奇遇
結局、同じ万代シティ内にあるカフェ・チェーンに入ることになった。
店内はひどく混んでいたが、なんとか、二人で居られるスペースを見つけて、座った。
僕はカフェ・ラテを、彼女は抹茶フラペチーノをオーダーすることにすると、僕はおごり、席までその二つを運んで行くことにした。
「ありがとうございます♪」
彼女は嬉しそうに、抹茶フラペチーノを飲み始めた。
「私、これ好きなんです」
「そうなんだ」
と、僕がカフェ・ラテに口をつけると、
「透さん、付き合ってる女の人とかいるんですか?」
唐突な質問に、僕は文字通り、ラテを噴きそうになった。
「あちち」
「大丈夫ですか?」
のぞみが心配そうな目で僕を見る。
「だ、大丈夫。で、何だって」
「だから、付き合ってる人はいるんですか?って訊いたんです」
「いや、いないけど…」
「そっか」
と彼女は笑顔で呟いた。
「じゃあ、また、一緒に、映画とか行けますね♡」
彼女はそう言うと、「暑い」と言って、紺のブレザーを脱いだ。その下には、リズ・リサ・ドールのグレーのコットン・カーデを着ていた。この日は四月にしては、妙に暖かい気候だった。
「え、うん…別にいいけど」
僕は、コットン・カーデの胸の膨らみに目を奪われながら、上の空で答えた。
「本当!?やったあ」
彼女は喜んだようだった。
「来週の土曜日、また、映画行きません?」
彼女はさっき観た恋愛映画に出てきたJKのように積極的だった。
僕はいささか驚いて、でも悪くない気持ちで、
「うん、いいよ。約束だ」
と答えた。
雪の残る街を、僕らは歩いた。この時は手はつないでいなかったように思う。
僕は新潟駅から徒歩10分くらいのところにアパートを借りていた。
「僕の家、あっちだから」
「あら、奇遇ですね。私の家もそっちの方なんです」
「あら」「奇遇」と僕は口の中で反復した。
「じゃあ、一緒に行こうか」
と僕は彼女を促した。
「はい♪」
彼女はどこまでもこのデートを楽しんでいたようだった。
僕らはお互いの家の分かれ道で、手を振って別れた。
「じゃあ、バイトで」
「はい、バイトで」
僕は得体の知れない奇妙な満足感に包まれていた。