第6章 決戦!!アルツール高原
ーーーー1ヵ月後。
ラカン隊がアルツール戦線に配属され、1ヶ月の日数が経っていた。
あれからアルツール戦線は各地を制圧、バスタードールの最出没戦域である山岳地帯・廃市街地帯・森林地帯を経由し、東の方角へと進軍。
倒してきた敵も多く、同時に命散った同志も多い……。
一方のアックス、レイミとラカン隊長は生存していた。しかし、3人以外の同志は途中で戦死し、頻繁な補充要員により、初期の部隊とはまるで別の部隊と化している。
ーーー《夜、平原》ーーー
アルツール戦線は放棄された廃墟をベースキャンプとし、拠点にしていた。
明日に控えたアルツール高原制圧戦、緊張で嫌でも静寂。気を紛らわす目的でベースキャンプを行き交う兵士達が何人か確認できる。
ーーーー寒い夜、ベースキャンプの中央で燃え盛る焚き火を前に、ラカンとアックス、レイミは今までの戦場を思い返し、感傷に浸る。
「少しは戦士らしくなったなアックス」
ラカンは優しく口を開き、アックスに親しく話しかける。
「そう言われても、ただ敵と戦って、何度も死にそうになって、何人もの仲間の死を見てきた。そうだな、前は身勝手に動いてたが、今は状況を察し、考えて動くようになった。それが?……」
アックスは言う。
気のせいだろうか、彼の気性以前より丸くなっている。
「成長したって事だ。この前まで平気でケンカをふっかけてたガキが嘘みたいに変わってる。わかるか?」
「前はそうだったけど、戦いで生き残るのに必死で自然と考えなくなった」
アックスは答えた。
「意外に単純な性格なのねアナタ」
レイミは横で軽く笑う。
それに対しアックスは(うるさいな)と、恥ずかしそうに返す。
寒い夜に3人は談笑。単細胞のアックスも1ヶ月も戦場にいれば性格が変わる。
「今まで俺も、多くの仲間の死を見てきた。今までの奴らは名前もロクに覚えず、死んでいった。俺はお前達がここまで生き残ったのが嬉しいんだ。これでも俺は、部隊を効率よく動かせる名隊長として上層部から評価されている。けど、俺は嫌いだ。仲間の死を代償にしているいたいでな、お前達は俺をどう思う?」
ラカンは言う。
「私は別に隊長が最低な人だと思わないです。むしろ腹が立ちます。仲間の死を忘れろとは言いませんが、隊長はちゃんと評価を受け入れ、これから戦に足を踏む者達に教えなければならない立場、前を向くべきです」
レイミは強気の発言。
「君は厳しいな、けど嫌いじゃない。そうだな、この戦いが終わったら俺と結婚するか?」
ラカンは冗談気な笑みで告白。
「フザけないで下さい。私は戦士に志願した時点で女は捨てている覚悟です」
ラカンの発言にレイミはムスっと頬を赤くし、返す。
「冗談だ、冗談。アックスお前は?」
ラカンは笑い、次はアックスに向ける。
「良い隊長と思う。これまでの戦いと、後、小さい頃にもアンタに助けられている」
アックスは言った。
すると、ラカン隊長は思わず顔色を変え、(お前と一度、会ってるだと?いつだ?)と口を開く。
―――パキッと焚き火の炭が割れ、静寂な雰囲気に包まれる。
「3年前だ。確かチャドの町、アンタは昔、町を救った鬼神兵の隊長と同じ声をしていた。俺が間違ってなければアンタはその時の隊長だ」
アックスは主張する。
「まさか、あの時のガキ?」
ラカンは思い出し、驚愕。
アックスの予感は見事に的中し、二人は思わぬ形で再開を果たす。
「そうだ。驚いたか?」
アックスは自慢気に胸を張る。
「不思議な巡り合わせだな。あの時のガキが、今では俺の部下か……。どうしてユーギガノスに?」
「ただ、力が欲しかったから。大切な人を守れる位の力が、俺は欲しかった。ユーギガノスに入れば力が手に入ると思ったからだ」
アックスは答えた。
「それで、ここに来てお前の言う力は手に入ったのか?」
ラカンは言う。
アックスは(わからない)と、首を横に振る。
―――すると、静寂のベースキャンプに兵士の怒号が響き渡る。慌ただしい声に反応し、テントから一斉に兵士が飛び出す。
「森林地帯の偵察隊から連絡が入った。バスタードールの集団と交戦中、至急増援を頼むと要請。動ける者は直ちに森林地帯へ向かってくれ!!」
兵士の怒号と同時、兵士達は駆け足で森林地帯へと向かい、ベースキャンプを離れる。
自分達も戦場へ赴かなければと、アックスとレイミは立ち上がる。
