不自然なこと
のぞみとの初デートから、三ヶ月ほどが経った。梅雨の時期だった。僕はのぞみと変わらず付き合っていて、そして彼女を何度も抱いていた。彼女は、時には私服で、時には制服のままで、僕に抱かれた。デートは、次第に、僕の家で過ごすことが多くなっていた。
今日も、のぞみが訪ねてきた。
「お邪魔します♪」
彼女はいつも通りそう言うと、黒のローファーを脱ぎ、僕の家に上がった。今日の彼女は制服だった。
僕は、その時家で、スタイル・カウンシルを聴いていた。ア・マン・オブ・グレート・プロミスが流れてきた。
何もかもがいつも通りだった。僕らはソファに寄り添って座り、スタイル・カウンシルの音楽を聴きながら過ごしていた。のぞみは膝を閉じ、足は思い切り内股にして座っていた。僕は足を彼女に絡めた。
しかしここからが違った。僕は勢いで彼女にキスしようとしたのだが、彼女はそれをやんわりと断ったのだ。
「今日は、ごめん…」
「あ、いいよ、別に」
僕は戸惑ったが、普通でいるように努めた。二人寄り添っているのは変わらないのだから。
「ねえ、最近、学校どう?」
何気なく、僕は訊いてみた。
「え、何もないよ、別に」
彼女の反応はそっけないものだった。
「あ、そうか」
僕はそれ以上訊くのをやめた。しかし、今度は彼女の方から、
「本当に何もないの。大丈夫」
と何故か不自然なことを言ってきた。
「どうしたの?何かあったの?」
「待って、大丈夫だよ、何もない」
何かがおかしかったが、僕は追求するのをやめておいた。とりあえず、彼女とくっついていることができればいい。そう思うことにした。
そのまま僕らは、何するでもなく、まったりと過ごしていた。それもまた、いつも通りだった。しかし、のぞみの様子がおかしかったのは確かだ。僕の直感がそう感じ取っていた。
そこから数回のデートも、のぞみはどこか様子がおかしかった。街で遊ぶ時などはいつもと変わらないのだが、僕の家に来た時は、やはりキスをあまりさせてくれなかったし(軽くするくらいはあったが)、当然抱かせてもくれていなかった。僕はかすかな不安もよぎったが、別に彼女を抱きたくてしょうがないわけでもない(男子として、もちろん抱きたい気持ちが少なからずあったのは事実だが)。これまで通り過ごそうと、僕は思うことにしていた。