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旅へ1

 村に入ったシロと小次郎は早速、食事どころに入っていた。


「シロ、手持ちもあまり余裕がないからな」

「わかりました」


 どれにしようかとメニューを見るシロだが、コジローは正直に彼女が理解できていると思えなかった。


「コジロー殿、お肉食べたいです」

「はいはい」


案の定メニューを読めないわからないシロに、コジローは店員を呼ぶ。彼は安く、かつボリュームが多いだろう品を頼んだ。


「コジロー殿、お肉」

「わかってる。ちゃんと頼んでいるよ」

「えへへ、やったー!」

「野菜もあるけどね」

「うぇええ」


 途端に嫌な顔をするシロだが、コジローがにやにやと笑っているとそれに気づいたのか怒った表情をする。


「シロのご飯、コジロー殿は嫌な事ばかりする!」

「え?なにが」

「うぅう」


 睨まれてコジローがとぼけると、シロは涙眼になった。


「シロ、野菜苦手」

「そうだな」

「コジロー殿ばかりずるいです」

「なら、シロもすればいい」


 コジローの言葉にシロは腕を組んで考える。


「俺の苦手なものは?」

「ないです!」


 コジローの言葉に、シロは強く断言した。


「あの、お品をお持ちしました」

「あ、ありがとう。代金はっと」

「肉!」

「シロは少し、黙ってて。えーと、1銀貨」

「はい確かに。では、ごゆっくりどうぞ」


 店員に硬貨を渡している最中も、シロはテーブルにある料理が眼を離せないでいた。ぐぅとシロのお腹の音がなり、よだれが口から垂れていてもシロはコジローを待っていた。


「じゃぁ、食べるか」

「食べます!」

「「いただきます!」」


 言葉とともに二人は、テーブルの料理にがっついた。特に、シロのペースは二人分といってもいい程の早さだった。


「おいしかった!」

「野菜は?」

「まずかった!」


 首をぶんぶん振ってその味を忘れようとするシロに、コジローの箸に掴んでいた焼き肉をシロの前に出す。


「食べていいのですか?」

「おうともさ」

「ありがとう、コジロー殿!」


 ぱくりと咥えてからシロは粗食した。


「ごちそうさまだな」

「うん、ごちそうさま」


 席を立ったコジローは、シロが抱きついた。


「えへへ、コジローは優しいな」

「ん?なにが」

「だって、シロ、野菜の味が口に残ってた」

「ああ、というか苦手なのを最後に残すのはどうにかしろ」

「うぅ、だって」


シロに抱きつかれてコジローは歩き難いのか、手と手を握って組まれた腕を放す。


「こっちだな」

「そっちになにがあるのですか?」

「馬とキャンプ用のご飯を買う」

「ご飯!」


二頭の馬を買って、飯に関してシロが食べたい物をねだったりもしたが買いたい物を揃えたコジローは、馬に荷物を載せて村を出た。


「シロ、怖いのか?」

「シロはこわくないです」


ぷるぷると震えるシロ、声も震えていて強がりだという事が簡単にわかる。


「そうか」


 片方に乗せた荷物をもう一つの馬に乗せる。荷重が増えて嫌そうな顔を馬が向けるが抵抗はしない。荷物がなくなり身軽なった馬の方に、コジローがまたがる。


「ほら」


 コジローはシロに手を伸ばした。シロは手に捕まるとコジローの前に乗せられた。


「わわ」

「これならいけるだろう」


 片方でシロを支えてもう片方でもう一頭の馬の手綱を握る。


「うん」


 ぎゅっとシロに抱きつかれてから、コジローは馬を走らせた。




「わー!」


最初に怖がっていたのはなんのやら、シロは楽しそうな声を上げる。


「コジロー殿、気持ちいいです!」

「そうだな」

「風があって、地面が凄く遠いです!」

「そうだな」


コジローの返事が面白くないのか、シロは不満そうな顔をする。


「コジロー殿」

「ん?」


ちゅっとコジローの頬に、シロがキスをした。


「なっ、ななな」

「シロの話を聞いていたですか?」

「あ、あたりまえだろ、それより、シロお前」

「うぬ?」

「なっ、ああもう」


してやったりとシロの笑顔にコジローは何も言えなかった。夕焼けに染まっても馬は道を走り続けた。夜、テントをはり地面に立てた杭に馬を繋いだコジローは、テントの傍で寛いでいるシロの横に座った。