「お前達はここに残って拠点の警護にあたれ。俺は戦場へ出向く、命令が下るまで動くな!!」
ラカンは言い残し、森林地帯へと駆け走る。
状況は一変、数十名の兵士達は慌ただしくベースキャンプを離れ、戦場へ赴くのだった……。
そしてベースキャンプに静寂が舞い戻る。隣り合わせで焚き火に寄り添う二人。沈黙の寒い夜、アックスは口を開く。
「少し聞いていいか?。何でお前は戦士になろうとおもったんだ?」
「何故、そんな事を聞くの?」
(めんどくさいな)と、思わせる表情でレイミは返す。
「別に、ただの世間話だ。ここまで生き残った仲だから、教えてくれてもいいかなと思ったんだ。もちろん、俺も教える」
アックスは言う。
「私の家は訓練所。それも小さくて、今まで出世した者を輩出した事がないからユーギガノスの評価は低い。組織から評価される為、私が一人目の英雄となって組織から評価され、一家の訓練所を評価される為に私は志願した。それだけだよ」
レイミは言った。
「俺は簡単だ。ただ力が欲しかった」
「それ、隊長に話してた。他には理由はないのかしら?」
(無いな)と、アックスは簡単に答えた。
レイミは夜空を見上げ、思い出を振り返るように口を開く。
「初めてよね。二人で話をするの」
「そうだな。最初のオレ、変な奴だったろ?」
「そうね。あの頃のアナタ、私に勝負しろと突っかかってきて、人気の少ない場所で勝負して、私が叩きのめしたのを覚えているわ」
レイミは懐かしそうに笑う。
「その後、隊長にシバかれたっけハハハ……。こうして話してると、まるで昨日の事のように思えるよ。懐かしい」
アックスは名残惜しそうに夜空を見上げる。
「……都市に帰ったらまた、勝負する?」
レイミは言う。彼女の意外な言葉にアックスは(えっ?)と、驚く様子。ちなみにアックスは内心、彼女には勝てないと諦めている。
「私に勝ったら、私を好きにしてもいいわよ。どうかしら?」
レイミは勝負を持ちかける。アックスは勝負を仕掛ける立場から仕掛けられる立場に一変。レイミの条件にアックスは考える。そしてニヤけた表情で答えを決断。
「その言葉、忘れるなよ。体、綺麗にして待っとけよ……」
一昔の彼に戻ったのか、アックスは握手を求め、手を差し出す。
「どこまで強くなったか、見てあげる。けど、負けないわよ。もし私が勝ったら、アナタの大事なトコロ、去勢してあげる」
ガシッと、レイミはアックスの手を握り締め、固い握手。(望むところだ)と、アックスは強く握り返す。
二人の間に固い約束、生きて帰るのは簡単ではない。運命は二つに一つ、勝利と敗北である。戦場の掟はシンプルかつ残酷。生か死は己次第だ……。
―――後日。
補充兵が次々と派遣され、ベースキャンプ中に慌ただしく集結するユーギガノスの戦士達。
昨夜の増援から帰還した兵士達の中に、ラカンの姿は無かった……。帰還兵によると、立派な最後だったらしい。
戦争の準備が整い、アルツール戦線は士気を上げ、進軍。途中の森林域を12時の方向に進行し、全隊は広地にて待機。
そして数名の兵がアルツール高原の状況を視察に出向。
兵士達にすれば、待機する時間が緊迫のストレスだ。早く戦わせろ、でないと恐怖に圧し殺される。すると、戦線指揮官の無線水晶に偵察兵から連絡が入った。
「諸君、只今よりアルツール高原制圧戦を開始する……」
戦線指揮官の言葉に同志達は戦意の眼差しを浮かべ、立ち上がる。
戦線隊は鬼神化に変身。そして鬼神兵達は一斉に森林域を駆け、戦場に向かった。
黒く漂う熱煙、辺りは爆発地帯。倒し、倒され、戦場を地鳴りで響かせ、激戦。
目的地の巨大タワーは赤と黒のオーロラを帯び、魔力の高さを象徴している。
空からは同志の死体、バスタードールの光線、ランス鬼神兵の光弾が戦場に激しく降り注ぐ。
ーーーーしかし、ユーギガノスの戦士達は後退しない。雄叫びを轟かせ、敵を倒し、倒し、横たわる同志の屍を越え、未知数の距離の先のタワーを目指す。
「オラッ!!」
アックスの鬼神兵はバスタードールを斬り伏せ、戦場を駆ける。レイミはどこにいるか、それどころか、辺りがどうなっているかもわからない。と言うか、見る暇がない。
周辺から放射される光線、爆風。地面から現出する幾つものバスタードール人思いに斬り倒すユーギガノスの鬼神兵は止まらない。
ーーーーゴウッ!!
