天は人の上に人を作らずフラグを立てた 番外1
気持ち悪いです。ナチュラルな気持ち悪さを目指しました。
見なくても支障はありません。寧ろ見た方が支障がありそうです。
女性の月経の表現や、性的表現もあります。性描写は多分ありません。
不快な気持ちになったりしても自己責任でお願いしますです。はい。
あ、突っ込みはセルフです。
『お兄ちゃん、朝だよ! 早く起きて! 鬼が来るよ!』
俺、神永蕾和の朝は、愛しい女、藤峰桜の声から始まる。
「ん……桜、おはよう…」
『お兄ちゃん、朝だよ! 早く起きて! 鬼が来るよ!』
桜(八歳)の愛らしい声に、毎朝爽快な気分で目覚める。俺のために張り切って起こす(彼女が自宅で実兄を起こす時に盗聴し編集した声であってこいつのためではない)桜に、お礼としてキスを送った(隠し撮り写真に)。
その後、軽く仕事を片付けてから、俺は桜が登校中何か危険に巻き込まれないよう、車で後ろから見守りながら、学校に向かった。
つい先週、漸く桜とちゃんと(?)会話が出来た。資料室では、気配を消し近付くも椅子の上に立ち可愛くお尻を振る姿(不安定なだけだっただけ)にノックアウトされ、話し掛けるタイミングが掴めず、助けても、抱き留めた時の柔らかさや甘い香り、それから不慮の事故で揉んでしまったまんまるな胸の感触に興奮しきり(怪我を口実に長く抱擁してしまった。髪を撫でてくれた時にはもうヤバかった。ナニが)、ちゃんと話せなかったが。今回はちゃんと計画を立てていた。
あの日は、少々トラブルがあり朝の護衛が出来なかった。あろうことかその隙に、佐藤勇治が桜と登校していたため、もうゆっくりとだなんて悠長な事は言っていられなくなった。いくら佐藤勇治が桜の従兄弟で義姉に恋慕していようと、桜の愛らしさに負けないはずがないのを失念していた。
元々、本来ならば高校の入学式で俺と桜は運命の再会を果たし、愛し合うはずだった。だから、新入生代表として挨拶もしたのだし、ずっと桜に向かって笑みを向けていた。…周りの奴等が、何故か騒いだため桜は耳と目を閉じてしまい、気付いてはくれなかったが。
その後も、何度か接触を試みるも、何故か周りの、特に女が邪魔し近付く事すら出来ず、俺は長期戦を覚悟したのだった。何せ高校三年間、俺達はずっと同じクラスなんだから。時間はある…、はずだった。
だが、こうなっては仕方ない。あんなに可愛い桜に、男どもが変な気を起こさない訳がない。(そりゃお前だ)
俺はいつもパンパンだ。ナニがとは言わない。(オイ)
桜の携帯と髪留めに仕込んだGPSで、詳細な位置が分かる。それを使い先回りをし、偶然を装い会う事にした。
前に、桜の護衛に間に合わなかった時(護衛は部下に行かせた)、気紛れで歩いて登校した時の事だ。リアルタイムで送られてくる桜の様子(映像)をうっとり見ていると、角から近付いてくる気配を感じた。走っているようだし、気配は素人のモノだったから避けたのだが、何故かこちらに突っ込んできて勝手にぶつかり勝手に倒れた。どうやら同じ高校の女子生徒のようで、勝手に転んで勝手に下着を見せたくせに何故か怒っていた。桜との約束があるので手を差し伸べ立たせてやった。
その時の事を流用し、少し強引だが、偶然ぶつかったように装い近付こうと思ったのだ。あわよくば、よろけたのを抱き留めて、笑顔でお礼を言って欲しい。そしたら俺は(以下略)。
そして、その時が来た。大変遺憾な事に、桜は佐藤勇治の家に行くため小走りで角を曲がってきた。愛らしい悲鳴を上げ俺にぶつかった桜を支えようと腕を伸ばし………ふわりと香った汗の混じった甘い芳香に、一瞬頭が真っ白になった。
そのせいで、桜は転んでしまい、俺は大変な状態のアレを隠すため膝を付いたが………そこには桃源郷の入り口があった。
桜の下着の柄は常に把握している。身体に変調はないかと毎日入浴中の桜をチェックしている。だから、ある意味見慣れているはずだが―――あの柔らかな白い太ももと、大人っぽいデザインの下着は実にけしからん。実にイイッ。画面を隔てて知っているのと、直に生で見るのは全く違う。俺は奥歯を食い縛り、暴発するのを耐えた。