「コジロー殿、シロは眠たいです」


 昼間、はしゃいだ分疲れてしまったのかコジローの傍によって来てシロは肩にもたれかかる。コジローは正座してその膝の上にシロを寝かせた。


「んぅ」


 よほどの眠かったのかシロは簡単に寝付いた。コジローも眠りにつきたかったが、夜盗や化け物がいる野宿で熟睡出来る程、彼は剛胆な性格ではない。コジローは膝の上で安らかに眠るシロの髪を撫でる。


「シロ」

「シロは、おなかいっぱいですぅ」

「そうか」


夢の中でも飯の事ばかり考えているのにコジローも苦笑いを隠せなかった。


「シロ、本当は、俺と一緒にいるべきじゃないんだろうな。そうすれば、あの糞親父から離れられるのにな」


小さな声で漏れた、コジローの言葉は後悔の滲んだ声だった。



数日馬を駈けて二人は国境の街へとついた。数日の間にコジローの髭は伸びて二人の格好は薄汚れていた。


「遠かった!」

「そうだな」


 交互に睡眠の時間を取ったとはいえ、馬を操れるのはコジローだけ。コジローは、瞼を何度も瞬き眠たいのかあくびも多い。まだ昼頃とはいえ、夜あまり寝ていないので仕方ないのかもしれない。


「とりあえず、馬を預けて休むか」

「うん!」


 宿の一室を借りて、コジローはベットへ横になった。シロは,街を探検したいのかそわそわとしていたが、すぐに寝てしまったコジローの傍からは慣れるつもりはないのか、彼の傍に座っていた。暇なのか、足をぷらぷらとさせながら、彼女は鼻歌を歌う。


