表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

五回目くらいのデート

僕はのぞみの積極性に流されたのもあって、彼女とデートを重ねた。

二回目はもちろん、三回目、四回目くらいまで、映画だったのを覚えている。それはやはり恋愛ものだったり、流行りのホラーものだったりした。映画はそれなりに面白かったのもあれば、つまらなかったのもあった。しかし彼女はいつも楽しそうで、僕も回を重ねるごとに、彼女と一緒にいる時間こそが楽しいものに思えてきた。


そして五回目くらいのデートでは、初めて、映画以外に行こうと約束をしていた。今思えば、ここからが、本格的なもので、僕らの気持ちも盛り上がってきていた。

お互いのバイトのシフトの関係もあって、のぞみはいつも制服姿だった。初めは慣れなかった僕も、だんだん、彼女の制服姿が楽しみになってきていた。

この日も、待ち合わせ場所に現れた彼女は制服だった。

「お待たせ♪」

彼女は時折、こうやってタメ口で話すようになっていた。僕も悪い気はしなかった。

「じゃあ、行こうか」

大抵、先を促すのは僕の方だった。こういうのは、男がリードするものだという固定観念が、未だ僕の中にはあった。おそらく、彼女の方にもそれはあって、それで、僕が促すのを待っている風もあった。

「そのシャツ、いいですね♪」

僕は新潟市内のアーバン・リサーチで買ったシャツを着ていた。

「そうかな」

と僕は少しだけ照れた。服を褒められるだけで照れてしまうなんて、いつ以来だろう。中学か、高校の時付き合っていた相手に褒められた時だろうか。つまりのぞみはその時と同じくらいの存在になっているということだろうか。それもあって僕はのぞみに分かるほど照れていたようだった。

「えへへ♡」

何故か彼女も照れた風を、いかにも大げさな声で表現した。なんとなく良い雰囲気に包まれた気がした。


今日は、たまには映画以外のデートをしよう、とあらかじめ二人で決めていた。

そこで、僕らは、駅から徒歩で、古町の商店街まで歩いて行くことにした。バスを使っても良かったのだが、二人で歩く時間をなんとなく大切にしたかった。

お互い、手をつなぐタイミングを探っていた。僕の方からつないでやるべきか、それとも、積極的な彼女の方からつないでくるのか。どちらにせよ、手をつないで歩くのが自然な距離感で、寄り添って歩いていたように思う。

果たして初めに行動を起こしたのはのぞみの方からだった。すっと僕の手を取り、少し照れくさそうな顔をして、でもこちらは見ずに正面を向いたままで。僕はドキドキした。映画館で手を握り合っていた時にはない、また違った感覚だった。明るいからだろうか?歩いているからだろうか?どちらにせよ、これは高校生の時以来の感覚だった。大学に入ってから短い間付き合った同級生と手をつないだ時にはない感覚だ。もしかして、僕は制服姿にドキドキしているのだろうか?それはその時はわからなかったが、後から思えば確かにそう思えた。高校時代の気持ちが、甦っているのかもしれない。あるいは、嗜好的なものなのかもしれない。そこまで考えて、僕は考えるのをやめた。

僕がしっかりと彼女の手に指を絡めてやると、彼女は僕の目を見て微笑んだ。

「透さんと歩きながら手をつないだのって、初めてだね。嬉しい♡」

僕は「ああ」とだけ言って照れて見せた。いや実際に照れていたのだが、それを隠すためにあえて大げさにしたのだ。それを見て、彼女は満面の笑みを浮かべた。こういう素直なところはやはり高校生だな、と思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