顔を真っ赤にして涙目で上目遣いに睨んでくる桜の誘いに応え、押し倒しそうになった。あれを耐えるなど、修行僧にも難しいだろう。(そもそも誘ってない)
どさくさに紛れて桜の手を握った時など、天界に導く天使を幻視した。(病院行け)
だが、忘れろと言った桜に応えられない不甲斐ない俺を事故だからと責めず、下着を見てしまったのだから殴ってもいいと言ったのに(桜以外のぱんつには興味すらなかったので初めて言った)、寧ろ殴って欲しかったのだが(キモい)、慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら(実際はただの苦笑)断った桜は、きっと慈愛の女神の生まれ変わりなのだろう。(ただのバカだな)
桜を立ち上がらせ、そのまま行こうとした桜に、これからは名前で呼ぶと宣言したのは、自分を褒め称えるべき偉業だ。実はかなり緊張していたが、真っ赤になりよたよた歩く桜が可愛すぎて動けなかった。よくやった、俺。後日ヨータに、桜は俺の声に弱いと教えられた。流石ヨータだ。
それから、一週間。嬉しくて四六時中顔は緩みっぱなしでだらしなく崩れ、桜に甘く囁き、尽くし、共に過ごそうと周りを振り払い声を掛け、一緒に登校したくて自宅にも迎えに行った。何故か桜は、日に日に顔が強張り引き攣っていったが……何か悩みでもあるのだろうか。二十四時間毎日様子を見ているが、彼女を煩わせる物はなかったが。見落としたか…?
その日の俺は、桜と一緒に昼食を取りたくて、少し仕組んだ。いつもは、屋上で一人で(・・・)桜に視姦(観察)されながら食べている。桜には出来るだけ心地好く食べて欲しいから、屋上を選んだ。偶に中庭や教室でも食べる。
桜は、俺をよく見ている。親友だと言う七瀬律との会話から、俺のフラグを見ているらしい。相変わらずだな、と嬉しく思ったが、あんなに熱心に見られては落ち着かない。主に下半し(死ねばいいのに)…そこに愛情があるかと言えば、あまりない。
実験動物を見るような冷たさにぞくぞく(興奮的な意味で)し、隠し切れない好奇心にほのぼの(悶えながら)し、目の保養と言ううっとりした目線にどぎまぎ(緊張)し、少しだけある親愛の情にドキドキ(愛ッ)した。息子よ、気持ちは分かるがそう興奮するな。確かに最初の頃は我慢出来ず学校のトイレで、今でも家に帰り(以下略)。
それはさておき。
長期戦を覚悟した四月に、せめて桜には笑顔でいて貰いたいと思い、工場を買い取り桜好みに作らせた缶のココア(名称は欲望の現れ『SAKURA×TSUBOMI』)を学校の自販機に加えた。それを嬉しそうに飲む桜を見て、俺も笑顔になった。可愛すぎる…! だが、俺に向けた訳ではない笑顔は同時に苦々しく、ココアに嫉妬した。
そのココアを、いつもより少ない補充で午前中には売り切れるようにし、買えなかった桜に予め用意しておいたココアを渡し、可愛い笑顔を貰い、昼食に誘う。が、今日に限って殆ど買われなかったらしく、仕方なく四時間目はがちゃこんがちゃこんとココアを買い占めた。同じ物を飲むって言うのも惹かれるので、一つだけ残しておこう。残量など把握済みだ。
買えずにしょんぼりする桜は可愛かった。自販機の前で俺の名を呼んだ姿に感激した。引き留めるためとは言え、触ったヨータが憎い。
そして、桜の手を握り(どきどき)顔を近付け(はあはあ)囁いて(もんもん)、何故か顔面蒼白で気を失ってしまった桜を抱き締め(むらむら)匂いを嗅ぎながら(くんかくんか)抱き上げ(ふにふに)保健室に運んだ。
何故気絶したか分からず首を傾げていると、ヨータに「お前のせいだ」と呆れられた。何故だ…。
俺は、自宅に桜の部屋も作ってあるし、子供部屋や二人だけで暮らす離れも用意している。老後俺と桜とヨータの三人で暮らすための家を建てる土地も買った。海辺の自然溢れる場所だ。だが、心を通わせるまでは手を出さない。当然だ。ちゃんと自制している。なのに……何故、避けられるんだろうか。
