表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

1. 一話はいちごとの出会い

ある学校に置かれた、ひとつの自販機。


販売されているのはジュースじゃない。パン。


これは、一人の男の子と不思議な少女たちの


「出会い」のものがたり

_______________________________









昼。鐘がなって解放された生徒たちが一斉に騒ぎ出す。


俺、青原荘士郎は空腹だった。

昨日家に帰るのが遅くなり、なぜか不機嫌な妹は晩飯を作ってくれず、そのまま朝飯も…

そんなこんなで4時限目が終わり、今に至る。


つまり俺は今現在、半日以上の間食物を摂取していないのだ。


し、死ぬ・・・




それだけじゃない。

つい先ほどから俺は嫌な予感がしていた。

つくえの横にかかっている、俺のバッグには・・・バッグには・・・


・・・弁当が、入っていないのではないか・・・







し、死んだ・・・


うちの学校にはあいにく学食はない。



どうしたら・・・?


屍のようにさまよう俺に、廊下中の生徒が好奇の視線を向ける。


この様子からわかるように、俺には友達と呼べる生命体が存在しない。


というかそんなものがいれば昼飯なんかとっくに分けてもらっている。





とにかく・・・食べ物・・・



失いかけた意識の中で俺の目に飛び込んできたのは、


「パンの自販機」だった。




「か、神しゃまあああああああああああああああ!!!」


獲物を見つけたハイエナのように駆け寄り、急いで小銭を出す。


こんな自販機今まであったか?

いやそんなことはどうでもいい!

はやくはやくはやくはやくはやくはやく!!!

飯飯飯飯飯飯飯飯飯飯飯飯飯飯飯!!!!!!!!!!!!


あまりに朦朧とした意識と、動転した心境に、


自販機に書かれた


「今ならあなたに幸せが舞い降ります!」


といういやに大々的な宣伝と

その隅に書かれた


「幸せの内容については、一切の責任を負いかねます。」


という冷たい文章に、気付くことができなかった。

いや、たとえ気付いたとしても、思慮の片隅にも置かなかっただろう。


とにかく僕はその日、「自販機のパンを買う」という運命の選択を下したのだった。






『ありがとうございました!』

機械的な音声に礼を言われ、取り出し口に落ちたイチゴジャムパンをつかむ。


やっと・・・やっと飯が食える!!


感動と達成感に浸った後、いざ袋の端を切ろうとした瞬間


『おめでとうございます! 大当たりです!! あなたに幸せが舞い降ります!』


終わったとみなした購入というプロセスが、割り込んでくる。


「ほえ?」


機械的な音声は、それだけ告げて、さっきまでのにぎやかさが嘘のように静かになった。




廊下の騒がしさが、急に大きくなった。気がした。__________










朝。土曜日の朝。


なんて気持ちいいんだ。誰にも邪魔されないこの惰眠・・・


布団を頭までかぶり直し、眠りの世界へGO BACK!!


「おやすみなさ~い・・・ぐふぉ!!!!」


緩やかに落ちる眠りの途中、腹部への荷重によるダメージで目が覚める。


「だ、だれだ!!やめろおりろ!!」


力いっぱい叫んで目を開けると、そこにいたのは、



「おはよう!あなたのために舞い降りたの!」



そこにいたのは


今まで見たことのない、それくらい、美しい








桃色の少女だった。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