上空域に浮遊するバスタードールの群れは砲槍を構え、地上に光線を一斉放射。
地上に立つユーギガノスの鬼神兵達はバスタードールを巻き込み、大爆発。数え切れない戦士の命が、戦場に散った……。
爆発の風撃で後方にぶっ飛ぶアックスの鬼神兵は一回転、二回転と転倒。
ーーーーそしてアックスの鬼神兵は空を見上げる。
視界に映るのは上空にて激しく交戦するバスタードールと鬼神兵。そして地上に降り注ぐ死体、光弾と光線。光景はまるで、この世の終わり。終末戦争とはよく言ったものだ。
「ーーーーッ!!」
鬼神兵のアックスは、右側数メートル先の隆起地脈に移動。
地脈を盾にし、前方向から一斉に放射させる光線から身をガードし、やり過ごす。ここは戦場だ。止まったら死ぬ。
身を屈め、鬼神兵のアックスは軽く一呼吸し、体勢を立て直す。そして地脈から離れ、再び戦場を突っ切る……。
ーーーーッ!!
地面に潜むバスタードールは活動。
地面を操り、一斉隆起。
異形と化した地脈は戦場を駆ける鬼神兵達を飲み込もうと流れ込む。
鬼神兵達はは回避しながら突き進む。途中で飲み込まれ、土柱に刺さり、途中で戦死する者もいるが、仕方がない……。
「ーーーーッ!!」
戦場一帯に漂う黒い熱煙。
熱煙に紛れ、バスタードールの群れは光線を辺りに一斉放射させ、接近。
爆煙が充満する中、地上のランス鬼神兵はクレーターに前屈みの体勢で足を止め、光線を回避。そして光弾を一斉射出。
「ーーーーッ!!」
ソード鬼神兵は光線をかわし、バスタードールを斬り伏せ、駆ける。激化する戦場、轟音と雄叫びが交じり、戦場の壮絶を物語る。
ーーーー戦況は突如、一変した。
バスタードール達は活動停止し、戦場に静寂が訪れた。ピタリと停止するバスタードールの光景に、鬼神兵達は戸惑い、戦いを止めた。
戦場一帯に流れる笛の音色、まるで不気味な葬送曲。曲に合わせるように、バスタードールは音色に耳を傾け、大人しく体を揺らす。
「ーーーーッ!!」
事態は動いた。
目的地のタワーが虹色宝色の輝きを放ち、一帯を照らす。
ーーーーバスタードール達はタワーの輝きに視線を傾け、一斉に飛翔した。
一斉集結したバスタードールは黒い繭をタワーを異形化し、対処法が分からず、鬼神兵達は戸惑うばかりだ……。
次の瞬時、黒い繭は白い輝きを放ち、戦場一帯を不気味に照らした。
「ーーーーッ!!」
一体、何が起きている……。
一帯の鬼神兵から精神体が飛び出し、鬼神兵達は次々と倒れ伏す。
戦場は混沌、精神体は自身の魔力を表し、吸収されれば反動で鬼神化が解除され、下手すれば死ぬ。飛び出した精神体は黒い繭へと集結され、黒い繭の養分となる。
「ハァ……ハァ……」
魔力を吸収され、鬼神化が解けるアックス。戦いの疲労が一気に積もり、息を切らす。
「無事か……」
居合わせたレイミは駆けつける。彼女も同様、魔力を吸収させ、反動で鬼神化が解けていた。
しかし彼女は魔力を吸収されても息は切らしておらず、顔色も余裕だ。
やっぱり鍛え方が違うらしい……。
「俺はな、けど他の奴らはロクに動けそうにない。お前は平気なのか?」
アックスは言う。
「問題はないわ。ショックで鬼神化が解けたけど、壊れてないから戦えるわ。けど、あの繭は次の敵、気をつけて……」
レイミは繭に視線を向け、再度、鬼神化に変身。
「こんな状況に変えたんだ。敵以外思わない。それに1つだけわかった。あの繭の中身を倒せば、戦いは終わる。勝利は目の前だ」
アックスは立ち上がり、そして鬼神化に変身。
「そうね。私達が勝てば上層部から栄誉が贈られるわ、期待しましょ」
レイミのソード鬼神兵は剣を構える。家族の為、評価を上げる為にも負けられない。
「ーーーーッ!!」
魔力を内部に極限まで圧縮させ、ドクンドクンと紅く胎動する繭。胎動の反動で一帯を震動させ、超大なプレッシャーが戦場にのしかかる。
―――戦場に立つユーギガノスの戦士達は鬼神化に変身し、戦闘体制。しかし、魔力を吸収された事により、多くの戦死者が確認できる。兵力はダウン、たが、彼らは諦めない。
――――ッ!!