あれ以来、徹底して俺を避けようとする桜。勿論居場所は常に把握しているから無意味だが、逃げようとする桜も可愛い。これが俗に言う放置プレイとやらだろうか? 胸が痛いが、桜に与えられた痛みだと思うと(まあ、桜以外に避けられたところでどうでもいいが)、心の底から何かが沸き起こってくる。嫌じゃない。寧ろこれは、快感だ。
逃げられると追いたくなるのが男の性だが、ヨータが今はそっとしておいた方がいいと言うし、少々気に食わないがヨータが彼女から直接原因を聞き出すと言うので耐える。
桜……放置プレイもいいが、俺は桜ともっと話したいぞ。そして、で、で、デートに誘う。…くっ、今から緊張してきた…! デートに誘ったら、笑顔を向けて貰って、喜んで貰って、あ、あわよくば手なんかも繋いだりして…! くっ、想像だけで動悸が激しくなり止まらないだと…っ!? いや、話し掛けようとしただけで身体が強張り動けなかった去年よりはマシか。(ヘタレか)
だがそうするには、今は我慢しかない…。桜に、あの頃のように純粋な自然な笑みを向けて貰うには。
そう、俺と桜の運命の出逢いを思い出した。
***
当時の俺は、酷く冷めた子供だった。
僅か五歳にして、すでに大学卒業レベルの知能を持ち、何事も数度やれば超一流の技術を発揮出来た。世界有数の財閥である我が家の当主である父は海外におり、跡継ぎとして教育を受ける年の離れた兄は忙しく、母は二歳の時に亡くなり、家族の愛情をちゃんと受けていなかったのも、原因だろう。
そんな俺が、気紛れに俺付きの運転手に車を走らせ、適当な場所で降り、近くにあった公園に入った。一般の同年代がどういう存在か、知りたかったのだ。
走り回る子供に、それを笑いながら見守る母親。俺はそれを冷たい目で見ていた。……今思えば、羨ましさもあったんだろう。
世界が全て灰色に見えていた俺は、ただ一つ。公園に視線を巡らせた時、たった一点だけカラーで見え、驚きに目を見開いた。
それは、黒い髪を二つに結った同じくらいの女の子だった。彼女だけは、キラキラと輝いていて。彼女を見ていたら、先程までは何でもなかった光景すらキラキラ輝き始め、彼女から伝染するように世界が色付いた。
俺は生まれて初めて動揺した。こんな事初めてだったから。…それが運命の出逢いで、後の俺の女神(天使でも妖精でも可)だなんてその時は知らなかったから。
『おい』
『んう? っぴゃああああああぁぁっ!! なぞはたおばけえっっ!!?』
……あれは、衝撃的だった。
一人足をぶらぶら揺らしながらベンチに座って寂しそうにしている彼女に、不遜な態度で話し掛けた俺は、突然叫ばれ驚き固まり、その間に逃げようとする彼女を、思わず飛び掛かって捕獲した。…押し倒すとか、あの時の俺は随分積極的だったな。
彼女を落ち着け、自己紹介した俺。彼女の手を握り、肩も腕も太ももも全てぴったりくっ付けベンチに座った。
『あのね、さくらはふじみねさくらって言うの。よろしくね、ライちゃん!』
そう言って笑った桜に、俺は真っ赤になった。今でも昨日のように、胸の高鳴りまで思い出せる。あれは、可愛すぎた! 子供で良かった。精通してたら襲っ(以下略)。
その後、何故叫んだのか聞くと、俺の頭に様々な色や大きさの旗が立っていたからだとか。よく分からなかったが、桜が言う事だからすんなり信じた。
桜はその(人には見えない旗が見える力の)せいで変な子扱いされているらしく友達がいないそうだ。俺は驚いた。こんなに可愛いのに友達がいないなんて、周りの奴等はなんて見る目がないんだと。だが、同時に桜の笑顔は俺だけの物なんだとほの暗い喜びも沸き起こった。我ながら腹黒い子供だった。
SPは全て追い払い、日が暮れるまで桜と遊んだ。それから毎日。
出逢ってから十五日目。桜は近々引っ越すらしく、この公園にはもう来ないそうだった。
泣きじゃくる桜が可愛かったが、同時に心が軋み、ぎゅうっと抱き締めた。際限なく沸き上がる愛しさが、自分でも制御出来ず――…まあ、有り体に言えば、暴走した。
まず、大きな犬を手配し吠えさせ桜が怯えたら逃げ、吊り橋効果を狙った。走って息を切らした桜に、俺は問い掛けた。
『桜、今ドキドキしてる?』
『ぜひゅっ、はっぁ、?』
