみに、確認方法は私が念じると頭のなかに現在のスキル、アビリティが表示される。



「えっと、民、悪魔、努力……苦労人……。えぇ……苦労人て……苦労人て……」



 私の新しいアビリティ……それは、苦労人。

 恐らくそのままの意味だろう。悲しくなってきた。愚痴を言える親友も、今はいない。

 しばらくすると落ち着いて、再び思案する。



「いや、これはチャンスね。民が出る確率が減ったということだもの」



 努力と苦労人、どちらも地味だが、民よりは王にふさわしい……気がする。

 特に努力のアビリティが色濃く出れば、それなりに頑張れる……気がする。

 私は気を取り直し、気合を入れて召喚を始める。



「すぅーーー……はぁ。よし、やるわよ。絶対やってやるわ」




 これは、自分からしてみればチャンスなんだ。そう自分に言い聞かせる。

 この戦争は、下位悪魔が一気に上位に上がれるチャンスである。

 死の危険は当然あるが、リスクに見合うリターンが見込める。

 今までそんなチャンスも得られず、これからも得られそうにない私にとっては、ここ一番の勝負であった。

 私は手を翳す。すると、サタン様の時と同じように、魔法陣が地に浮かび上がる。



「――我が其の能才を通し、召喚に応じよ。コントラクトサモン!!」



 私が詠唱すると、魔法陣が光りだす。

 光は大きくなり、段々と形を作っていく。



(お願い……! 強い人……強い人来て……!)



 私は祈りながら召喚を待った。

 そして光が収まると、魔法陣の上には……一人の小さな人間がいる。






「あれ……? ここはどこだい?」








 魔法陣の上には小さな人間の子供……中性的な顔立ち、少年のようで、少女のような子供がそこにいた。

 上は青い着物、下は腰蓑を着けている。長い棒のような物を背負っており、白髪で、髪が長く一部を後ろで結っている。

 その子は目をぱちくりさせながら、じーっと私を見ている。

 私は、子供に話しかける。



「えっと、私はウラク。貴方を召喚した悪魔よ。貴方の名前を教えてくれるかしら」

「僕かい? 僕の名前は浦島太郎。よろしく、ウラクお姉さん。いきなり体がふわっとして気づいたらここにいたんだ、少しびっくりしたよ」



 自分のことを僕って言ってるしどうやら男らしい。稀に僕っ子なんていう女の子もいるみたいだけど……。

 びっくりしたと言う割にはニコニコとしている。

 


「余りびっくりしてるようには見えないけど……それに、ウラシマタロウって変な名前ね」

「そうかなぁ? 僕の地元じゃ、太郎って名前はいっぱいいたけどなぁ。まだまだ世界は広いや」




 私は、恐る恐るウラシマタロウのスキルと、アビリティを確認する。

 他者の能力を見る場合は、相手にしばらく触れる必要がある。私は、タロウの頭に手をおいた。

 タロウは、どうしたの? と此方を見ている。



   名前;浦島太郎

   種族;人間

  スキル;釣り

アビリティ;人 民



 悪魔人生……終わった。

 私はそんな事を思い、絶望したのだった。







 むかしむかし、ある所に、浦島太郎という童がいました。

 太郎はいつもの様に大好きなつりをしに海辺へ向かうと、太郎よりもおさない童たちが、亀を囲んでおりました。

 逃しておやりよ。太郎が言っても、子供たちは聞き入れてくれません。

 そこで、太郎はつりをはじめて、大きな魚を何匹も釣り上げました。

 これをあげよう、だから亀を逃しておやり。そう言うと、子供たちはやっと、亀を解放してその場を去っていきました。


 亀は感謝し、太郎にお礼がしたいと言いはじめました。

 太郎は亀に連れられて、海の中に入っていきます。すると、海の底にはとても綺麗なお城が立っていました。

 ようこそ竜宮城へ。中に入るとそこにはこれまた大変綺麗な、乙姫さまという竜宮のあるじがいました。

 どうぞ、おくつろぎください。竜宮城でもてなしを受け、太郎はここがたいへん気に入りました。


 それからしばらく、太郎が竜宮で過ごしていると、ふいに川つりをしたくなり、外へ出たくなりました。

 もう出立なされるのですね。では、この玉手箱をさしあげます。絶対にあけてはなりませんよ。

 乙姫さまはそういって玉手箱を手渡し、竜宮から地上へ戻る太郎を見送りました。

 そうして地上へ向かうと、上には一隻のおおきな船がありました。船にあがると、いきなりたくさんの男たちに襲われました。

 太郎は冷静に、男たちを斬って捨てました。ですが、一人の男が玉手箱を掻っ攫っていったので、太郎は玉手箱ごと男を斬り殺してしまいました。

 するともくもく煙が上がり、太郎は黒髪から白髪へと変わっていきます。

 おや、どういう事だと太郎は自分の姿を確認するも、それ以外は変わっていません。


 自分の無事を確認すると、村へ戻ろうとしましたが、村は綺麗さっぱりなくなっていました。

 近くを通りかかった者に話を聞くと、どうやら海へ潜った時から長い年月が過ぎていたようです。

 太郎はそれなら仕方がないと、てくてくと歩きながら各地を旅する事にしました。



 ある日、いつものように太郎が海辺でのんびりとつりをしていると、辺りが光に包まれます。

 体がふわふわする感覚に襲われ、気がつくと目の前には可愛らしい少女が目をぱちくりさせながら太郎を見ています。

 太郎は直感します。ああ、これからまた楽しい旅が始まるのだと。

 浦島太郎は期待を胸に、悪魔の少女と話し始めるのでした。

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