 夕方になりコジローは眼を覚ました。


「うぉ」


 瞼をあけて目の前にあったシロの顔に、コジローは驚きの声を上げた。シロは、悲しそうに彼を見ていた。


「こじろー殿」

「ああ、どうした」


 あまりに悲壮感漂う、彼女の表情にただならぬ事があったのかとコジローはシロを心配する。


「お腹すいた」

「は?ああ。確かにもう飯だな」


 外を見て日が暮れているのがわかり、ほっとコジローは息を吐いた。


「何食べたい?」

「肉!」

「またか」

「うん!」


 肉食なシロに飽きれながらコジローは彼女に手を引かれて街へ繰り出した。







 夕食をとり、身体を拭いた二人はベットの上で横に転がる。シロは、ポロシャツで肌を存分に晒してこりこりと飴玉を転がしていた。


「シロ、虫歯になるぞ」

「ぬぬぬ。でも、おいしいです」

「それで、虫歯になって大泣きしていたのは誰だろうな」

「もう、シロはならないです」


寝転がって首を横に振るシロにコジローは、ぷにぷにとした頬をつつく。


「後で、薬草でも嘗めとけよ」

「やだ、苦い」

「駄目だ」

「嫌だー」


薬草を取り出したコジローに、シロは捕まえられ彼の両腕から逃れようとする。けれどその抵抗もむなしく、シロの口の中に薬草は押し込まれた。


「にがいー」

「我慢しなさい」


シロに薬草を食べさして、コジローはベットの横に備え付けられている机に地図を広げた。


「遠いな」

「そんなに遠いの?コジロー殿」

「ああ、親父の影響力のない国だから、近隣諸国じゃないずっと遠い国だ。しかも大国か」


深刻な表情のコジローとは違い、シロの表情には喜色があった。


「シロは、どうしてそんなにうれしそうなんだ?」

「シロ、コジロー殿との旅好きだから。コジロー殿は好き?」

「おうともさ。シロがいればそれでいい」

「えへへ」


コジローがシロの頭を撫でると彼女は眼を細めた。


「シロ、旅費も考えて、この街で少しお金を稼ぐぞ」

「お金ないの?」

「ああ、ああみえてあの親父はけちだな」

「う、うん。けちんぼだ」


親父を悪く言うのが怖いのか、シロの声は震えていた。コジローはシロの手をつないだ。


「大丈夫」

「コジロー殿」

「シロは、あの親父の好きにさせないから。絶対に」


真剣な表情で、コジローはシロを抱きしめた。


「痛いです、コジロー殿」

「ごめん、でも」


力を緩めたコジローだがシロから離れる事はしなかった。


「シロもコジロー殿を守ります」

「ああ、頼んだ」

「はい」


コジローは眼を閉じて眠りについた。


二人が眼を覚ました時間は昼過ぎだった。


「寝すぎたな」


ぼさぼさになった髪をかきながら、未だにぼーと寝ぼけているシロの身支度をコジローが整える。服を着替えさせ、髪をといた。コジローも服を着替えてシロの手を引く。


「いくぞ、シロ」

「うん」


こくりと彼女は頷いた。飯の時間になれば意識も覚醒するだろう、コジローはそう思いながら宿の食堂へと足をすすめた。


「コジロー殿、なんの仕事をするのですか?」

「んー、魔物の狩りかな?」

「魔物。あまりお金にならないと聴きました!」

「状況にもよるかならぁ」


二人は、手をつないで依頼が受ける事が出来る酒場へと足を向けていた。おおよその村の依頼は、酒場が中心に執り行っていてそこで引き受ける事が出来た。


「で、なにかないかい?」


酒場のマスターに声をかけた、コジローに酒場のマスターは首を横に振る。コジローの隣で、シロが飯をがっついていて、食器とスプーンでかちゃかちゃと鳴らす音が響く。


「ないな。最近、これといった魔物は出没していない」

「そうか。邪魔したな」


残念そうにコジローは、会話の終わりを感じて飯を丸呑みしたシロの手を引いて立ち去ろうする。


「ちょっと待て」


酒場のマスターに声をかけられて二人は足を止めた。


「護衛の依頼、それも遠出だが受けるか?」

「どこまでだ?」

「ルークリアス帝国のフォルテまでだよ」

「誰だい?その依頼主は?」

「シンシアといったか。見てくれは貴族だな」


コジローは考えるそぶりをする。ルークリアスといえば、コジロー達が目指しているファルエマ帝国の隣国だ。そして、コジローの親父と敵対している勢力になる。コジローの出で立ちは、親父の勢力の出身とわかるもの。


「何処出身だ?」

「さぁな。少なくともこっちの出身じゃないな」

「何処がどこかわかっているのか?」

「ああ、ここはメリニアだろ」

「だったら」

「俺は仲介料をもらえればそれでいいしな。向こうさんも、腕の立つのなら誰でもいいと言っていったしな」


酒場のマスターのあまりのものいいにコジローは眉を潜めた。


「いくらだ?」

「あ?1日あたり5銀貨だそうだ」

「受ける、依頼主に言っておけ」

「まいど、明日の昼頃にここに来ておいてくれよ。後、名前を教えてくれ」

「わかった。俺はコジロー、こっちはシロだ」


酒場の飯を食べ終えたシロをつれてコジローはその場を後にした。


 コジローには疑問しかなかった。ここが小次郎達の国、メリニアの国境付近だということ。そこに敵対勢力の国の貴族がいる事。ましてや街に滞在していること。考えれば考える程、怪しさしかなかった。


 昼頃、シロを連れてコジローは街の酒場へとやって来ていた。


「貴女がシンシアか?」

「そちらが、コジローですか」


 お互いの問いに二人は頷いた。酒場のマスターに連れられて、待っていたのは十代半ばにもみたないだろう少女達だった。その少女の傍に、騎士が控えているがそれも随分と若い。


「依頼を受けるにしても一つ聞いておきたい」

「ええ、いいですわ。こちらも力を示していただきたいと思っていまして」

「いいだろう。何故、この国にいる?」


コジローの質問に、少女達と騎士達がなにやら小声でやりとりをする。相談がおわったのか、コジローへシンシアが問いの答を返した。


「観光ですわ」

「観光、ならどうして、傭兵等をやとう」

「その土地にいる人間に力を借りた方が安全でしょう?」

「俺たちが夜盗だったらどうするつもりだ?」

「ふふ、そうなのかしら?」


シンシアという少女は、笑って問いかけてくる。


「シロとコジローは夜盗じゃないぞ!」

「シロ、少しだけ口を閉じてなさい」

「わかった!」


手で口を抑えたシロ、コジローを除いて笑みの顔が浮かぶ。


「まぁ、いい。じゃぁ、その観光の帰りって言う事なのか?」

「ええ」

「じゃぁ、後は俺たちが実力を示せばいいのか?」

「お願いしたいわ。私たちも無能を雇う気はないもの」


シロが手を挙げる。コジローはそれを見てため息をはいた。


「シロ、しゃべっていいぞ」

「シロ。シロがやる!」

「だ、そうだけど。いいか?」

「ええ、もちろん。では、街の外でまっているわ」


ぞろぞろと一団が退室してから、コジローはシロへと振り返る。


「シロ、やり過ぎるなよ」

「わかった!」


活気のある返事に、本当に大丈夫かなとコジローは不安そうな顔を浮かべた。

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