表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生侯爵令息の「法と産業」革命 ~法務大臣の父を持つ僕は、腐敗した領地を「万能工場」と「新法」で立て直す~  作者: Nami


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/22

第12話 金融改革と、紙幣の誕生


 食料先物取引による「アークライトの乱(後に歴史家はそう呼んだ)」から数日が経過した。

 王都の勢力図は激変していた。


 財務大臣ザイス公爵は、暴落した穀物の在庫と、それを買うために借り入れた莫大な借金を抱えて破産。公職を追放され、その派閥は崩壊した。

 対して私は、民衆を飢餓から救った英雄として、その名を国中に轟かせていた。


「……これが、ザイス公爵の屋敷か。悪くない立地だ」


 私は王都の一等地にある、元財務大臣の豪邸の前に立っていた。

 競売にかけられたこの屋敷を、私は底値で買い叩いたのだ。


「リアム様。この屋敷を王都の別邸になさるのですか?」

「いや。ここは『銀行』にする」

「ギンコウ……ですか?」


 隣に控えるクラウスが首を傾げる。

 この世界には、金貸しや両替商はあっても、近代的な『銀行』というシステムは存在しない。


「ああ。今回の騒動で痛感したよ。金貨は重すぎる」


 私は懐から一枚の金貨を取り出し、指で弾いた。

 デパートの売上は、毎日馬車数台分の金貨となる。その輸送には護衛が必要だし、保管にもコストがかかる。何より、決済のスピードが遅い。


「経済の血流を加速させるには、より軽い媒体が必要だ。……紙切れとかな」


          ◇


 数日後。改装を終えた旧公爵邸――『アークライト銀行・王都本店』の応接室に、第一王女エレノアを招いていた。


「……貴方、本気なの? 『紙』を金貨の代わりに流通させるなんて」


 エレノアは、私が差し出した一枚の長方形の紙を、信じられないものを見る目で眺めている。

 最高級の羊皮紙に、複雑な幾何学模様とアークライト家の紋章、そして『金貨百枚相当』という文字が印刷されたものだ。


「正気とは思えませんわ。誰がこんな紙切れを信用するのです?」

「信用させるのです。王家と、私の『契約』の力で」


 私は紙幣の仕組みを解説した。

 この紙幣は、アークライト銀行に持ち込めば、いつでも同額の金貨と交換できる『兌換だかん紙幣』であること。

 そして、最も重要なのが偽造防止技術だ。


「この紙幣には、私のスキル【絶対契約】による特殊な魔力刻印が施されています。複製しようとすれば、紙自体が燃え尽きる。偽造は物理的に不可能です」

「なるほど……。絶対的な安全性が保証された手形、というわけね」

「ええ。そして殿下にお願いしたいのは、この紙幣での『納税』を許可していただきたいのです」


 エレノアが息を呑んだ。

 国が税金の支払い手段として認めれば、その紙幣は国定通貨と同等の信用を得る。


「……相変わらず、恐ろしい男ね。わたくしを共犯者にする気?」

「共犯者ではありません。共同経営者です。……この銀行システムが普及すれば、国は金貨の鋳造コストから解放され、経済活動は現在の数倍に加速します。当然、税収も」

「……いいでしょう。許可します。その代わり、わたくしの肖像画を紙幣に入れなさい。一番高額な紙幣にね」


 ちゃっかりしている。だが、王女の肖像が入れば信用度はさらに増す。

 交渉成立だ。


          ◇


 翌日、『アークライト銀行』が正式に開業した。

 最初は半信半疑だった市民たちも、私が仕掛けたあるキャンペーンによって、雪崩を打って口座開設に押し寄せた。


『預金金利・年5%』


 家に現金を置いておいても増えないが、アークライト銀行に預ければ、勝手に増える。

 この世界初の概念は、金に聡い商人たちを狂喜させた。


「預けるだけで金が増えるだって!?」

「アークライト様の銀行なら安心だ! 家に置いておいて盗賊に入られるよりいい!」


 窓口には長蛇の列ができ、私の金庫には、運用しきれないほどの莫大な現金(預金)が集まった。

 私はその資金を元手に、さらなる事業拡大――領地への投資を行う。


          ◇


 銀行の執務室。

 集まった資金の運用計画を練っていた私の元に、シルヴィアがやってきた。


「リアム、また新しいことを始めたようだな。街中、あのおさつの話で持ちきりだぞ」

「ああ。おかげで忙しすぎて、人手が足りないよ」


 私は山積みの書類を見ながら嘆息した。

 金はある。事業計画もある。

 だが、それを実行する『人材』が圧倒的に不足しているのだ。

 銀行員、デパートの管理職、工場の技術者。読み書き計算ができ、私の理論を理解できる人間がいない。


「……教育が必要だな」

「教育?」

「ああ。アークライト領に戻って、学校を作る」


 私はペンを置き、立ち上がった。


「職業訓練校ではない。高度な専門知識を持った官僚や技術者を育てる、最高学府だ。……『アークライト・アカデミー』。それを設立する」


「お前……商売の次は学校経営か? どこまで手を広げる気だ」

「国の礎は人だ。私が皇帝になる頃には、私の手足となって動く優秀な部下が数千人は必要になる。今から育てておかないとな」


 私は窓の外を見つめる。

 経済を支配した次は、知(教育)を支配する。

 

「それに……学校があれば、優秀な『原石』も見つけやすくなる」


 私の脳裏には、まだ見ぬ優秀な人材たち――未来の側近や、あるいは新たな妻候補たちの姿が浮かんでいた。


「帰るぞ、シルヴィア。次は『学園都市』計画の始動だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