不思議そうに首を傾げるが頷いた桜に、俺は全く息を乱さず汗もない無表情で迫った。当時は表情が乏しかった。
『ドキドキしてるのは、桜が僕を好きだからだよ』
『ふえ…? さくら、はふ、ライちゃん、好きだよ?』
『…違うよ。こういう事する好きだよ』
『へ……んむうっ!?』
そう言って俺は、桜の唇を奪った。どころか、舌まで捩じ込んだ。我ながらマセたガキだった。
すでに桜は家族以外との経験がないのは調査済み。俺は桜のファーストキスを奪い、あまつさえディープキスまでした。よくやった、俺!(バカ)
『っぷはあ!』
『かわいい、俺の桜』
はふはふと喘ぐ桜を抱き締めた。顔を真っ赤にして可愛かった。
俺は、物陰にいたはずの黒服SPが出てきてオロオロし始めたのをぎろりと睨んで引っ込めさせた。
『ドキドキする?』
『けほっ……うう〜っ、苦しかった!』
『ごめん。好きだよ』
『はふっ、女の子にやさしくないひとは、きらい!』
アレには堪えた。ぷいっとそっぽを向く桜は大変愛らしいが、嫌いって……俺は生まれて初めてショックを受けた。桜に逢ってから、俺は色んな『ハジメテ』を経験している。だから桜の『ハジメテ』は全て俺のも(以下略)。
ショックだった俺は、桜のピンク色の頬を撫でこちらを向かせ、ちゅっとキスをした。セカンドも俺のモノだ。その後も全て俺のモノだが。
『なら、女に優しくしていたら、僕のよ、嫁になるか?』
『ふえ、よめ? およめさん? でも、』
『そうだ嫁だっ。いいな、女に優しくなってやるから、桜は僕と結婚して僕と暮らして僕の子供を産んで僕だけに笑い掛けて僕と年を取って僕と二人で生きて僕と一緒に死ぬんだ。…いいな』
そう言ってまたキスをして、ドキドキしてると頷かせ、俺のお嫁さんになると言質を取った。
『ふあぁ…っ、さ、さくら、ライちゃ、のおよめしゃっ…にゃるぅ…!』
録音した言質…誓いの言葉は、結婚式で流そうとちゃんと保存している。…ただ、どうも俺を女だと勘違いしていたらしく、正気に戻ってから無理だと言われ、いらっとして桜が気絶するまでキスしてしまったのは、流石に反省した。反応がないのは辛い。(そういう問題じゃない)
その後マンションまでおぶって送り、お義母様にご挨拶をしてから帰った。何を言ったかって? それはまあ、ご挨拶だ。…ただ、キスの衝撃で俺との約束の記憶がなくなっていたのは、正直自分を責めた。何故セーブしなかったのかと!
勿論、父も説得した。何せ、桜は当時も今も、唯一欲した存在だ。何でも手に入る身の上柄、物欲や何かを強請るなんて事はない。初めて訴えたのが結婚の承諾(五歳)だったのは、流石に父も驚いていた。ただ、最初は子供の戯れ言だと思われたのか、軽く流された。
だから俺は、俺がどれだけ桜を愛しているのかを説明した。あれだけ愛らしいのだ、害虫が付かない訳がない。それにもし事故に遭ったり病気になったりしたら一大事だから、家でも外でもずっと見守っていた。それを見て更に深めた愛を一晩中(比喩なし)語り明かしたのだ。
だが、やはり……今度は神永財閥当主としての厳しい顔で却下された。
俺は、父に桜への愛が伝わらないのだと思った。何がいけないのか考え……そして気付いた。
俺には、何もない。
丸め込み使っている人間も、金も、生活力も、経済力も。何にもない。いくら五歳とは言え、結婚の許しを貰うにあたり、年齢など関係ないだろう。
それから俺は、三年掛けて桜に相応しい男になるべく努力した。努力も生まれて初めてだった。
海外で大学卒業資格、博士号を取得し、株で儲け貯蓄を増やし、俺のためだけに動く腹心を手に入れ、家事育児にその他技能を身に付け、桜と何不自由なく暮らせるどころかそれなりに裕福な暮らしが出来る程度には、己を磨いた。
そして、新しく桜の護衛に付けた者に言い収集した、桜の成長を表す小さくなった衣類や使用済みの割り箸、おもちゃ、髪などの捨てられた物をガラスケースに飾り、それを見て逢いたい気持ちを堪えながら、再び父に結婚の許しを申し出た。
