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新月の夜に  作者: 浅月
8/13

本当は君も気づいているのだろう?

○登場人物

天野朔也:主人公

多々良:いじめの主犯

柳:いじめの共犯

倉田くらた まこと:朔也の友人、千鶴とは双子、通称マコ

石崎いしざき 康太こうた:朔也の友人、通称ザキ

医者:名医らしい。朔也がよく怪我するため、いつも面倒を見ている

倉田くらた 千鶴ちづる;朔也の友人、真とは双子

しばらくの後。

レッドインパクトのメンバーは残らず、地面に倒れていた。

意識のあるのは、朔也、多々良、柳の三人である。


「ザコは束になっても大したことはないな」


もちろんそれは、朔也の虚勢だった。

現に彼は、全身怪我だらけで、立っているのが不思議なぐらいだ。

朔也は、よろよろと二人の女子に近づく。


「やっと話ができるな、お嬢さん方」


二人の女子はガタガタと震えて、声が出せない。


「俺が言いたいことわかるよね?」


二人の女子は、ブンブンと頭を立てに振ることしかできない。


「そうか、わかってくれたか。じゃあ、もういじめなんてくだらないことするなよ」


二人はさっきよりも、大きく頭を立てに振った。


「よし、ならもう帰って良いぞ。もし、いじめなんてまたやったら……言わなくてもわかるだろ?」

「は、はひ。どうもすいませんでした」


そう言って、多々良と柳は、廃工場から出て行った。

それを見届けて、朔也は座り込んだ。


「とりあえず、当初の予定は達成だな。……あ~やばっ。目がかすむし、左腕は感覚ない。頭もフラフラ……これは流石にやばいかも」


朔也は目をつむった。

彼は、もう自分の意思では動けない。

それから、少しして彼に話しかける者が現れた。


「おい、サク。起きろ!死んでんのか?」

「サク、僕との約束を果たす前に死んだら祟るよ」

「う……なんだ、マコとザキじゃないか。どうしてここに?」

「千鶴からサクを捜索しろって命令されて、ザキとお前を探してたんだよ」

「あ…そういえば、映画の約束すっぽかしてしまった」

「まぁ、詳しい話は後だ。とにかくまずは病院だ」

「確かにそうだね」

「んじゃあ、後は頼んだ。俺、もう動けねぇ」

「全く、世話のかかる」

「だね」


朔也は意識を手放した。


………

……


次の日の夕方。

病院の個室にて。

朔也と医者が話している。


「まぁ全治一ヶ月ってところだね」

「退院はいつできます?」

「退院は、今週末にしとこうか」

「わかりました」

「それと」

「はい?」

「君は怪我をするのが趣味なのかな?」


医者は、笑顔だが威圧的な笑みだ。


「いやだな先生。そんな人間いるわけないじゃないですか」

「私もそう思っていたよ、君と出会うまでは」

「運命の出会いってやつですね」

「君と私の縁は、君が一方的に結んでくる迷惑なものだ」

「まぁ先生は儲かるから良いじゃないですか。一応、俺もお客さんなんですよ?」

「私は、患者を客だとは思っていない。全く、治しても治してもすぐ怪我をするなんて君ぐらいのものだよ」

「先生に会いたいがために俺は常連になってるかもですね」

「私は、年下に興味はない」

「俺は先生のこと好きですよ?」

「はいはい。じゃあ、私が嫁に行き遅れたら君の誘いを受けよう」

「もうすでに…」

「何か言ったかな?」

「いいえ、なんでもありません」

「さて、私は忙しいので失礼するよ」


医者は立ち上がり、部屋から出ようとする。

しかし、ドアの前で立ち止まる。


「あ、そうそう1つ言い忘れていた」


医者は朔也に振り向かずに口を開いた。


「なんです?」

「君、今回みたいなことすると次はないかもしれないよ」

「………」

「君の体は今まで無茶し過ぎた。ダメージが体に蓄積している。もう体の機能が完全に治ることはない」

「………」

「まぁ、日常生活を送るのに支障は少ないだろうが」

「………」

「本当は君も気づいているのだろう?日に日に運動神経や感覚神経が落ちていることに」

「………」

「だから、女子に刺される。だから、今まで瞬殺だったザコ共に拉致られる」

「……どうしてそれを?」

「傷口を見れば、何が起きたかわかるさ。君と私の付き合いも、そこそこ長いしな」

「……確かに」

「話を戻そう。君は今の状態でも全身の神経を集中させれば、少しの間だけ全盛期の能力を発揮できる」

「それは良かった」

「でも、それはおすすめしない。やはり、体に負担がかかりすぎるからね」

「はい」

「以上、説教終わり。じゃあね」


医者は、部屋から出る。


「次はないかもしれないか…」


朔也は窓の外をぼーっと見ている。


「ま、そん時はそん時だな」


病室のドアが開く。

一人の女子が勢いよく、入ってきた。


「朔也!」

「よお、千鶴」


その女子、千鶴は朔也に抱きつく。


「お、おい」

「うるさい、バカ、黙れ」

「あの~もしかして、心配してた?」

「当たり前でしょ!あんたはいつまで待っても来ないし、電話にも出ないし……真から病院行ったって聞いたときは、死んだのか思った」


千鶴は静かに泣き始めた。


「俺が怪我するのはいつものことじゃないか」

「ぐすっ…だからいつも心配なんじゃない!」

「それは…ごめん」


「う~す、サク。見舞いに来たぞ~」

「来たぞ~」


真と石崎が入ってきた。


「もしかして、お邪魔虫だったかな?」


千鶴は顔を真っ赤にし、朔也は苦笑いをしている。


「わ、私今日はもう帰るから」

「おう、見舞いサンキューな」


千鶴は急いで退出した。


「いや~なんかすまんな」

「良いところを邪魔して悪かったね」

「そんなんじゃないって」

「にしても、昨日はあの後大変だったんだぜ」

「だね、サクをマコが担いで、病院に連れて行ったまでは良かったんだけど」

「良くねぇよ!すげー疲れたわ、まじで」

「それは悪かったな」

「んで、その後遅れてきた千鶴は泣きじゃくってね」

「だったな。朔也死なないでーってずっと祈ってたんだぜ」

「あれは健気だったね」

「んな、大げさな。死ぬほどの怪我じゃなかったろうに」

「アホ言うな。お前血を流し過ぎで、結構危なかったらしいぞ」

「そうそう。ていうか、昨日のこと詳しく説明してくれよ」


朔也は、二人に事情を説明した。


「なるほどね。それで、僕にあの教室を掃除させたのか。教室に、大量の髪の毛と血のついたハサミが落ちてて焦ったよ」

「掃除ありがとな。なるべく大事にしたくなかったんだ」

「まあ、良いけどね。それより、約束覚えてる?怪我のせいで忘れても、僕は怒るよ」

「覚えてるさ。お宝本を五冊だろ?任せとけ」

「覚えてるなら良いけどね。もちろん、僕の好みのじゃないとダメだよ」

「相変わらず、ザキは脳内桃色だな」

「マコが変なんだよ。健全な男子高校生たるもの、常にエロエロだよ。ね、サク?」

「それはそうと、お前らはなんで俺の居場所がわかったんだ?」

「完全にスルーだ」

「完全にスルーだね」

「うるさい。で、なんで?」



「それは、私が説明しますね」


病室に朝霧と宇佐美が入ってきた。


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