これはゲームさ、どうだろう?
○登場人物
天野朔也:主人公
赤崎:レッドインパクトのヘッド
レッドインパクト:約50人の不良集団、最近勢力を伸ばしてきた
レッドインパクトがアジトに使っている廃工場にて。
チームのヘッドを含め、50人ぐらいの若者たちが集まっている。
「なるほど、だいたい事情は分かった。その男は今、どこに?」
「車に乗ってます。多分まだ気を失っているかと」
「よし、連れてこい」
そして、朔也は担がれてきた。
まだ気を失っていて、地面にうつぶせに倒れている。
「まだ生きてますね。どうしますこいつ」
「そうだな。一応、お嬢さん方の客だから、君達の意見も聞きたいかな」
「あたしは、あんた達に任せる」
「私は~面白ければ~それでいいし」
「なるほど、じゃあ俺の流儀でやらせてもらおう。とりあえず彼には起きてもらわないとな」
「それは、俺たちに任せて下さい」
男達が数人にやにや笑いながら、朔也を殴る。
しかし、起きる気配はない。
「全然、起きねぇな。よし、水持ってこい」
「はい」
下っ端らしき男は水を持ってきて、朔也にかける。
「冷たっ」
朔也はよろよろ起き上がる。
そして、周囲を見回し現状を確認。
その後、水に濡れた髪をかきあげ、口から流れている血をぬぐう。
「おいおい、もっと優しく起こすことはできなかったのか?」
「あいにく、ウチはそんなサービス行ってないんでね」
「サービスが行き届いてないな。クレームもんだぜ。……つか、あんた誰?」
「人に物を尋ねる時はまず自分からだろ?俺は、マナーを重んじるタイプだからな」
「なるほど。俺は、一円高校2年天野。別に覚えてもらわなくて良いけど」
「それはどうも天野君。俺は赤崎、一応このレッドインパクトのヘッドをやってる」
「あんたが頭か。んで、俺はこの後どうなんの?」
「そうだな…俺たちに手を出した奴らは服従させるのが、一応ここのルールだ」
「つまり、俺をリンチする訳ね。あーやだやだ」
「それは申し訳ない。ウチの部下は血の気が多くてね」
「俺は貧血気味だけどな」
「そのようだね。だいぶ血を流しているようだ」
「わかってるなら、帰らしてくれない?」
「それはできない相談だな。だって、君リベンジに来るタイプだろ?」
「あ、やっぱりわかる?」
「だと思った。そういうの面倒くさいからさ~ここで死んでくれない?」
赤崎はニヤニヤ笑っている。
「だが断る」
「だろうね。そこで、俺に1つ提案がある。聞いてみないか?」
「よし、聞こう」
「簡単な話だ。俺と君、サシでやろう。他の者達には手を出させない。これはゲームさ、どうだろう?」
朔也は、腕を組み思案する。
「君にも、悪い話じゃないと思うけどね。なんせ君が選べるのは、俺の提案に乗って俺を相手にするか、問答無用にウチのチーム全員を相手にするかの二択しかないのだから」
「……よし、そんなに俺と遊びたいんなら遊んでやろう。その話乗った」
「話のわかる男だ」
赤崎は、地面にチョークで線を描き始める。
そして、丸い円を書き終え、チョークを放り投げる。
「では、ルールを説明する」
「ルールなんてあるのか?」
「これは、ゲームだからね。ルールは2つ。この地面にひかれた円から出ない。武器は禁止。以上だ。簡単だろ?」
「勝利条件は?」
「相手を気絶させるか、まいったと言わせる。それと、円の外に出ても負けだ。あと、俺と君以外は円の中に入れない。他に何か質問ある?」
「特にないな」
「あ、それと、もちろん死んでも負けだから」
赤崎はニヤニヤ笑いを崩さない。
そして、円の中に、赤崎と朔也が入る。
他のレッドインパクトのメンバーが騒ぎ出す。
「ウチのヘッドはこのゲームで負けなしだぞ。お前なんか瞬殺だ!」
「ヘッドーー!殺れーーーー!」
「死にぞこないはさっさとくたばれー!」
「ウチに手を出したことを地獄で後悔しろ!」
周囲のヤジを軽く無視して、朔也は赤崎をにらみつける。
赤崎は、相変わらずニヤニヤ笑っている。
「じゃあ、このコインが地面に落ちたらスタートだ。準備は良いかな?」
「いつでもどうぞ」
赤崎は、右手の親指でコインを上にはじく。
そして、コインは地面に落ちた。