繭は孵化し、裂け口から灼色の燐紛を放出させ、成体が姿を現した。
身長は3メートル強、頭部には2つの角、灼熱の鋭眼に細い顎、細い口。アメジストに輝く硬質肌の強靭な体躯。広背には全長10メートルの翼手。右手にはバスタードール同様、形状変化する杖を装備。身に纏う熱、バチバチと帯びる雷流は奴の力量を表し、一帯を畏縮させる風貌だ。
(…………)
ユーギガノスの鬼神兵は文字どおり、畏縮。奴から遠い距離に立つが、奴のプレッシャーが戦場一帯まで行き届いている。アポリュオン、それが奴の正体だ。バスタードールと多大な魔力が1つに集合し、異形化させた姿である。
これが、奴らの目的だった。ユーギガノスの戦線隊を最終地点まで進軍させ、おびき寄せる。
そしてタワーの吸収能力で戦線隊の魔力を吸収し、戦線衰滅と同時にアポリュオンを創造。
ーーーーゴウッ!!
アポリュオンは翼手を羽ばたかせ、数百メートルの高さまで飛翔。浮遊し、現環境を自身に適応させる。一方、地上では生き残った鬼神兵達は応戦体制。ランス鬼神兵は砲槍を構え、アポリュオンに狙いを定める。
ーーーーッ!!
ランス鬼神兵達は光弾を一斉放射。
ーーーー地上から放射された光弾は爆煙を発生させ、アポリュオンに一斉に直撃した。奴の空域にて充満する爆煙、アポリュオンの姿がわからない。そしてランス鬼神兵達は一斉放射を止めた。
(やったか……)
アックスとレイミの鬼神兵は感覚を研ぎ澄ませ、奴の姿を確認を計る。
(…………)
爆煙が晴れ、アポリュオン空域にて健在。傷1つすら見当たらず、地上の鬼神兵達に(そんな馬鹿な)と、戦慄。光弾は魔力障壁を貫く威力を持っている。なのに無傷は異常だ。
アポリュオンは杖を掲げ、詠唱。自身の属性である破壊エネルギーを杖先に収束させ、黄金の魔力球を造り出した。アックスとレイミの鬼神兵は危機を察し、後方へ駆け走る。
そしてアポリュオンは地上に狙いを定め、魔力球を投げ放った。
「ーーーーッ!!」
魔力球は地表に衝突。3マイル範囲の爆発と強大な衝撃波が戦場一帯に展開し、爆煙が全土に充満。煙が晴れ、戦士達は衝撃。一帯に映るのは円形のクレーター。威力の余り、クレーターからは熱が帯び、奴の力量を物語る。
アポリュオンはクレーターに降り立ち、杖を光剣に形状変化させ、戦る気。そして、鬼神兵達は戦意を最大限まで引き出し、アポリュオンに一斉突撃。
「ーーーーッ!!」
アポリュオンは雷流を纏わせ、破壊エネルギー20パーセントの力を解放。
そして剣を地面に降り下ろし、一帯に衝撃波を展開。鬼神兵達は一斉に吹き飛んだ。力の差は次元違いだ……。
「怯むな!!。突っ込め!!」
ユーギガノスの鬼神兵達は雄叫び、背水の覚悟で特効活動。するとアポリュオンは剣を掲げ、破壊エネルギーを40パーセント消費し、地面の養分を自身のエネルギーに変異させる。
ーーーーゴウッ!!
一帯に無数の黒球が地面から展開。黒球に飲み込まれた鬼神兵達は消滅、次々と命を散らしていく……。
一瞬の出来事だった。ユーギガノスの戦線隊は消滅した。
「残ったのは私達だけね……」
レイミの鬼神兵は剣を構える。
「どうする。逃げるか?」
アックスの鬼神兵は言った。奴との距離は一キロ、鬼神化を解いたらまだ逃げられる距離だ。
正直に言って、奴の力量は想像以上に凄まじかった。勝てる気しないし、逃げたい。
「私は逃げないわよ。奴は栄誉の塊、何としても倒したいわ……」
鬼神兵のレイミは不敵に返し、戦意を燃やすのだった。
「言ってるうちにホラ」
アックスの鬼神兵に映る光景。アポリュオンが二人を発見し、長距離から視線を向けていた。
「私は行くわよ!!」
鬼神兵のレイミは剣を横に構え、駆け抜ける。