三度目の正直。信じちゃいなかったが、願掛けで桜断ち(一等好きなモノを断つ事で願いが叶うらしい)をしたのが功を奏したのか(直接逢わないだけで毎日見守っていたが)、父は俺達の結婚を許してくれた。条件付きだが。
父の条件とは、任せる会社を父の納得が行くまで育てる事。高校生になるまで桜には逢ってはならない事。小中は指定した学校に入学し全てにおいて学年トップを卒業までキープする事だ。横暴だ。
同じ学校に通い小中校大といちゃらぶスクールライフを送ろうと思っていたのに、それが出来ない。高校は同じ学校に行く事は決定だし、トップも簡単だが、桜と逢えないのは辛かった。しかも父が言った学校とは見合い学校………つまり、金持ちの子供の出逢いの場だ。面倒だった。だが、守れないなら絶対に許さないと言われたから、ちゃんと守った。
俺の癒しは、無邪気に笑う桜だった。日に日に成長する桜は愛らしく、桜の成長と手に入れた桜の温もりを感じる桜の物は、俺の心を癒し気力を沸かせた。特に、桜が初潮を迎えた時は我が事のように嬉しく、その女の印は全て保存している。血だからな、特に保存には気を使っている。…流石に舐めてはいない。匂いは嗅いだが、それだけで俺はもうパンパ(以下略)。
そうして、漸く同じ学校に通う事が出来た。女子高に行きたがっていたみたいだから、俺もちゃんと女に見える仕草を研究していたが(女装して通う気だった)、ヨータが根回ししたらしく共学に通う事になった。出来るだけ桜の希望に添えるようにしたかったが、確かに共学の方が堂々といちゃいちゃ出来るので怒るに怒れない。
だが、まあ。入学してから然り気無く俺の邪魔をしたのは赦せん。俺も大分ヘタレに成り下がっていたが、何故邪魔をするのか……まあ、長期戦は覚悟していたし、桜に悪意はなかったから仕事倍増で赦してやった。
俺、結構健気に(・・・)頑張っていた。暴走してかなり性急に迫ってしまったが、避けられるのはやっぱり辛い。桜から与えられるモノなら何でも喜んで貰いたいが、これだけ我慢したのだからもう耐えたくない。
ヨータに、俺は桜について知っているが、桜は俺について何にも知らないのだと言われた。確かにその通りだ。まずは俺を知って貰わなければならない。
俺は桜の交遊関係も、好物も、苦手な物も、子供から少女になった日も、フラグが視える稀有な能力があるのも、スリーサイズも、右耳の裏に黒子があるのも、髪の長さもミリ単位で把握している。だが、桜は俺を知らないのだ。どれだけ、桜を愛しているのかを。俺が桜に懸想する不届き者を懲らしめたり、桜にちょっかいを掛けたバカ女を排除したり、教師に俺の息の掛かった者を送り込んだり……目覚まし時計も着ボイスも全てが桜の声なのも、桜の(以下略)全く知らないだろう。
俺は、中庭を見下ろした。何やら言い争いをしている赤と金の頭を見下ろしながら、はあ、と溜め息を吐いた。
喧嘩、か……喧嘩はそれなり以上の関係じゃないと出来ないだろう。俺も桜と喧嘩出来る関係になりたいな。きっと、俺が先に折れるんだろう。俺は桜には敵わない。
俺は、桜に跪き、手を握り、謝罪と愛を囁き赦しを請い、その分だけ贖罪のキスを贈り、怒りを解し溶かすよう抱き締め、足先に口付けるだろう。いや、寧ろ足の指を一本ずつ丁寧にしゃぶり、足の裏をふやけるまで舐め、余すとこなく足の甲に口付けたい。その後はプレゼントを贈り、ベッドの上でたっぷり愛し(以下略)。
……こう考えると、喧嘩もイイな。よし、避ける原因が分かった暁には、存分に謝罪しよう。桜は俺の天使で、妖精で、女神で、姫で、女王で、恋人で、妻で、全てなのだから。
「はあ…桜…」
逢いたい。真正面から話したい。
「桜ぁ…」
俺の悪いところは全て直すから。だから、一方的ではなく対等に。
「桜ぁっ…!」
なあ、桜……愛してるんだ。何よりも。
「……桜」
だから、無視しないで。俺を見て。認識して。じゃないと。
「―――いっそ、攫ってしまおうか」
俺しか見れないように、しちゃうよ。
正直すまんかった。苦情はソフトな感じで頼みます。
軽い補足
ちび桜が言ったのは謎旗お化け。フラグいっぱい立ってたんだねきっと。
ライカの頭の中は、桜8:自分とヨータ1:その他纏めて1。多分こんなん。